SI接頭語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 23:01 UTC 版)
SI接頭語を付ける単位、付けない単位
SI接頭語はすべての計量単位に付することができるわけではない。以下では、国際単位系国際文書に掲げられている計量単位と計量法上の法定計量単位に分けて説明する。
国際単位系の規定
国際単位系国際文書においてはSI接頭語の付け方は簡易に規定されている。すなわちSI接頭語を付ける位置、SI接頭語の冪乗をどのように解釈すべきか(#接頭語とべき乗との関係)などについて、計量法の規定とは異なり、やや曖昧な規定となっている。
SI単位の場合
SI単位はSI基本単位とSI組立単位から成るが、そのすべてに、SI接頭語を付することができる(ただしキログラムとキログラムを含む組立単位は例外)。
SI併用単位の場合
SI併用単位のうち、SI接頭語を付けられる単位、付けられない単位、不明の単位があり、次のとおりである。詳細は、SI併用単位#SI接頭語との組合わせを参照。
それ以外の非SI単位
SI併用単位以外の非SI単位にSI接頭語を付けることができるかどうかについては、国際単位系国際文書には何らの規定がない。ただし、これまでの慣例として例えば次の単位にはSI接頭語を付けてきた実績がある。
以下の単位は、計量法上の法定計量単位であり、SI接頭語を付することができる。
計量法の規定
計量法では、非法定計量単位の取引・証明における使用を禁止(罰則を伴う。)している以上、SI接頭語の使用について厳密に法定しておく必要がある。このため、どの計量単位に、どのようにSI接頭語を付することができるかを下記のように厳密に規定しているため、やや複雑な条文となっている(計量単位令第4条第2号・第3号、別表第5)。
- SI接頭語を付することができる単位とできない単位を明確に分けている。
- 組立単位を構成する単位(「構成単位」)のうちどの単位の直前にSI接頭語を付するかを明確に規定している。
- 組立単位の途中に現れる構成単位の直前に付されるSI接頭語が表す乗数(10の何乗)の二乗・三乗・逆数が、どの構成単位に係るのかを明確に規定している。
SI単位
法定計量単位のうち、SI単位となっている計量単位には、キログラム(及びキログラムを含む組立単位)以外は例外なく、SI接頭語を付けることができる(SI国際文書の規定と同一の規定)。法定計量単位のうちの非SI単位については、付けられる単位と付けられない単位が明確に規定されている。
法定計量単位のうちSI接頭語を付けることができない単位
以下の単位の直前にはSI接頭語を付けることができない[8][9]。
- 質量:キログラム(「キロ」そのものが接頭語であるため)
- 時間:分、時
- 角度:度、分、秒
- 電磁波の減衰量・音圧レベル・振動加速度レベル:デシベル(「デシ」そのものが接頭語であるため)
- 圧力:気圧
- 質量流量:キログラム毎秒、キログラム毎分、キログラム毎時 (「キロ」そのものが接頭語であるため)
- 回転速度:毎秒、毎分、毎時、回毎分、回毎時
- 濃度:
- 質量百分率、質量千分率、質量百万分率、質量十億分率、質量一兆分率、質量千兆分率
- 体積百分率、体積千分率、体積百万分率、体積十億分率、体積一兆分率、体積千兆分率
- ピーエッチ
以下の8単位の直前にはSI接頭語を付けることができない。ただし、後述のようにそれぞれの単位の「メートル」の語の直前には付することができる。
- 平方メートル、立方メートル、毎メートル、キログラム毎立方メートル、平方メートル毎秒、立方メートル毎秒、立方メートル毎分、立方メートル毎時
単位の途中の語にSI接頭語を付することができる単位
次の単位の「メートル」、「リットル」、「ステラジアン」の語の直前にSI接頭語を付することができる[10]。
- 平方メートル、立方メートル、毎メートル、キログラム毎立方メートル、平方メートル毎秒、立方メートル毎秒、立方メートル毎分、立方メートル毎時
- グラム毎立方メートル、モル毎立方メートル、グラム毎リットル、モル毎リットル、ニュートンメートル、ニュートン毎平方メートル、ウェーバ毎平方メートル、ワット毎平方メートル、カンデラ毎平方メートル、ワット毎メートル毎ケルビン、ワット毎メートル毎度、ボルト毎メートル、アンペア毎メートル、ワット毎ステラジアン
次の単位の直前にSI接頭語を付することができ、かつ同時に「メートル」、「リットル」、「ステラジアン」の語の直前にSI接頭語を付することができる[11]。
- グラム毎立方メートル、モル毎立方メートル、グラム毎リットル、モル毎リットル、ニュートンメートル、ニュートン毎平方メートル、ウェーバ毎平方メートル、ワット毎平方メートル、カンデラ毎平方メートル、ワット毎メートル毎ケルビン、ワット毎メートル毎度、ボルト毎メートル、アンペア毎メートル、ワット毎ステラジアン
以上の諸規定を適用した例:
- 平方メートルにSI接頭語を付する場合:
- キロ平方メートルとすることはできない。
- 平方キロメートルとすることができる。
