トランジスタ時計とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > トランジスタ時計の意味・解説 

トランジスタ時計

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/05 06:40 UTC 版)

トランジスタ時計(トランジスタとけい、transistor clock)とは、トランジスタ発振回路電磁石によって振り子テンプを動かす無接点式の時計である[1]

トランジスタクロックとも呼ばれる。

概説

電池を動力源とする時計において、トランジスタ時計の登場までは主に電気接点部分に起因する故障が多く、十分な信頼性が得られていなかった[2]。日本真空時計株式会社(現・ジェコー)が発明した低速CLOCK MOTOR(CMモーター)を使った時計は1955年(昭和30年)頃にトヨタ自動車で採用され、その後各自動車メーカーに採用されるようになった[2]精工舎はこのモーターを使った家庭用のモーター時計を1959年(昭和34年)に発売したが、電池(平角四号乾電池)の入手性に難があった[2]

トランジスタ時計は機械的な接点が不要となり、信頼性が非常に高くなった[2]。精工舎では初のトランジスタ式振り子掛時計を1958年(昭和33年)に出荷、報時機能を追加した本打式掛時計「ソノーラ」を1960年(昭和35年)に発売、テンプ式置時計「セルスター」を1962年(昭和37年)に発売した[2]

1980年代半ば頃になって腕時計に使用している水晶振動子の価格が急激に安くなり、より正確なクォーツ時計に置き換えられていった[2]

原理

ここではテンプ式トランジスタ時計の動作原理を説明する。

テンプ式トランジスタ時計において、テンプには2枚のてん輪板の間に対になるよう永久磁石が取り付けられ、その間には駆動コイルと発電コイルが配置される[3]。 トランジスタは発電コイルに発生するベース電流で駆動コイルに流すコレクタ電流を制御する。

実際の動きは以下の通り[4]

  1. 電池を入れると、駆動コイルに電流が流れて磁力線ができ、永久磁石が反発され、テンプが回転する。すると磁石が動くので発電コイルに電流が流れ、トランジスタは電気を流し続ける。
  2. 磁石がコイルから出ると、発電コイルに電気が起きなくなり、トランジスタは電気を通さなくなる。するとテンプはひげぜんまいの力で元に戻る。この時発電コイルに起こる電流は逆になるので、トランジスタは電流を通さない。
  3. テンプはひげぜんまいの力で再び1.と同じ方向に回転する。この時は発電コイルに電流が流れ、トランジスタは駆動コイルに電気を流し、永久磁石が反発される。以後2.と3.が繰り返される。

動力の伝達経路は、機械式時計では 香箱車→輪列(指針)→がんぎ車→アンクル→テンプまたは振り子 なのに対し、トランジスタ時計では 電池→テンプまたは振り子(電子回路含む)→アンクル→がんぎ車→輪列(指針) と方向が逆になる。従って、機械式時計の「脱進機」に対して「逆脱進機」と呼ぶ[3]

形式

トランジスタクロックは主にテンプ式振り子式に分けられる。

テンプ式

通常サイズの掛時計型、置き時計、目覚まし時計型はテンプ式のものが多い。

様々なメーカーが製造していた方式。

テンプを式のトランジスタ時計がこの方式に当たる。

電磁石は切り替えるごとに電磁石磁極が切り替わる方式であった。

RHYTHMCITIZEN名義で販売していた製品も多かった。(ファーストメカは全てRHYTHM製で、表記がなくてもRHYTHM製のことがある。)

CITIZENも自社でトランジスタクロックを製造しており、RHYTHM製とCITIZEN製を表向きの外見だけで判断するのは困難である。

SEIKOはソノーラなどの振り子式トランジスタクロックを多く製造していたが、ホームトーンやその他テンプ式トランジスタクロックなども多く製造していた。

NATIONAL(Panasonic)はメインで作っていたのは松下式振子トランジスタ時計であったが、少量ではあるが、テンプ式トランジスタクロックも製造していた。

KOSEISHA(光星舎)はアトー式振子トランジスタクロックに類似したバッテリークロック(トランジスタクロックではない。)を製造していたが、後に少量ではあるが、にテンプ式トランジスタクロックを製造していた。

AICHI(愛知時計)は振子式バッテリークロックとしてアイクロン(モーター式時計)を製造していたが、後ににテンプ式トランジスタクロックを製造していたが、その後すぐクォーツ時計を製造し始めたため、製造数は少ない。

テンプ式にはアナログ時計だけでなく、パタパタ時計にも利用されることがあった。

振り子式

振り子式の中でも大きくアトー式松下に分けられる。

アトー式

主にセイコーが作っていた方式。

コイルが2つある振り子トランジスタ時計がこの方式に当たる

電磁石は切り替えるごとに左右の磁極が入れ替わる方式であった。

ナショナル(現パナソニック)も少数ではあるが製造していた。

セイコーラジオ修正式電波時計としてテンプ式トランジスタクロックであるTTR-902が紹介されるとこが多いが、NTR-901というアトー式振子トランジスタクロックのモデルが存在し、型番から推測するにこちらの方が、古いと思われる。

時報付きのモデルをセイコーソノーラといい秒針付き時報無しモデルは並トランジスタと言うため、この2つは駆動方式は同じだが、全く違う製品である。

松下式

主にナショナル(現パナソニック)が作っていた方式。

コイル1つある振り子トランジスタ時計がこの方式に当たる

電磁石は切り替えるごとに電磁石磁極が切り替わる方式であった。

KOSEISHA(光星舎)が類似する時計を製造していたが、KOSEISHA(光星舎)の物は振り子スイッチを用いて電磁石を操作する「疑似トランジスタ」であり、トランジスタは使用していなかったため、トランジスタ時計ではないとされる。

そのためこの類似する時計をバッテリークロックと呼ぶ。(一部の時計に記載あり。)

主なメーカー

関連項目

出典

  1. ^ 小項目事典, ブリタニカ国際大百科事典. “トランジスタ時計(トランジスタどけい)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2024年4月28日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 鈴木哲郎「クロック技術の系統化調査」(pdf)『国立科学博物館 技術の系統化調査報告 共同研究編』第12集、国立科学博物館、2019年3月、10-14頁、2025年9月5日閲覧 
  3. ^ a b 青木茂「時計技術の系統化調査 ~機械式時計からクォーツ時計へ、更なる高精度を求めて~」(pdf)『国立科学博物館 技術の系統化調査報告 共同研究編』第10集、国立科学博物館、2017年3月、10頁、2025年9月5日閲覧 
  4. ^ 『学研の図鑑・電気』学習研究社、1975年、84頁。 



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  トランジスタ時計のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「トランジスタ時計」の関連用語

トランジスタ時計のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



トランジスタ時計のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのトランジスタ時計 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS