おそくづの絵
- 春画を云ふなり。平安朝時代に行はれたる古語なるべし。『古今著聞集』に「上手どものかきて候ふおそくつの絵なんどを御覧も候へ、その物の寸法は分にすぎて大きに書きて候事、いかで実にはさは候ふべき」とあり。これにつきて『嬉遊笑覧』に「おそはたはれたること、くづは屑なるべし。陽物を云ふに似たり」とあり。
- 春画の古語。古今著聞集「さも候はず、上手どもの書きて候おそくづの絵など御覧候へ、そのものの寸法は分に過ぎて大に書て候ふこそ、いかでか実にはさは候ふべき」。嬉遊笑覧「おそはたはれたること、くづは屑なるべし、陽物をいふに似たり」。類聚名目抄「人の妻みそかごとすればぬぐ沓重なるといへば襲沓の意か」。燕居雑筆「春画は和名おそぐつの絵といひて俗に笑絵のことなり」。文化版、輪翁画譚「このことをこなたの詞にはおそくつといへりおそくつとはおそひくつといふ詞の中略にやといへれどいかがあらん、もし燭余をほそくつなどいひし事もありけんには陰茎の首を燭余にたとへていひもしけんと思はるれど、それも証拠なければいひ難きにや」。松屋筆記「おそは虚言、くつは口の通言にて口の義歟、可考。仮名もおそくつと書たるはいかにぞや」。「続群書類従」中の「恒貞親王伝残欠」に厭息図とありおそくづは厭息(おそく)の図にて災難を偃息するの儀なりとの説あり。孝経楼漫筆「おそくづの絵今の枕絵のことなり」。
- 『古今著聞集』に此語出づ。飯島花月翁の「おそくづ」を見よ。『続群書類従』に収めたる「恒貞親王伝残欠」に厭息図とあり、おそくづは厭息の図にて災難をまじなひ厭伏せしむる謂なり。明衡消息に「偃息蓬戸耳註偃息者休息」とあり管子には「偃側注曰猶倚伏也」と出づ、又医心方、房内篇には「至理第一曰偃伏開張之勢、側背前却之法云々」とあり。『嬉遊笑覧』の説非なり。
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