チョルティ語とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > チョルティ語の意味・解説 

チョルティ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/20 14:55 UTC 版)

チョルティ語
話される国 グアテマラホンジュラス[1]
話者数 9,105(2001年)[2]
30,010(2000年)[1]
言語系統
マヤ語族
  • チョル・ツェルタル語群
    • チョル語群
      • チョルティ語
言語コード
ISO 639-3 caa
Linguist List caa
Glottolog chor1273[3]
消滅危険度評価
Definitely endangered (Moseley 2010)
テンプレートを表示

チョルティ語(チョルティご、Chʼortiʼ)は、グアテマラ東端のチョルティ族によって話される言語で、マヤ語族のチョル語群に属する。

概要

チョルティ語はグアテマラのチキムラ県サカパ県のいくつかの町で話されているが、ほかのマヤ語地域から隔絶し、周囲をスペイン語地域に囲まれている[2]。隣接するホンジュラスにもコパン遺跡の周辺にチョルティ族が住んでいるが、チョルティ語は使われていない[4]

スペイン人の到来前、チョルティ族はモタグア川を利用してグアテマラ高地と低地の間の黒曜石ヒスイの交易にたずさわっていた[2]

スペイン植民地時代にはチョルティ語と近い関係にあるChʼoltiʼ語が話されていたが、18世紀後半に死語になった[5]

チョル語群の他の言語であるチョル語チョンタル語メキシコチアパス州からタバスコ州にかけて話されており、チョルティ語が話される地域とは大きく隔たっているが、古典期において両者の中間にあたるマヤ低地で古代マヤ文明が繁栄した。古典期マヤ碑文がチョル語群の言語で書かれていることは早く1950年にジョン・エリック・シドニー・トンプソンが主張し、2000年にスティーヴン・ハウストンらはチョルティ語のような東部チョル語に近い言語で書かれていると主張した[6]。マヤ碑文に記されている古典マヤ語がチョル語群の言語に近いことは概ね認められているが、それがハウストンらの言うほど統一的な言語であったかどうかについては疑問も提出されている[7]。なお古代マヤの遺跡の集中するペテン県には主にケクチ族が住んでいるが、これは19世紀後半以降の現象である。

UNESCO危機に瀕する言語の分類ではグアテマラのチョルティ語を「危険」(definitely endangered)[8]ホンジュラスのチョルティ語については話者数をエスノローグが10人、Ramón D. Rivasの1993年の著書では58人としているとして「極めて深刻」な危機にある言語に含めている[9]

音声

以下の子音がある[4]

両唇音 歯茎音 後部歯茎音 硬口蓋音 軟口蓋音 声門音
破裂音 p (b) bʼ t (d) tʼ k (g) kʼ ʼ
破擦音 tz tzʼ ch chʼ
摩擦音 s x j
鼻音 m n
流音 l r
半母音 w y

b dはスペイン語からの借用語に使用される。gはスペイン語からの借用語のほかwの異音としても出現する[4]。jは無声声門摩擦音[h]である。

歴史的にlだった音の多くはrに変化しているが、lがまったくなくなったわけではない。rとlのどちらでもよい場合も多い[4]

母音はa e i o uのみで、長短の区別はない。

文法

チョルティ語はほかのマヤ語と同様に能格言語だが、人称接辞にA型(能格)とB型(絶対格)に加えてC型があるところに特徴がある。マヤ語族でC型接辞を持っているのはチョルティ語だけである[10]。チョルティ語はを条件とする分裂能格言語であり、完全相ではA型の接辞が他動詞の主語(A)、B型の接辞が他動詞の目的語(O)と自動詞の主語(S)を標示するが、不完全相では自動詞の主語(S)がB型ではなくC型の接辞で標示される[11][12]

人称 A型 B型 C型
一人称単数 in-/ni- -en in-
二人称単数 a- -et i-
三人称単数 u- -∅ a-
一人称複数 ka- -on ka-
二人称複数 i- -ox ix-
三人称複数 u- … -obʼ -obʼ a- … -obʼ

基本的な語順はSVO型である[13]

脚注

  1. ^ a b Chortí, MultiTree, http://multitree.org/codes/caa 
  2. ^ a b c Richards (2003) p.50
  3. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “チョルティ語”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/chor1273 
  4. ^ a b c d Hull (2005) の説明による
  5. ^ Romero (2017) p.387
  6. ^ Stephen Houston; John Robertson; David Stuart (2000). “The Language of Classic Maya Inscriptions”. Current Anthropology 41 (3): 321-356. doi:10.1086/300142. JSTOR 10.1086/300142. 
  7. ^ Johnson (2013) p.71
  8. ^ “Ch'orti' (Guatemala)”, UNESCO Atlas of the World's Languages in Danger, http://www.unesco.org/culture/languages-atlas/en/atlasmap/language-id-1784.html 
  9. ^ “Ch'orti' (Honduras)”, UNESCO Atlas of the World's Languages in Danger, http://www.unesco.org/culture/languages-atlas/en/atlasmap/language-id-1864.html 
  10. ^ Zavala Maldonado (2017) p.226
  11. ^ Zavala Maldonado (2017) pp.237-238
  12. ^ ディクソン(2018) p.56,124-125
  13. ^ 八杉(1992) pp.120-122

参考文献

関連文献

  • Pérez Martínez, V. (1994). Gramática del idioma Ch’orti’. Antigua, Guatemala: Proyecto Lingüístico Francisco Marroquín 

外部リンク


チョルティ語

出典:『Wiktionary』 (2021/08/14 05:52 UTC 版)

名詞

言語コード
ISO639-1 -
ISO639-2 -
ISO639-3 caa
SIL -

チョルティ

  1. チョル諸語一つ絶滅危機瀕している。

訳語



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「チョルティ語」の関連用語

チョルティ語のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



チョルティ語のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのチョルティ語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryのチョルティ語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS