アブリコソフ-ボルテックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:30 UTC 版)
「量子渦」の記事における「アブリコソフ-ボルテックス」の解説
超伝導体分野で現れる量子渦は特にアブリコソフ-ボルテックス(Abrikosov vortex)と呼ばれる。アブリコソフボルテックスは第二種超伝導体において、超伝導体を磁束量子が貫くときに、その周りに生じる超伝導電流の渦である。アレクセイ・アブリコソフによって1957年に予測された。 この超伝導電流の渦はその中心が常伝導状態であり、電流はその周囲(超伝導側)を環状に流れている。このサイズはギンツブルグ-ランダウ理論より導かれるコヒーレンス長ξであらわされる。この電流密度はロンドンの侵入長λ程度の広がりを持ち、ロンドン方程式に従い、中心から離れるにつれ指数関数的に減少する。 この環状電流が作る磁場は、単体の磁束量子 Φ 0 {\displaystyle \Phi _{0}} と等しい。量子論的見地からこれをFluxonと呼ぶこともある。 アブリコソフ格子の一つのボルテックスが、十分遠方に作る磁場は次のように記述される。 B ( r ) = Φ 0 2 π λ 2 K 0 ( r λ ) ≈ λ r exp ( − r λ ) , {\displaystyle B(r)={\frac {\Phi _{0}}{2\pi \lambda ^{2}}}K_{0}\left({\frac {r}{\lambda }}\right)\approx {\sqrt {\frac {\lambda }{r}}}\exp \left(-{\frac {r}{\lambda }}\right),} ここで、 K 0 ( z ) {\displaystyle K_{0}(z)} は0次のベッセル関数である。 上記の式より r → 0 {\displaystyle r\to 0} の極限で、磁場は B ( r ) ∝ ln ( λ / r ) {\displaystyle B(r)\propto \ln(\lambda /r)} となり対数関数的に発散する。実際には r ≲ ξ {\displaystyle r\lesssim \xi } に対して磁場は B ( 0 ) ≈ Φ 0 2 π λ 2 ln κ , {\displaystyle B(0)\approx {\frac {\Phi _{0}}{2\pi \lambda ^{2}}}\ln \kappa ,} と導かれる。ここで κ = λ / ξ {\displaystyle \kappa =\lambda /\xi } はギンツブルグ-ランダウパラメーターとして知られる量であり、第二種超伝導体においては κ > 1 / 2 {\displaystyle \kappa >1/{\sqrt {2}}} と定義される。 アブリコソフ-ボルテックスは第二種超伝導体の中の格子欠損にトラップされる。たとえ初めにアブリコソフ-ボルテックスが無い状態であっても、一度磁場を臨界磁場( H c 1 {\displaystyle H_{c1}} )以上に加えれば、磁場は超伝導体の中にアブリコソフ-ボルテックスを纏って侵入する。それぞれのボルテックスは磁束量子 Φ 0 {\displaystyle \Phi _{0}} 一つを運ぶことになる。アブリコソフ-ボルテックスは、格子欠損などにトラップされない場合三角格子状に並び、その(磁束量子の)平均密度はほぼ印加磁場と等しい。このとき形成される格子をアブリコソフ格子と呼ぶ。
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