高等女学校 教育方針

高等女学校

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/01 23:28 UTC 版)

教育方針

高等女学校における教育は、1879年明治12年)9月29日公布の「教育令」第42条に見られるように、「男女別学」としての女子教育の位置付けであった。その内容は、「賢母良妻タラシムルノ素養ヲ為スニ在リ、故二優美高尚ノ気風、温良貞淑ノ資性ヲ涵養スルト倶ニ中人以上ノ生活ニ必須ナル学術技芸ヲ知得セシメンコトヲ要ス」(明治32年、樺山資紀文相発言)とされるように、「家庭婦人」としての技芸教養の習得の場とされ、高等専門教育は必要ないとされていた向きがある。

進路

女性の「社会進出」という側面が現代に比べて制限されていた時代の教育であり、高等女学校からの進学先は、高等女学校の専攻科及び高等科・師範学校の女子部・女子高等師範学校女子専門学校・一部の私立大学などに限られ、実際にこれら高等教育機関に進学した者は第二次世界大戦期を通して1%に満たなかった[11]。高等専門教育機関である大学が女子に門戸を開放したのも、第二次世界大戦後まで先送りされていた[12]ことからも、高等女学校が中等教育機関として地域及び社会に与えた影響は大きい。

設置数

男子の旧制中学校に比べ高等女学校の設置数は多く、女子が普通中等教育を受けるだけの門戸は広かった。1910年(明治43年)には193校であった高等女学校数はわずか10年後(1920年(大正9年))で倍増し、在籍する生徒数も1925年(大正14年)には5倍近くまで膨れ、在籍生徒数も同時期の(男子の)中学校在籍者数を上回るほどだった[11]。男子の教育が“農業・工業等の産業従事や兵役への即戦力”の育成が求められた結果、中学校進学を制限する必要があったのに対し、社会進出が制限された女子への教育はそこまでの必要性がなかったからと思われる。実科高等女学校が設置されていったことも、都市部だけでなく農村部にも高等女学校が普及していくきっかけとなった[11]。旧制中学校は設置が事実上制限されていて、都道府県市町村が自由に設置できなかったが、高等女学校についてはそこまで制限が厳しくなかった。

1905年には5%にも満たなかった高等女学校進学率は、女子の尋常小学校就学率がほぼ100%になる1910年辺りから徐々に高まり、1920年には9%、1925年には15%近くにまで上昇し、ほぼマス段階に入った[11]

作品


  1. ^ a b c d 旧暦:明治5年12月2日(1872年12月31日)まで旧暦天保暦)が使われたが、その翌日12月3日をもって明治6年(1873年)1月1日に改められ、グレゴリオ暦太陽暦)に改暦された。
  2. ^ この時点では小学校は小学校は初等科3年・中等科3年・高等科2年に分けられており、尋常小学校と高等小学校に分かれるのは1886年(明治19年)の小学校令公布時。
  3. ^ それまで尋常小学校4年間が義務年限であったが、小学校令の改正に伴い、義務年限が2年延長され、6年となった。尋常小学校4年・高等小学校4年であった修業年限が、尋常小学校6年・高等小学校2年に改められた。
  4. ^ 当時、男子教育において「実科中学校」が存在し、「実科高等女学校」はこれに対応する女子教育機関とされるが、教育目的においては主に家政学(現在の家庭科の内容に近い)を中心とした「家庭婦人としての実務教育」を目指すとされ、男子の実科中学校との差異を明確にした。
  5. ^ 本来は中等教育令で、1943年(昭和18年)度入学生より修業年限4年とされたため、その入学生が卒業する1947年(昭和22年)3月に修業年限4年を施行予定であったが、戦況悪化に伴って1945年(昭和20年)に繰り上げられて実施された。
  6. ^ 国民学校初等科を除く学校の昭和20年度1年間の授業停止を決定した。
  7. ^ a b c 1946年(昭和21年)入学生。高等女学校へ最後に入学した生徒。
  8. ^ a b 1945年(昭和20年)入学生。
  9. ^ a b 1944年(昭和19年)入学生。
  10. ^ a b 1943年(昭和18年)入学生。
  11. ^ a b c d 稲垣恭子『女学校と女学生…教養・たしなみ・モダン文化』(初版)中央公論新社中公新書〉(原著2007年2月25日)、5-7頁。ISBN 9784121018847 
  12. ^ 東北帝国大学などは戦前に門戸を開放したが、男子の旧制高等学校と同等の試験を課しており、そこまでの教育レベルがない女子専門学校等卒業者にとってハードルは高かった。


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