メルセデス・ベンツ C111とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 製品 > 乗り物 > > メルセデス・ベンツの車種 > メルセデス・ベンツ C111の意味・解説 

メルセデス・ベンツ・C111

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/01 22:08 UTC 版)

C111-II

メルセデス・ベンツ・C111は、メルセデス・ベンツが技術開発のために1960年代から1970年代に製作したコンセプトカーである。

概要

C111は、主にロータリーエンジンディーゼルエンジンターボチャージャーなどの技術試験車両として使用された。1970年に発表されたC111-IIまではロータリーエンジンが搭載された。

ロータリーエンジン仕様のC111に対して、顧客から市販化を望む声も上がっていたが、市販化は実現せず、ロータリーエンジンの開発も中止された。

その後開発されたC111は、速度記録挑戦用のテスト車両として用いられた。

C111-I

C111-I

1968年11月から、ロータリーエンジンを搭載した次世代車両「C101」の開発が開始され、1969年7月に最初の試作車量が完成した。その後、このテスト車両はC111(C111-I)に改名され、同年9月のフランクフルトモーターショーで初公開された。[1]

C111は型の2ドアクーペで、ドアはガルウィングタイプである。グラスファイバーFRP製のボディに、特徴的なオレンジのボディカラーが塗装された。エクステリアデザインはブルーノ・サッコが担当した。内装には灰皿、ラジオ、エアコンなども装備され、実用性が考慮された設計だった。 [1][2]

エンジンはインジェクション式の3ローターロータリーで、MRレイアウトで搭載された。最高出力は280psで、最高速度は260km/hだった。 [3]

C111-II/IID

C111-IID

C111の発表から約半年後の1970年3月、ジュネーブモーターショーにて改良モデルのC111-IIが公開された。

エンジンはC111-Iの3ローター型から4ローター型に換装され、最高出力は350ps、最高速度は300 km/h、0-100km/h加速は4.8秒に向上した。シャシーとボディも改良され、エンジン全長の増加によりホイールベースが5インチ延長された。[1][2][4]

C111は発表後から話題を呼び、メルセデス・ベンツには購入希望のオファーが多く寄せられた。中には白紙の小切手をオフィスへ送付し、いくらでも良いから購入したい、と意思表示した顧客もいたという。[2]

しかし、1970年代にオイルショックにより、ロータリーエンジンの燃費性能が問題視された。加えてシールの耐久性不足や製造コストの問題などから、C111の市販化は実現せず、ロータリーエンジンの開発も中止された。[3][4]

ロータリーエンジンの開発中止後、C111はディーゼルエンジンの実証試験に使われることとなり、1976年にディーゼル仕様の「C111-IID」が発表された。これはC111-IIにOM617型3.0リッター直列5気筒ターボディーゼルを搭載したモデルで、最高出力は190ps、最大トルクは363Nm、最高速度は260km/hだった。[2][3]

C111-IIはナルド・サーキットでの最高速度テストに使用され、合計16個の記録を更新した。そのうち13個の記録はディーゼル仕様により更新されたもので、当時有効だったディーゼル車両の記録のほぼ全てを塗り替えた。[2][5]

C111-IとC111-IIは合計で12台が製造され、最後の1台のみがC111-IIDだった。C111-IとC111-IIの各1台には、一時的にM116型3.5リッターV型8気筒エンジンが搭載され、テスト車両として使われた。また2014年、C111-IIの1台にM116型エンジンを搭載したモデルが製作され、実走可能な唯一のデモ車両として、メディアの取材などで使用されている。[2][6]

C111-III

C111-III

1977年、速度記録挑戦用のテスト車両として、2台のC111-IIIが製造された。

ボディは空力性能を重視した新規設計のボディとなり、飛行機の垂直尾翼状のフィンが取り付けられ、全長やホイールベースなどの寸法も変更された。過去のC111のモデルの面影は無くなったが、Cd値は0.157まで低減された。直列5気筒ターボディーゼルエンジンは230 hpまでパワーアップされた。[2]

1978年4月、ナルド・サーキットにて記録走行を実施した。2台のC111-IIIのうち1台は、記録走行中にパンクにより車体後部が破損したが、予備車両に切り替えて試験を続行した。最終的に最高速度約320km/hを記録し、合計9個の世界速度記録を樹立した。[1][2]

C111-IV

C111-IV

C111-IIIの記録走行から1年後、C111-IIIをベースにC111-IVが1台製造された。[1]

空力性能向上のためにフロントスポイラーと、飛行機の水平尾翼状の2枚のリヤウイング、垂直尾翼状の2枚のフィンが取り付けられた。

エンジンはSL用の4.5リッターV型8気筒ガソリンエンジンをボアアップし、2基のKKKターボチャージャーで過給された4.8Lエンジンが搭載された。最高出力は500hp。[2][7]

1979年5月、ナルド・サーキットの記録走行にて最高速度403.978km/hを記録した。C111-IVはナルドの最高速度記録を更新し、ナルドで初めて400km/hの壁を突破した車両となった。[8]

オマージュ

ビジョン・ワンイレブン

2023年6月、米国のデザイン拠点にて、C111をオマージュした2シータークーペのEVコンセプトカー「ビジョン・ワンイレブン(Vision One-Eleven)」が発表され、同年のIAAモビリティに出展された。[9] [10]

EQのデザインコンセプトであるワン・ボウを受け継ぎ、横長のグリルやガルウィングドアなど、随所にC111をイメージしたデザインが施された。

動力源として、メルセデス・ベンツ傘下のYASAが開発したアキシャル磁束モーターを、リヤに2基搭載する。この新開発のモーターは既存のモーターよりもコンパクトで、同出力の既存のモーターと比較して重量と体積が1/3に削減されたという。[10]

脚注

  1. ^ a b c d e Daniel Strohl. “Mercedes-Benz Classic preps display of each C111 iteration for rotary concept's 50th anniversary” (英語). Hemmings. Hemmings Motor News. 2024年1月1日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i Mercedes-Benz C 111: Dream in weissherbst.” (英語). Mercedez-Benz Group. 2024年1月1日閲覧。
  3. ^ a b c Lilly Wöbcke. “Design-Studie mit Wankelmotor” (ドイツ語). auto motor und sport. Motor Presse Stuttgart. 2024年1月1日閲覧。
  4. ^ a b Pedro Bisso. “Mercedes Benz C111: A Fearsome Four-Rotor” (英語). hotcars.com. Valnet. 2024年1月1日閲覧。
  5. ^ Sebastian Viehmann. “Ein Auto wie ein Raumschiff” (ドイツ語). ZEIT ONLINE. ディー・ツァイト. 2024年1月1日閲覧。
  6. ^ Glen Waddington/高平高輝(訳). “世界で最も長く続いた自動車の実験プログラム「メルセデス・ベンツC111」”. オクタン日本版. Octane Magazine. 2024年1月1日閲覧。
  7. ^ Bernard Jouvin. “Mercedes C111 : un prototype sportif jamais commercialisé” (フランス語). Le Dauphiné libéré. Dauphiné Libéré. 2024年1月1日閲覧。
  8. ^ History Milestones & Records” (英語). Nardò Technical Center - Porsche Engineering. 2024年1月1日閲覧。
  9. ^ 千葉匠. “メルセデスが発表した『ビジョン・ワンイレブン』、その大胆なフォルムに込めた意図とは?”. Response.. イード. 2024年1月1日閲覧。
  10. ^ a b Mercedes-Benz at the IAA 2023, Forward-looking concept car in the Entry Segment.” (英語). Mercedez-Benz Group. 2024年1月1日閲覧。

「メルセデス・ベンツ C111」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「メルセデス・ベンツ C111」の関連用語

メルセデス・ベンツ C111のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



メルセデス・ベンツ C111のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのメルセデス・ベンツ・C111 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS