ウルカヌスに驚かされるマルスとヴィーナス (ブーシェ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/28 17:07 UTC 版)
| フランス語: Mars et Vénus surpris par Vulcain 英語: Mars and Venus surprised by Vulcan |
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| 作者 | フランソワ・ブーシェ |
|---|---|
| 製作年 | 1754年 |
| 種類 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 164 cm × 71 cm (65 in × 28 in) |
| 所蔵 | ウォレス・コレクション、ロンドン |
『ウルカヌスに驚かされるマルスとヴィーナス』(ウルカヌスにおどろかされるマルスとヴィーナス、仏: Mars et Vénus surpris par Vulcain, 英: Mars and Venus surprised by Vulcan)は、18世紀フランス・ロココ期の巨匠フランソワ・ブーシェが1754年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。ヴィーナス、ウルカヌス、マルスを主題として表している。作品は現在、ロンドンのウォレス・コレクションに所蔵されている[1]。
作品
ホメロスの『オデュッセイア』 (第8歌) によれば[2]、鍛冶の神ウルカヌスは妻ヴィーナスがマルスと不貞している噂を聞き、金色の網を製造した後、その網を不誠実な2人に掛け、捕まえた。その後、ウルカヌスはほかの神々を招待し、ヴィーナスとマルスを辱めて楽しんだ[1][2]。
数世紀にわたって、数々の画家たちがこの逸話を取り上げてきた。その中でも、ティントレットの『ウルカヌスに驚かされるヴィーナスとマルス』 (アルテ・ピナコテーク、ミュンヘン) は著名である[2]。ヴィーナスとマルスを驚かせるウルカヌスなしに2人の恋人たちだけを描いた絵画もある。サンドロ・ボッティチェッリの『ヴィーナスとマルス』 (ロンドン・ナショナル・ギャラリー )[3]、ピエロ・ディ・コジモの『ヴィーナス、マルスとキューピッド』 (ベルリン絵画館)[4]、パオロ・ヴェロネーゼの『キューピッドによって結ばれるマルスとヴィーナス』 (メトロポリタン美術館、ニューヨーク)[5]などである。
ブーシェは、本作を描くために多くの素描を準備した。作品は、やはりウォレス・コレクションに所蔵される『ヴィーナスとウルカヌス』および『パリスの審判』とともにヴィーナスの情景を表す連作をなしている[1]。これらの作品がどこの場所のために意図されたかはわかっていない。しかし、異例の大きなサイズやあからさまなエロティシズムは、室内装飾のためのものであったことを示唆する[1]。なお、19世紀に、これら3作は、やや大きなサイズの『捕らえられたキューピッド』 (ウォレス・コレクション) とともに衝立を形成するために拡大されている[1]。
ブーシェの連作 (ウォレス・コレクション蔵)
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『ヴィーナスとウルカヌス』(1654年)
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『パリスの審判』(1654年)
脚注
- ^ a b c d e “Mars and Venus surprised by Vulcan”. ウォレス・コレクション公式サイト (英語). 2025年10月23日閲覧。
- ^ a b c C.H.Beck 2002年、61頁。
- ^ ラングミュア 2004, pp. 26–27.
- ^ 『NHK ベルリン美術館 1 ヨーロッパ美術の精華』、1993年、97頁。
- ^ 『メトロポリタン美術館ガイド』、2012年、252頁。
参考文献
- C.H.Beck『アルテ・ピナコテーク ミュンヘン』、Scala Pulblishers、2002年刊行 ISBN 978-3-406-47456-9
- エリカ・ラングミュア『ナショナル・ギャラリー・コンパニオン・ガイド』高橋裕子 訳、National Gallery Company Limited、2004年11月。ISBN 4-944113-57-9。
- 『NHK ベルリン美術館 1 ヨーロッパ美術の精華』、 角川書店、1993年刊行、ISBN 4-04-650901-5
- マーク・ポリゾッティ発行人兼編集責任者『メトロポリタン美術館ガイド』、メトロポリタン美術館、2012年刊行 ISBN 978-4-904206-20-1
外部リンク
- ウルカヌスに驚かされるマルスとヴィーナス (ブーシェ)のページへのリンク