アルジス・バドリス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/24 19:13 UTC 版)

アルジス・バドリス(Algis Budrys、1931年1月9日 - 2008年6月9日)はアメリカ合衆国のSF作家、批評家。リトアニア系。フランク・メイスン(Frank Mason)などの別名でも知られる。
経歴
バドリスはアルギルダス・ヨナス・ブドリース (Algirdas Jonas Budrys) として東プロイセンのケーニヒスベルクで生まれた。父のヨナス・ブドリースは当時駐ケーニヒスベルク・リトアニア総領事であり、アルジスが5歳だった1936年に駐米総領事となった。1940年、本国リトアニアがソ連に編入されると、一家はそのまま米国に留まることとした。
バドリスはまずマイアミ大学で、その後ニューヨーク州のコロンビア大学で教育を受けた。1952年、バドリスは編集者としてSF出版社ノーム・プレスやSF誌「ギャラクシー・サイエンス・フィクション」で働き始めた。1961年からリージェンシー・ブックスの編集者となり、のち「プレイボーイ」誌の書籍部門の編集部長となった[1]。
最初に活字になった彼のSF作品は"The High Purpose"で、「アスタウンディング」誌の1952年に掲載された。彼の1950年代のSF作品には、ジョン・A・セントリー(John A. Sentry)名義で発表されたものもある。これは彼のリトアニア名を英語化したものである。他にも変名は複数ある。そのうちの幾つかは彼の雑誌"Tomorrow Speculative Fiction"で、小記事の署名として復活した。1950年代のSF雑誌などで使われたものとしては、ウィリアム・スカルフ(William Scarff)が挙げられる。なおジェローム・ビクスビイ(Jerome Bixby)との共同ペンネームとしてアルジャー・ローム(Alger Rome)を使用した。
バドリスが1960年代に書いた中長編『無頼の月』(Rogue Moon)はヒューゴー賞の候補となり(受賞はせず)、後にアンソロジー"The Science Fiction Hall of Fame"(1973年)に収録された。冷戦を扱った作品『アメリカ鉄仮面』(Who?)は1973年に映画化がなされた。バドリスはヒューゴー賞、ネビュラ賞には幾度も候補となりそして落選したが、SF研究協会(Science Fiction Research Association)の2007年度ピルグリム賞(Pilgrim Award)を「生涯を通じたSF研究への寄与」によって受賞している。
1966年のサスペンス小説の短編"The Master of the Hounds"はエドガー賞の候補になった [2]。
バドリスは結婚して4人の息子をもうけ、最期までイリノイ州エヴァンストン(Evanston)で暮らした。彼は悪性黒色腫の転移によって2008年6月9日に死亡した。[3]
日本では翻訳に恵まれていないが、単行本化されていない『無頼の月』は文学的な名作として、鏡明、殊能将之[4]らから高い評価を受けている。鏡明は2017年のインタビューで、『無頼の月』をアトリエサードから刊行予定で翻訳中であり、なおかつ、この作品は未完成であるため自身で続編を書きたいと、語っている[5]。
作品リスト
長編
- False Night (1954)
- 『第三次世界大戦後のアメリカ大陸』井上一夫訳、久保書店QTブックスSF、1968年
- Man of Earth (1956)
- Who? (1958)
- The Falling Torch (1959)
- Rogue Moon (1960)
- Some Will Not Die (1961) ("False Night"の加筆修正版)
- The Iron Thorn (1967) (イフ誌に連載され、"The Amsirs And The Iron Thorn"として単行本化)
- Michaelmas (1977)
- Hard Landing (1993)
- The Death Machine (2001) (バドリスの望みに反して出版された、『無頼の月』の新版)
作品集(小説、エッセイ、および混合)
- The Unexpected Dimension (1960)
- Budrys' Inferno (1963)
- The Furious Future (1963)
- Blood and Burning (1978)
- Benchmarks: Galaxy Bookshelf (1984)
- Writing to the Point (1994)
- Outposts: Literatures of Milieux (1996)
- Entertainment (1997)
- The Electric Gene Machine (2000)
短編
- 「隠れ家」 Nobody Bothers Guns - 初出はアスタウンディング誌(1955年11月号)。アンソロジー『SFベスト・オブ・ザ・ベスト(下)』創元SF文庫に収録。
- "The Price" (1960) - 初出はF&SF誌(1960年2月)。アンソロジー"The War Book" (ジェイムズ・サリス編、1969年)にも収録。
- "For Love" - 初出はギャラクシー・サイエンス・フィクション誌(1962年6月)。フレデリック・ポール編の"The Seventh Galaxy Reader" (Doubleday Science Fiction, 1964)にも収録。
- "Be Merry" (1966) - イフ誌(December 1966, Vol. 16, No. 12, Issue 109)に掲載。
音声資料
- 84.2 Minutes of Algis Budrys (1995) - Unifont (バドリス所有の会社)。カセットとして発売。バドリスによる、自身の作品"The Price,"、"The Distant Sound of Engines"、 "Never Meet Again"、 "Explosions!"の朗読。
雑誌
- Tomorrow Speculative Fiction (1993-2000); はじめバドリスの編集でパルプハウス社から出版され、後にカンディス・エリオットと共編でUnifontから刊行。10年後には紙媒体での刊行を終え、ウェブマガジンになる。
アンソロジー
- L. Ron Hubbard Presents Writers of the Future, Vol. III (1987)
- L. Ron Hubbard Presents Writers of the Future, Vol. 6 (1990)
- L. Ron Hubbard Presents Writers of the Future, Vol 12 (1996)
- L. Ron Hubbard Presents Writers of the Future Vol. 16 (2000)
- L. Ron Hubbard Presents Writers of the Future, Vol 19 (2003)
出典
- ^ ジュディス・メリル編『SFベスト・オブ・ザ・ベスト(下)』創元SF文庫、P.194
- ^ ジュディス・メリル編『SFベスト・オブ・ザ・ベスト(下)』創元SF文庫、P.194
- ^ ^ Jensen, Trevor. "Tapped human side of science fiction", chicagotribune.com, 2008-06-11. Retrieved on 2008-06-11.
- ^ 2002年5月13日 - mercysnow official homepage (Internet Archive)
- ^ 『ナイトランド・クォータリー』vol.09 P.11
外部リンク
- アルジス・バドリス - Internet Speculative Fiction Database
- Bibliography in SciFan(英語・リンク切れ)
- Brief autobiography(英語)
- Interview with Algis Budrys(英語)
- 翻訳作品集成>アルジス・バドリス(Algis Budrys) - 邦訳作品の書誌データ
- アルジス・バドリスのページへのリンク