“フレズノのカビ”と粘性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 14:03 UTC 版)
「マロラクティック発酵」の記事における「“フレズノのカビ”と粘性」の解説
20世紀半ば、カリフォルニアのセントラルヴァレーで造られていた甘口の酒精強化ワインの中に、瓶内で綿状の菌糸のようなものが発生する現象が起きるようになった。酒精強化を行うことでワインのアルコール度数は20%を越えるため、ほとんどのワイン醸造に悪影響を与える微生物は生育できなくなるはずである。これは最初に発見された場所の名から「フレズノのカビ」と呼ばれるようになったが、実際の原因はL. fructivoransであることが同定され、殺菌および二酸化硫黄濃度を適切に保つことで対処できることが分かった。 ラクトバシラス属やペディオコッカス属のなかには、多糖類を合成することでワインにオイリーな粘性を与えるものもあり、特にP. damnosusとP. pentosaceusが知られている。ラクトバシラス属が生成する多糖類としてはグルカンが挙げられるが、これはグルコースから合成され、ワイン中の濃度は50~100mg/Lとワイン中に存在する糖の0.005~0.01%に過ぎないがワインをドライなものにしてしまう。粘性の増加は樽やタンクでも発生しうるが、多くは瓶詰め後の数か月間で発生する。pHが3.5以上であったり、二酸化硫黄濃度が低いときはこの劣化が発生するリスクが高い。 この劣化は、パスツールが“graisse”(フランス語で「獣脂」の意)、“les vins filant”(フランス語で「ねっとりとしたワイン」の意)と呼んだものであるが、アップルワインやシードルでも発生する。また、Streptococcus mucilaginous、Candida krusei、Acetobacter rancensといった菌が原因になることもある。
※この「“フレズノのカビ”と粘性」の解説は、「マロラクティック発酵」の解説の一部です。
「“フレズノのカビ”と粘性」を含む「マロラクティック発酵」の記事については、「マロラクティック発酵」の概要を参照ください。
- “フレズノのカビ”と粘性のページへのリンク