その他の真社会性生物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/22 16:16 UTC 版)
当初、真社会性は膜翅目と等翅目でしか知られていなかった。しかし血縁選択の理論に従えば、個体間の血縁度が高ければ、他の生物でも血縁度が高くなりさえすれば、真社会性が進化してもおかしくない。実際に、真社会性はその後さまざまな生物で見つかっている。 血縁選択説によれば、クローン生殖する生物はすべての遺伝子を共有するので、利他行動が進化しやすい。ハミルトンはアブラムシにも不妊カーストが存在する可能性を指摘した。アブラムシでは、雌親が単為生殖でクローンを多数産んでコロニーを作るので、個体の出入りがなければ、コロニー内の血縁度rは1である。したがって、b>cであれば、すなわち利益がコストをわずかでも上回れば、利他行動は進化すると考えられる。その予測通り、青木重幸はアブラムシの一種ボタンヅルワタムシが不妊の兵隊カーストをつくることを確認した。その後、他のアブラムシでも真社会性は確認されており、アブラムシ類のなかで真社会性の進化が複数回起こっていることが判明した。 さらに、昆虫以外の動物でも真社会性が発見された。1つはカイメンに住むツノテッポウエビ類、もう1つはトンネルを掘って地中で暮らすハダカデバネズミである。これらの例も、やはり血縁度の高さから説明できる。 一部の無脊椎動物は多くの個体(個虫)が集まって群体を作る。なかでも外肛動物の裸喉綱などいくつかの分類群では、群体を構成する個虫に分化が見られ、一部の個虫は繁殖に関与しない。血縁選択説の観点からすると、このような群体は無性生殖によって数を増すから、その個体間の血縁度は1であり、このような群体内での個体の分化は社会性昆虫における不妊カーストの出現と同様の現象と見ることができる。
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