タックイン (自動車)とは? わかりやすく解説

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タックイン (自動車)

(タックイン現象 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 19:18 UTC 版)

タックインとは、自動車において旋回中にエンジン出力を絞った(スロットルを閉じた)際、ステアリングを切っている方向に急激に車両が切れ込む現象である。オーバースピードでコーナーへ進入した後で、アクセルペダルを戻すような場面で発生することがある。特に前輪駆動の車両で発生しやすい。

和製英語で、由来は不明である。この現象を指す簡潔な英語のフレーズも特にない。ISO 9816にある、この現象に相当する表現は「Power-off reaction of a vehicle in a turn」となっている。

原理

前輪駆動車の場合、アクセルを戻すことによって発生するエンジンブレーキがフロントにかかり、結果として旋回力が増幅する。

その理由は、高速旋回中の車両の姿勢が、後輪のスリップ角相当に内向きとなっているためである。つまり、低速時の旋回姿勢(内輪差という言葉とともに自動車教習所で習う)とは逆で、前輪の回転半径が後輪のそれより小さくなっており、フロントタイヤのエンジンブレーキすなわち旋回中心側でのブレーキが車両の回転力を生む。

また、旋回と駆動の両方に使われていた前輪のグリップが、アクセルオフの瞬間(ほんの一瞬だけ)は旋回のみに使われることになり、一時的に前輪のグリップが上がることが、タックイン開始のきっかけとなる。

注意点

タックインの特性を理解していれば、アンダーステアとの併用で連続するカーブを速く安定して走り抜けることが可能となる。しかし、特性の理解が不十分な状態でタックインが発生した場合、そのまま内側のガードレールに激突したり、慌ててアクセルを開けてアンダーステアに一転してカーブの外側へ飛び出したりと、思わぬ重大事故につながることがある。

前輪駆動車の普及以降はタイヤの性能向上が目覚ましく、コーナリング時にブッシュの変形でリアタイヤがフロントと同相となって車両の安定を保つサスペンションジオメトリも一般化しておりタックインの影響を大幅に減らしているが、物理的な動作を完全に打ち消すことはできず、凍結など、路面が滑りやすくなる条件下では顕著となる。

関連項目

  • 横滑り防止装置
  • ドリフト走行
  • トルクステア
  • コンプライアンスステア - 旋回中にサスペンションのブッシュやアームなどが弾性変形を起こし、受動的にトー角度が変化すること。初期の前輪駆動車の後輪に採用例が多かった車軸懸架トレーリングアーム式サスペンションは、高速旋回中にアクセルを抜かずにステアリングの舵角を増し続けると、後車軸が受動的にトー・アウト側に向いてスピンを誘発するリバース・ステアを引き起こしやすかった。リバース・ステアとタックインの双方の特性で、初期の前輪駆動車は非常に癖の強い運転特性をドライバーに強いることとなった[1]
    • リバース・ステア - 低速時はアンダー・ステア特性だったものが、高速時にはオーバー・ステアとなるなど、ステアリング特性が何らかの原因で逆転すること[2]。本来は後輪駆動車で発生しやすい概念であるが[3]、タックイン自体も「アクセルオフに起因して発生するリバース・ステアの一種」であると分類される[4]
    • マツダ・ファミリア - 1980年のBD型より採用されたSSサスペンションにより、旋回時や制動時に後輪をトー・イン側に積極的に変化させる特性が持たせられ、それまでの前輪駆動車につきものであったタックインを大幅に抑え込むことに成功した[1]
  • 四輪操舵 - アクティブサスペンションと組み合わせる事で、旋回中の前軸への急激な荷重変化を検知して後輪を適宜同位相に操舵する制御を行う事により、タックインの挙動を機構的に打ち消す事が可能となる[5][6]
    • マツダ・RX-7 - 1985年のFC3S型より採用されたトーコントロールハブにより、旋回時やエンジンブレーキ時に両後輪がトー・インに変化して旋回性能が一時的に高められる特性が持たせられ[7]、同型では「後輪駆動車でありながらタックインを活用したコーナリングが可能」と評価されていた[8]。なお、トーコントロールハブの主目的は、旋回時に後車軸がトー・アウトに変化しやすいワットリンク英語版式リアサスペンションを採用した先代のSA22C型で問題となった「神経質すぎてスピンしやすい」リアの挙動[9]を抑制する為に考案されたものであり、タックインの克服が目的とされたファミリアのSSサスペンションとは開発の立脚点が異なっている。
    • ニシボリック・サスペンション - 3代目いすゞ・ジェミニ等に採用されたパッシブステア機構であり、設計概念上は前述の「4WS機構+アクティブサス」の構成が目標とした「コーナリング開始時は後輪を逆位相に傾けて旋回性能を向上させ、車体のローリングが大きくなると後輪舵角を同位相側に変化させる」事を特別な補機を用いずに狙ったものであるが、実際には高速旋回時にも逆位相状態が継続し、オーバーステア傾向にあると評価される事が多かった[10]。その副作用として、「コーナリング中にアクセルを抜いて車体のローリングが弱まった瞬間に、同位相側に傾いていた後輪が一気に逆位相側に戻る(つまり突然テールが流れ出す)」というものがあり、これによってニシボリック搭載車はアクセルオフでタックインが起こる一般的な前輪駆動車とは逆に、「前輪駆動ベースでありながら、後輪駆動車のようなドリフト走行を誘発させられる」特異な性質を持つこととなった。

脚注




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