- 上記の場合、平方キロメートル = キロが表す乗数(= 十の三乗 = 1000)の二乗 × 平方メートル = 10002 × 平方メートル
- グラム毎立方メートルにSI接頭語を付する場合:
- グラム毎立方センチメートルと、メートルの直前に「センチ」を付することができる。
- 上記の場合、グラム毎立方センチメートル = センチが表す乗数(= 十の二乗分の一)の三乗の逆数 × グラム毎立方メートル = 106 × グラム毎立方メートル
- さらに グラム毎立方メートルは、その直前にもSI接頭語を付することができるので、ミリグラム毎立方センチメートル = ミリが表す乗数(= 十の三乗分の一) × グラム毎立方センチメートル = 10-3 × 106 × グラム毎立方メートル = 1000グラム毎立方メートル、となる。
同様にして次のようなSI接頭語を付した単位が定義できる。
- 平方センチメートル(cm2)、平方ミリメートル毎秒(mm2/s)
- 立方センチメートル毎分(cm3/min)、立方センチメートル毎時(cm3/h)
- キログラム毎立方センチメートル(kg/cm3)
- メガニュートン毎平方ミリメートル(MN/mm2)
- キロワット毎平方センチメートル(kW/cm2)
- ミリワット毎センチメートル毎ケルビン(mW cm-1 K-1)
SI接頭語を付することができない非SI単位
- 特殊の用途のみに用いる単位(計量法に基づく計量単位一覧#特殊の計量に用いる計量単位(9量13分野26単位))
- ヤードポンド法の単位
- 仏馬力(HP)
- ^ 日本国語大辞典、第12巻(せき-たくん)、p.44、1976年4月15日第1版第2刷発行、では、「接頭語」を主見出しにしている。
- ^ 広辞苑 第4版、p.1447、1991年11月15日第4版第1刷発行、においては、「接頭辞」を主見出しにしている。
- ^ ただし、文脈上明らかな場合は、単に「接頭語」と記述している。
- ^ インターネット百科事典ウィキペディアでは、2005年7月から2022年6月までは「SI接頭辞」となっていた。
- ^ 計量法では「接頭語の記号」と規定している。
- ^ ただし計量法では、SI接頭語と組み合わせることができない。
- ^ 計量法上は、特殊の用途のみに用いることができる単位であり、規定の仕方から、SI接頭語と組み合わせることができない。またアールはSI併用単位ではない。
- ^ 国際単位系国際文書では、数字の 1 を「単位 1 の記号」とみなす場合がある。
- ^ この「文章の様式」とは、欧文における立体やイタリック体、斜体のことである。
- ^ SI接頭語の「k」は代数学の変数とは異なり、乗法の単独の要素とはなり得ないが、ここでは説明上、便宜的に記述している。
- ^ ヘクタール(ha)は歴史的にはh(接頭語のヘクト)とアール(a)の組み合わせであるが、現在ではSI単位ではなく、SI併用単位となっている非SI単位である。
- ^ デシベル(dB)は由来としては、d(接頭語のデシ)とベルとの組み合わせであるが、現在では独立したSI併用単位となっている。
- ^ 市民のオーギュスト・サヴィニアン・ルブロンが提案した。
- ^ SI国際文書第9版(2019) p.112
- ^ 計量単位令 別表第四 - e-Gov法令検索
- ^ 計量単位規則 別表第三 - e-Gov法令検索
- ^ SI国際文書第9版(2019) 2.3.4 組立単位、 p.106
- ^ 難かしい公式も樂に覺えられる算術うた繪本(わかもと物識繪本第2輯)、1937年4月
- ^ いいことする? メートル法單位のページの写真
- ^ SI接頭語、追加決定 SI接頭語の名称と記号の決まり方、産総研 計量標準総合センター、2022年11月
- ^ 計量法 第5条第1項
- ^ 計量単位令 第4条第1号 キログラム、分、時、度(角度の計量単位の度に限る。)、秒(角度の計量単位の秒に限る。)、平方メートル、立方メートル、毎秒、毎分、毎時、毎メートル、キログラム毎立方メートル、平方メートル毎秒、キログラム毎秒、キログラム毎分、キログラム毎時、立方メートル毎秒、立方メートル毎分、立方メートル毎時、デシベル、回毎分、回毎時、気圧、質量百分率、質量千分率、質量百万分率、質量十億分率、質量一兆分率、質量千兆分率、体積百分率、体積千分率、体積百万分率、体積十億分率、体積一兆分率、体積千兆分率及びピーエッチを除く。
- ^ 計量単位令別表第5、項番1~4
- ^ 計量単位令別表第5、項番5~10
- ^ http://www.bipm.org/utils/common/pdf/si_brochure_8.pdf (PDF) の94ページ以降、http://www.bipm.org/utils/common/pdf/si_brochure_8_en.pdf (PDF)
- ^ The International System of Units (SI) (PDF) , NIST Special Publication 330, 2008 Edition, p.iii, 第3段落
- ^ a b SI国際文書第9版(2019) p.112
- ^ SI国際文書第9版(2019) p.105、p.112、p.120
- ^ SI国際文書第9版(2019)、 p.112
- ^ SI国際文書第9版(2019) p.112右端注記
- ^ 英語による原文:The grouping formed by a prefix symbol attached to a unit symbol constitutes a new inseparable unit symbol (forming a multiple or sub-multiple of the unit concerned) that can be raised to a positive or negative power and that can be combined with other unit symbols to form compound unit symbols.
- ^ SI国際文書第9版(2019)、p.112、複数の接頭語記号を並置して作られる接頭語記号、すなわち合成接頭語記号を使用することはできない。同様に、合成接頭語名称を使用することも許されない。
- ^ a b c ケン・オールダー、万物の尺度を求めて、p.117、早川書房、2006-03-31初版発行、ISBN 4-15-208664-5
- ^ Culture: Weights and Measures Text 6. Finally, kilometer and myriameter shall be the lengths of 1,000 and 10,000 meters, and shall designate principally the distances of roads.
- ^ Consultative Committee for Units (CCU) Report of the 24th meeting 11. DISCUSSION ON THE POSSIBLE EXTENSION OF THE AVAILABLE RANGE OF SI PREFIXES, pp.23-25, Report of the 24th meeting(8-9 October 2019) to the International Committee for Weights and Measures
- ^ You know kilo, mega, and giga. Is the metric system ready for ronna and quecca? Science,By David Adam,2019-02-14
- ^ Extending the available range of SI prefixes Richard J. C. Brown, Head of Metrology, National Physical Laboratory, UK
- ^ Consultative Committee for Units (CCU) Report of the 25th meeting p.12,p.14, 21-23 September 2021
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- ^ International Committee for Weights and Measures Proceedings of Session II of the 110th meeting p.18, 18-20 October 2021
- ^ 臼田孝 (2022年3月16日). “ギガより大きい1クエタ、ナノより小さい1クエクトは何桁の数字? 今年、「新しい数え方」が登場します!”. ブルーバックス. 2022年8月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月8日閲覧。
- ^ a b 10の30乗、新呼称「クエタ」 単位飾る新語、データ増に対応(日本経済新聞 2022年8月14日、2022年9月23日閲覧)
- ^ “Draft Resolutions of the General Conference on Weights and Measures (27th meeting)”. BIPM. 2022年3月22日閲覧。
- ^ 臼田孝 (2022年4月18日). “今年登場する新しい数え方「クエタ」や「ロント」は誰がどう決めた? 候補が限定される厳しい命名条件とは?”. ブルーバックス. 2022年8月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月8日閲覧。
- ^ “地球の重さは「6ロナグラム」 計量単位に接頭語4種追加”. AFP. 2022年11月19日閲覧。
- 1 SI接頭語とは
- 2 SI接頭語の概要
- 3 名称
- 4 SI接頭語を付ける単位、付けない単位
- 5 使用法
- 6 利点
- 7 計量単位以外での使用
- 8 外部リンク
- SI接頭語のページへのリンク