ニーム_(植物)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ニーム_(植物)の意味・解説 

インドセンダン

(ニーム_(植物) から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/07 00:47 UTC 版)

インドセンダン
インドセンダン
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物Magnoliophyta
: 双子葉植物Magnoliopsida
: ムクロジ目 Sapindales
: センダン科 Meliaceae
: アザディラクタ属 Azadirachta
: インドセンダン A. indica
学名
Azadirachta indica A. Juss. (1832)[1]
和名
インドセンダン(栴檀)
英名
Neem
Azadirachta indica

インドセンダン(印度栴檀、学名: Azadirachta indica)とはセンダン科アザディラクタ属の植物。インド原産の高木となる常緑樹(乾燥した冬の数か月間、落葉する落葉樹)で、熱帯地方全域に広く植樹されている。英名のニームで知られる[2]。また、近年はその薬効の多さから「ミラクルニーム」という名称で流通していることもある。メリアアザジラクタの表記も用いられる。

乾燥地や痩せた土地でもよく生育する[2]。芳香のある小さな白い花が咲き、ミツバチを引きつけ、花後は緑色を帯びた黄色のオリーブに似た果実をつける[2]。この果実から伝統医学や民間伝承で重要なニームオイルが採れる[2]

用途

新芽と花が食用とされる。

種子に含まれるアザジラクチンという成分が虫除けに効果があるとされ、「ニームオイル」として利用されている。乾燥した葉も防虫効果がある。

また、ニームオイルを絞った後の種子は、ニームケーキとして流通しているが、これについても害虫忌避効果があり、更にセンチュウに対する防除効果もあり、更に放線菌を繁殖させ土を豊かに健康にする効果がある。

ニームオイルが世界的に普及しないのは、企業が商品となるニームオイル製法の特許を取得しにくい状況にあるためであり、実際にインド政府などがヨーロッパ特許庁に対して権利無効の裁判を提起して、アメリカ企業の特許申請を無効化した事件も起こっている[3]

薬効

ニームオイルは、自家製の万能薬としてインド文化の中で親しまれてきた[2]。分析の結果、インドセンダンの木の抽出物には、多種多様な抗菌化合物が含まれていて、伝統的に伝えられている薬効の多くに根拠があることを示しているとする研究成果もある[2]。しかし、臨床研究は未だ不十分であり、用量を間違えると腎臓や肝臓に害をもたらし、ニームオイルは子供や妊婦に悪影響があり死亡する可能性もある[4]

日本でもハーブの木として、苗木が市販されている。

その他

  • 砂漠緑化 - 干ばつ耐性英語版があり、成長も早いので、砂漠の拡大を防ぐ効果があり、更に土を肥沃にする[5][6]
  • 動物飼料 - 兎や反芻動物の飼料となる[7]
  • 歯木 - インドでは、ニームの小枝が歯磨き用の道具として使用されている[2]
  • お守り - インドの貧しい村の戸口には、家族のお守りとして、鋸歯状のインドセンダンの葉を紐に通して飾られている[2]
  • コンパニオンプランツ - 木そのものに駆虫効果があるため、インドでは綿と一緒に、西アフリカでは野菜畑に一緒に植えられている[3]

防虫効果

多くの樹木は、昆虫に葉を食べられないように防衛機能を持っているが、インドセンダンのその防衛機能は特別である[2]。葉や樹皮、ニームオイルには駆虫効果のある生化学物質やステロイド様化合物を含有しており、多くの昆虫は生命行動を乱す化学物質を含むインドセンダンの抽出物を嫌って、摂食を避けて飢え死にしてしまう能力があることが、科学的にも認められている[2]。特になど飛翔してくる昆虫に対する駆虫効果が高く、10 ppmという低濃度でも効果を発揮する[2]

インドセンダンの抽出物は、生分解性があり、合成殺虫剤ほど生態系に悪影響を及ぼしにくいという長所もある[2]。1つの有害作用で即座に虫を殺す合成殺虫剤とは異なり、インドセンダンの抽出物では、複数の化学物質が昆虫の生命活動の別々の側面を破壊するためである[2]。この抽出物は魚には有害であるが、人間などの温血動物では体内で分解されてほとんど影響を及ぼすことはないとされる[3]。インドでは数千年も前から、抽出物を化粧品やクリームに使ったり、トコジラミの駆除のために子供の寝具に吹き付けたりして利用してきた[3]

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Azadirachta indica A.Juss. インドセンダン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年8月10日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m ドローリ 2019, p. 120.
  3. ^ a b c d ドローリ 2019, p. 121.
  4. ^ Neem Uses, Benefits & Dosage - Drugs.com Herbal Database” (英語). Drugs.com. 2022年3月13日閲覧。
  5. ^ Schroeder, Paul (1992). “Carbon storage potential of short rotation tropical tree plantations”. Forest Ecology and Management 50 (1–2): 31–41. doi:10.1016/0378-1127(92)90312-W. 
  6. ^ Puhan, Sukumar, et al. "Mahua (Madhuca indica) seed oil: a source of renewable energy in India." (2005).
  7. ^ Heuzé V., Tran G., Archimède H., Bastianelli D., Lebas F., 2015. Neem (Azadirachta indica). Feedipedia, a programme by Institut national de la recherche agronomique, CIRAD, AFZ and FAO. Last updated on 2 October 2015

参考文献

  • ジョナサン・ドローリ 著、三枝小夜子 訳『世界の樹木をめぐる80の物語』柏書房、2019年12月1日。ISBN 978-4-7601-5190-5 

関連項目

  • ニンビン - インドセンダンから単離されるトリテルペノイド。インドセンダンの苦味の主要成分で、多くの薬効を生む元になっていると考えられている。
  • センダン - センダン科センダン属に属する別種。こちらは落葉高木であり、また種には多量のサポニンによる強い毒性がある。

外部リンク


「ニーム (植物)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ニーム_(植物)」の関連用語

ニーム_(植物)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ニーム_(植物)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのインドセンダン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS