しきい線量と影響の事例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 05:37 UTC 版)
「放射線医学」の記事における「しきい線量と影響の事例」の解説
しきい線量 (threshold dose) とは、放射線をある一定レベル以上の被曝を受けると、確定的放射線影響が起きるしきい値となる線量のことであるが、しきい線量のある確定的影響と、しきい線量はないと仮定されている確率的影響とがある。 確定的影響の例には、胎児への影響、器官形成期の被曝による奇形の発生があり、そのしきい線量は100mGy(ミリグレイ)とされている。しかしながら、放射線診断での胎児の平均被曝量は、腹部撮影 1.4mGy、注腸造影検査 6.8mGy、腹部CT 8.0mGy、骨盤CT 25.0mGyなどとなっており、このしきい線量100mGyより小さい被曝であり、顕著な影響があるとは考えられないとされている。 確率的影響の例には、複数回のX検査による被曝で白血病またはがんになる可能性がある。米国では、CTスキャンによる検査が年間7000万件以上行われており、そのうちの2万9000件が将来的にCTに関連した癌の発症を引き起こすと推定されている。なお、この確率的影響にはしきい線量はなく、被曝量に比例するとされる。この仮説によると、影響の確率は0にはならないが、日常的な通常の放射線検査での被曝量は、問題となるようなものではないという主張がある。一方、妊娠女性が放射線診断を受ける場合、X線検査の回数と胎児の相対リスクには比例関係があるという報告などもあり、胎児へのリスクをまったく考慮する必要がないとまでは言い切れない不確かさがあり、確定的な結論は出ていない。また、白血病では50〜200mGy以下の被曝では発生率の増加は統計的に明かではない。通常のX線検査では、胸部0.04mGy、腹部0.4mGy、腰椎1.4mGy、上部消化管8.2mGy程度であり、極端な回数の検査をしないかぎり、心配する必要はないという主張もある。
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