コーダ_(聴者)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > コーダ_(聴者)の意味・解説 

コーダ (聴者)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/05 03:11 UTC 版)

コーダCODA, Children of Deaf Adults)とは、きこえない・きこえにくいをもつ聞こえる子どものことを指す[1][2]

両親ともに、もしくはどちらか一方の親だけがろう者・難聴者でも、聞こえる子どもはコーダとされる。

1980年代アメリカで生まれた言葉である[1]1994年、D-PRO主催 THE DEAF DAY'94でのレスリー・グリア(米国/ろう者)の講演にて、日本で初めて「CODA」という名称と概要が紹介された。その後、成人したコーダが初めて集まり[1]、「J-CODA(ジェイコーダ、Japan Children of Deaf Adults)」が結成された[3][1]。2015年に組織化して会員登録を開始した[4]

また、きこえない・きこえにくい兄弟を持つ場合は ソーダ(SODA、Sibling of a Deaf Adult)、配偶者がろう者の場合は(SpODA、Spouse of Deaf Adult、スポーダ)という。

解説

コーダの中でも、ろうの親を持つコーダにおいては、生まれた時から親を通してろう文化との関わりを持つ。

また、視覚言語である手話を家庭内で身に付けることがある。このため、コーダが手話と音声言語のバイリンガルとなることがある。

ろう文化や手話に誇りを持ち、手話通訳者となるコーダも少なくない。

一方で、コーダの中には一切手話を使わない者もいる。

NHK手話ニュース』キャスターであり手話通訳士の田中清と丸山浩路はコーダであるが、丸山は長い間自身がコーダであることを公表していなかった。こうしたことからも、コーダの置かれた複雑な状況を推察することができる。

一方、彼らより若い世代のコーダである手話バンド「こころおと」の武井誠は、自身がコーダであることを積極的にアピールし、ろう文化の紹介やろう文化と聴者の文化の融合に取り組んでいる。

自身もコーダであるポール・プレストンは、著書『聞こえない親をもつ聞こえる子どもたち――ろう文化と聴文化の間に生きる人々』(現代書館、2003年)の中でコーダについて述べている。

自身もコーダである中津真美(東京大学バリアフリー支援室特任助教)が、13歳以上のコーダ104人を対象として実施した調査では、幼い頃から親の通訳をしてきたことで、72%が「小さい頃から親を守る気持ちがあった」、61%が「周囲に親をばかにするようなことはさせないと思ってきた」と回答するなど、コーダと親との間に特有の親子関係があることがわかった[1]。また関連する研究では、コーダが成長とともに親に対して複雑な感情を持ちやすいこともわかった[1]。中津は自身の体験も含めて「コーダは親の病院の診察や重要な契約で、高度な通訳を担って疲弊することもある。周囲の大人は、子供の年齢にそぐわぬ過度の負担がないか気を配ってほしい」と訴えた[1]

調査

CODAは幼児期から親の通訳や複雑で感情的な代理交渉を行うことから、同年代の子どもたちに比べて心理的負担が大きい傾向が見られる[5]

104例(複数回答)において、親との会話では、手話92例 (88.5%)、口話が74例 (71.2%)、その他身振り筆談なども併用して会話を行う。しかし、それらを用いても十分な会話が成立する例は半数であり、親との会話の障壁が確認された[5]

また、親への差別や偏見に出くわすことも多い[6][7]

一方で、コーダゆえの自身の環境をポジティブに捉える例もみられている。

脚注

  1. ^ a b c d e f g コーダ (CODA) …「親を守る」「面倒」揺れる感情 ヨミドクター、読売新聞社、2015年10月8日
  2. ^ CODA』 - コトバンク
  3. ^ J-CODA
  4. ^ J-CODAの歩み J-CODA 公式サイト
  5. ^ a b 中津真美、廣田栄子「聴覚障害の親をもつ健聴児 (Children of Deaf Adults: CODA) の通訳役割の実態と関連する要因の検討」『AUDIOLOGY JAPAN』第63巻第1号、日本聴覚医学会、2020年2月28日、69-77頁、doi:10.4295/audiology.63.69ISSN 0303-8106 
  6. ^ 聴覚障害者の子、悩み共有 「不良」の偏見が父母苦しめ”. 毎日新聞. 2022年9月26日閲覧。
  7. ^ 感動だけじゃない葛藤、差別 聞こえない親がいる「コーダ」って:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2022年4月19日). 2022年9月26日閲覧。

参考文献

  • ポール・プレストン『聞こえない親をもつ聞こえる子どもたち ―ろう文化と聴文化の間に生きる人々』現代書館、2003年
  • 澁谷智子『コーダの世界―手話の文化と声の文化』医学書院、2009年
  • 五十嵐大『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』幻冬舎、2021年
  • 澁谷智子(編)『ヤングケアラーわたしの語り ―子どもや若者が経験した家族のケア・介護』生活書院、2020年
  • 中津真美『コーダ きこえない親の通訳を担う子どもたち』金子書房、2023年

関連項目

外部リンク


「コーダ (聴者)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「コーダ_(聴者)」の関連用語

コーダ_(聴者)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



コーダ_(聴者)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのコーダ (聴者) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS