レジョリスとは? わかりやすく解説

レジョリス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/20 02:23 UTC 版)

"レジョリス"
フランス国鉄B83500形
フランス国鉄B83600形
フランス国鉄B84500形
フランス国鉄B84800形
フランス国鉄B85000形
フランス国鉄B85500形
フランス国鉄B85900形
フランス国鉄Z31500形電車
フランス国鉄Z51500形電車
フランス国鉄Z54500形電車
フランス国鉄Z54900形電車
レジョリス(Z51500形電車)
2019年撮影)
基本情報
所有者 フランス国鉄
製造所 アルストムCAF
製造年 2012年 -
運用開始 2014年
主要諸元
編成 3・4・6車体連接車
軸配置 3車体連接車 Bo'2'2'Bo'
4車体連接車 Bo'2'2'2'Bo'
6車体連接車 Bo'2'2'2' + Bo'2'2'Bo'
軌間 1,435 mm
電気方式 直流1,500 V
交流25,000 V 50 Hz
交流15,000 V 16.7 Hz
架空電車線方式
最高速度 160 km/h、200 km/h
減速度(常用) 1.10 m/s2
編成定員 3車体連接車 着席162人
4車体連接車 着席180 - 220人
6車体連接車 着席294 - 354人
6車体連接車(コラディア・ライナー) 着席269人(1等座席35人、2等座席234人)
編成重量 4車体連接車(電車 129.0 t
4車体連接車(バイモード車両 150.0 t
6車体連接車(電車) 195.0 t
6車体連接車(バイモード車両) 225.0 t
編成長 3車体連接車 56,440 mm
4車体連接車 71,820 mm
6車体連接車 109,980 mm
全幅 2,850 mm
軸重 18.5 - 20.0 t
機関 MAN D 2676 LE621 EURO IIIB
主電動機 永久磁石同期電動機
編成出力 電化区間
3・4車体連接車 1,728 kW
6車体連接車 2,592 kW
非電化区間
3・4車体連接車 899 kW
6車体連接車 1,369 kW
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6]に基づく。
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レジョリスフランス語: Régiolis)は、フランスの国有鉄道であるフランス国鉄(SNCF)が所有する鉄道車両の名称。鉄道車両メーカーのアルストムCAFが手掛ける鉄道車両ブランド「コラディア」のうち、「コラディア・ポリバレント(Coradia Polyvalent)」と「コラディア・ライナー(Coradia Liner)」に該当する車両で、2025年現在は電車バイモード車両の導入が行われている[1][3][5]

概要

導入までの経緯

2000年代以降、フランス国鉄はフランスの各地域圏で運行する旅客輸送サービス「TER」へ向けて多数の新型車両を導入し、近代化を積極的に進めていた。そのような状況の中で、旧型車両の更なる置き換えや「TER」の利用客増加による輸送力増強を目的に、フランス国鉄は「多目的車両(porteur polyvalent)」と位置付けた、電化区間で使用する電車や非電化区間へ直通運転が可能なバイモード車両に関する計画を発表し、各地域圏の共同出資という形で入札を実施した。その結果、2009年アルストムが最大1,000編成の発注を獲得し、2012年チェコヴェリム鉄道試験線で最初の車両が公開された[1][7][5][6]

構造(コラディア・ポリバレント)

「レジョリス」のうち、大半の形式に採用されている「コラディア・ポリバレント」は線路状態が悪い場所でも安定した高速運転や快適性の維持が可能な連節構造を採用した車両で、3車体(Court、C編成)4車体(Moyen、M編成)、6車体(Long、L編成)の3種類の編成が展開されている。そのうち3車体・4車体連接車は運転台側に動力台車が、車体間の連節部に付随台車(連節台車)が設けられている一方、6車体連接車は3車体連接車を背中合わせに組み合わせた編成を組んでおり、工場での検査時に容易に分離可能な設計となっている他、連結面の台車の片方は動力台車となっている。この動力台車の配置は、騒音や振動の抑制、適切な重量配置による高速運転時の安定化を目的としたものである[1][7][3][4][6]

各動力台車には永久磁石同期電動機が2基搭載されており、従来の車両と比べてメンテナンスの容易化やエネルギー効率の向上が図られている。また、バイモード車両についてはMAN製の6気筒ディーゼルエンジンが4基搭載されており、発電機と合わせて電力を主電動機に供給する事で非電化区間を最高速度160 km/hで走行可能である[1][6]

車内は全体が段差がない低床構造になっており、バリアフリーに適した構造となっている。車体および車内レイアウトは用途に応じて以下の3種類が用意されている[1][7][6]

  • Périurbain - 近距離輸送(地域輸送)に適した形態。乗降扉は車体両側に2箇所ずつ設置されている。
  • Régional - 中距離の地域輸送(高速地域輸送)に適した形態。乗降扉は1箇所のみ設置されている。
  • Intervilles - 長距離輸送に適した形態。乗降扉は1箇所のみ設置されており、車内レイアウトも長距離利用を考慮したものとなっている。

構造(コラディア・ライナー)

「レジョリス」のうち、2013年に発注が行われた長距離都市間列車「アンテルシテ(Intercités)」向け車両には、コラディア・ポリバレントを基に開発が実施された「コラディア・ライナー」ブランドが採用されている[3][4]

