クロアカマキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌスとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > クロアカマキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌスの意味・解説 

クロアカ・マキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/05 04:16 UTC 版)

クロアカ・マキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌス
イタリア語: San Sebastiano gettato nella Cloaca Massima
英語: Saint Sebastian Thrown into the Cloaca Maxima
作者ルドヴィコ・カラッチ
製作年1612年
種類キャンバス上に油彩
寸法167 cm × 233 cm (66 in × 92 in)
所蔵J・ポール・ゲティ美術館ロサンゼルス

クロアカ・マキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌス』(クロアカ・マキシマになげこまれるせいセバスティアヌス、: San Sebastiano gettato nella Cloaca Massima: Saint Sebastian Thrown into the Cloaca Maxima)は、イタリアバロック期のボローニャ派の画家ルドヴィコ・カラッチが1612年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。1971年に購入されて以来、ロサンゼルスJ・ポール・ゲティ美術館に所蔵されている[1]。なお、パリルーヴル美術館には本作の準備素描が収蔵されている。

作品

3世紀末にナルボンヌで生まれた聖セバスティアヌスは、ミラノで徴兵された。洗礼を受けた彼は牢獄のキリスト教徒を兵士の権限でひそかに逃したが、この件が知られたため殉教するにいたった。彼は最初にローマ皇帝ディオクレティアヌスの命により矢で射られたが、聖イレーネに介抱され、生き延びる[2]。後に彼は撲殺され、その遺体は排水場に遺棄されることとなった[1][2]。埋葬がされなかったことは、キリスト教の儀式に対する最大の蔑視を意味した[1]

矢で射抜かれ、身体に傷を負った聖セバスティアヌスは腺ペスト患者の守護聖人で、16世紀に腺ペストの大流行が起きたカラッチの故郷の町ボローニャでもローマでも人気のある主題であった[1]。絵画で、聖セバスティアヌスは伝統的に木か柱に縛られ、矢に射抜かれる姿で表される。あるいは、聖イレーネに介抱される姿で表されることもある。一方、カラッチは、古代ローマの兵士たちが聖セバスティアヌスの遺体をローマの主要な排水場であったクロアカ・マキシマに投げ込む場面を描くことを選択しており、それによって英雄的な殉教死を価値のない遺体として表現している[1]

準備素描、ルーヴル美術館パリ

本作は、後にウルバヌス8世 (ローマ教皇) となるマッフェオ・バルベリーニ (Maffeo Barberini) から委嘱された。同時代の手紙に明らかなように、作品が設置される場所は、新しく建造されたサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会英語版 (ローマ) 内に枢機卿が所有した礼拝堂下の地下室であった。礼拝堂は、聖セバスティアヌスに奉納されるべく、12世紀の小礼拝堂跡地に設けられることになっていた。その小礼拝堂は一般にサン・バスティアネッロ (San Bastianello) として知られ、クロアカ・マキシマから聖セバスティアヌスの遺体が回収された場所に設立されたものであった[1]。しかし、地下室は実現しなかったのに加え、マッフェオ・バルベリーニは本作が礼拝堂に展示するのにふさわしくないと感じた[1][3]。弟に宛てた手紙の中で、彼はカラッチの絵画が「あまり信仰心を啓発しない」と懸念していることを伝えている[1]。結局、彼は、礼拝堂に掛ける絵画をパッシニャーノ英語版作のより啓発的な『クロアカ・マキシマから回収される聖セバスティアヌスの遺体』に置き換えた[4]。しかし、マッフェオ・バルベリーニは、本作が「荒々しい力を表現したよい例」として評価し、自身の個人コレクションに加えたのである[1]。この作品に見られる容赦ない自然主義は、17世紀絵画において決定的な要素となる[1]

かくして、カラッチの絵画はバルベリーニ家英語版のコレクションに入り、いくつかの財産目録に記載された。カルロ・チェーザレ・マルヴァージア英語版は、自身の著作『フェルシーナ・ピットリーチェ』 (1678年) で本作が「4つの泉のパレストリーナ王子 (バルベリーニ家の称号) のために」制作された作品であるとしているが、4つの泉とはバルベリーニ宮殿のある場所のことである。当時の作品の題名は『聖セバスティアヌスとして描かれた、兵士によって埋葬されるパリヌルス (Palinurus)』であった。

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j (英語) Saint Sebastian Thrown into the Cloaca Maxima”. J・ポール・ゲティ公式サイト (英語). 2025年4月5日閲覧。
  2. ^ a b 「聖書」と「神話」の象徴図鑑 2011年、151頁。
  3. ^ (イタリア語) Andrea Emiliani, Ludovico Carracci, Bologna, 1993, pp. 152-154.
  4. ^ (イタリア語) Catalogue entry - Fondazione Federico Zeri

参考文献

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  クロアカマキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌスのページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「クロアカマキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌス」の関連用語

クロアカマキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



クロアカマキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのクロアカ・マキシマに投げ込まれる聖セバスティアヌス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS