アークの電気的特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 01:48 UTC 版)
アーク溶接において重要なことは適切な電流値を維持しつつ溶接を連続して行うことである。しかし、電極の消耗や、手作業の場合は作業者の手のブレなどで電極の位置が変わるとアークの長さが変化してしまい、アークにかかる電圧(アーク電圧)が大きく変化する。電圧が変化することで電流値が変化し、安定した溶接を行うことが困難になる。また、炭酸ガスアーク溶接のような半自動溶接に用いられる溶接機は電圧値と電流値を任意に選択する必要があり、作業者は工学的知見に基づいた適切な値を設定しなければならない。 通常の電気伝導体の場合、抵抗値は電圧値によらず一定であると見なせるが、アークの場合は電圧が上下することによって抵抗値が大きく増減する。電圧が低い場合、右図(1)のようにアークは短くなり抵抗値が減る。逆に電圧が高い場合は、右図(3)のようにアーク長は長くなり抵抗値は上がる。また、上記のような電圧値と電流値を設定できる溶接機において、同じ電圧で電流値を上げた場合、右図(1)のようにアーク長は短くなる。逆に同じ電圧で電流値を減らせば、右図(3)のようにアーク長は長くなる。 アーク中に流れる電流は電子が担っているので、電子の放出部分である陰極部の特性はアーク溶接にとって支配的な影響を及ぼす。 アークの電気的特性は電流、電圧の大小に大きく左右される。直流の場合、電流値が小さい場合はアーク電圧は負抵抗特性を示し、電流の増加に伴って減少する。電流が被覆アーク溶接に用いるような中程度の値の場合はアーク電圧はほとんど変化せず、定電圧特性を示す。炭酸ガスアーク溶接に用いるような大きな電流値の場合は上昇特性になり、電流の増加に伴ってアーク電圧は増加する。交流の場合も平均化すると直流とほぼ同じような特性となるが、交流であるがため瞬間における電圧は小電流、中電流、大電流における特性をそれぞれ示す。電流値の正負が入れ替わるタイミングでアークは消滅と再点弧を繰り返すので、交流電源装置の無負荷電圧は再点弧時に必要な電圧を上回り、かつ無負荷電圧が電流よりも進んだ位相になるような特性が電源装置に要求される。
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