「コラディア・ライナー」は「コラディア・ポリバレント」と同様の連節編成を有する車両で、車内も全室が低床構造になっており乗客の乗降や往来の利便性向上が図られている。車内の座席は布張りのアームレスト、充電用の電源ソケット、読書灯が備え付けられているリクライニングシートとなっており、床材は周囲の騒音抑制が可能な構造となっている。また、車内にはバーや子供向けプレイエリアといったサービス施設も設置され、長距離利用に適した内装となっている。車体や機器は軽量化が重視されており、従来の車両(客車列車)と比べて消費電力が削減される。最高速度は160 km/h(V160)と200 km/h(V200)から選択可能だが、2025年現在は160 km/h仕様の車両(V160)が製造されている[3][4][8]

製造企業について

「レジョリス」を含めた「コラディア・ポリバレント」の製造企業に関して、2022年までは開発元のアルストムによって製造・展開が行われていたが、同社によるボンバルディア・トランスポーテーション買収に伴う市場独占の回避を目的とした欧州委員会からの提言により、同年以降はスペインCAFが展開を実施している[注釈 1][9][10][11]

形式

2014年から営業運転を開始した「レジョリス」は[注釈 2]、2025年時点で以下の形式が導入され、フランス各地で使用されている。これらに加え、2025年7月にもCAFとアルストムのコンソーシアムがブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏向けの車両(6車体連接車:電車、4車体連接車:バイモード車両)の発注を獲得している[1][7][6][12]

形式 車種 対応電圧 非電化区間対応 種類 編成 備考
直流1,500V 交流25,000V 50 Hz 交流15,000V 16.7 Hz
B83500形 バイモード車両 "Périurbain" 4・6車体連接車
B83600形 "Périurbain" 6車体連接車 信号保安システム「ERTMS」に対応[13]
B84500形 "Régional" 4・6車体連接車
B84800形 "Régional" 4車体連接車
B85000形 "Intercités" 6車体連接車 「コラディア・ライナー」[3][4]
B85500形 "Régional" 4車体連接車 ドイツへの国際列車に使用可能[14]
B85900形 "Intervilles" 4車体連接車 電化区間では最高速度200km/hで走行可能
Z31500形 電車 "Périurbain" 4車体連接車 ドイツへの国際列車に使用可能
Z51500形 "Régional" 4車体連接車
"Intervilles" 6車体連接車
Z54500形 "Périurbain" 6車体連接車
Z54900形 "Intervilles" 4車体連接車 最高速度200km/h

脚注

注釈

  1. ^ 「コラディア・ポリバレント」と共に、ボンバルディア・トランスポーテーションから継承した「タレント3ドイツ語版」についても製造権がCAFに継承されている。
  2. ^ 計画当初は2013年の運行開始を予定していた。

出典

  1. ^ a b c d e f g Olivier Constant (2012-11-01). “アルストム初 フランス地域圏向け ハイブリッド式新世代電車「レジョリス」”. 鉄道ファン (交友社) 52 (11): 135. 
  2. ^ Alstom Régiolis homologated to circulate on the French rail network”. Alstom (2014年3月24日). 2025年7月20日閲覧。
  3. ^ a b c d e f Alstom's first Coradia Liners run on the Paris-Troyes-Belfort Intercity line”. Alstom (2017年2月6日). 2025年7月20日閲覧。
  4. ^ a b c d e Marc Carésmanterant (2017年4月1日). “Coradia Liner : des Régiolis en version Intercités”. RailPassion. 2025年7月20日閲覧。
  5. ^ a b c Olivier Constant 2014, p. 81.
  6. ^ a b c d e f Thomas Estler 2024, p. 116-117.
  7. ^ a b c d Alstom to supply 14 Coradia Polyvalent trains to the regions of Bourgogne-Franche-Comté and Grand Est”. Alstom (2018年1月8日). 2025年7月20日閲覧。
  8. ^ Coradia Liner V200 Main-line Train”. Railway Technology (2014年6月23日). 2025年7月20日閲覧。
  9. ^ Alstom to transfer Coradia Polyvalent platform, Reichshoffen site and TALENT 3 platform to CAF”. Alstom (2021年11月24日). 2025年7月20日閲覧。
  10. ^ CAF secures new regional train contracts for the Reichshoffen plant in France”. CAF (2023年4月3日). 2025年7月20日閲覧。
  11. ^ Alstom completes divestment of its Coradia Polyvalent platform, its Reichshoffen production site in France and its TALENT 3 platform, currently developed in Hennigsdorf, Germany to CAF”. Alstom (2022年4月1日). 2025年7月20日閲覧。
  12. ^ CAF has secured two new contracts in France”. Railvolution (2025年6月17日). 2025年7月20日閲覧。
  13. ^ February 2025 News”. French Railway Society. 2025年7月20日閲覧。
  14. ^ October 2024 News”. French Railway Society. 2025年7月20日閲覧。

参考資料

  • Olivier Constant (September 2014). Les automotrices bicourant et les trams-trains. Encyclopédie du matériel moteur de la SNCF. Le Train 
  • Thomas Estler (2024). Loks der französischen Staatsbahn SNCF: seit 1938. Transpress Verlag. ISBN 978-3-613-31353-8 

レジョリス

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電気・ディーゼル両用車両」の記事における「レジョリス」の解説

アルストム製。通常電車として使用

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