階乗冪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/10 03:23 UTC 版)
階乗冪は冪あるいは冪函数の類似であり、特殊函数論あるいは組合せ論に広く応用を持つ。
定義
以下、x は必ずしも自然数でない実または複素数数値の変数(あるいはより一般の環の元でもよい)とし、n は自然数とする。
- 上昇階乗冪
- x を底とする上昇 n-乗とは
- なる n-項の積を言う。
- 下降階乗冪
- x を底とする下降 n-乗とは
- なる n-項の積を言う。
これらは何れも、底 x を変数と見れば x を不定元とする整数係数多項式となることに注意する。展開の係数はスターリング数で与えられる(後述)。またこれら底 x を変数とする階乗冪は様々な意味で冪函数に相当する。
記法について
- 特殊函数論でしばしば用いられるポッホハマー記号[* 3]は、下降階乗冪を (x)n で、上昇階乗冪を x(n) あるいは (x)(n) で表す[3]。また、(x)±
n と書くこともある[* 4]。 - Graham, Knuth & Patashnik (1988) による、組合せ論でしばしば用いられる記号法では xn が下降階乗冪、xn が上昇階乗冪を表す。
- 組合せ論における k-順列の総数 nPk = P(n, k) は下降階乗冪(n の下降 k-乗)である。
また、自然数 n, k に対して
と書くことができる。ここで感嘆符 "!" は階乗を表す。
実または複素「冪」
x および x + n が負の整数でないとき、階乗の代わりにその補間函数であるガンマ函数を用いれば階乗冪の指数 n は任意の実数(あるいは複素数)とすることができる。具体的には次のようになる[* 5][* 6]。
特に上記二式の右辺の式は x が負の整数の場合に特に有効[* 7]である。
ふたつの実数 a および x について、a と a + x が負の整数でないとき、定数 a を底とし、指数 x を変数とする階乗冪 (a)±
x は(階乗冪を冪の類似と見做すならば)指数函数の類似である[* 8]。
組合せ論的解釈
n, k は自然数とする。n-元の集合から k-部分集合を選び出す k-順列の総数は下降階乗冪 xk である。同じく k-組合せの総数は二項係数であったから
なる関係式を得る。これは
とも書ける。
注釈
- ^ 降冪、下方階乗冪とも。
- ^ 昇冪、上方階乗冪とも。
- ^ 特に (x)n のことを言い、上昇階乗冪を表す記号とする文献もあるので注意(この場合、下降階乗冪は (x − n + 1)n と書ける)。また、ポッホハマー自身はこれを二項係数を表すため用いた。詳細はポッホハマー記号の項目を参照。
- ^ このような記法では
- ^ 右辺は反射公式による。
- ^ x = 0 の場合、階乗冪は当然 0 であるがガンマ関数による表記は x = 0 の場合もカバーしている。また、x < n のときの自然数 x に対する下降階乗冪、および −x < n のときの負の整数 x に対する上昇階乗冪も 0 になるが、それもカバーしている。
- ^ ガンマ関数は 0 および負の整数で極を持つため、中辺の式では定義できない。
- ^ が、和分差分学における指数函数に相当する概念とは異なる。(結城浩『離散系バージョンの関数探し』)
- ^ ただし、非整数 α に対して
- ^ 羅: umbra は「日影」の意
出典
- ^ Knuth, The Art of Computer Programming, Vol. 1, 3rd ed., p. 50.
- ^ Weisstein, Eric W. "Central Factorial". mathworld.wolfram.com (英語).
- ^ Weisstein, Eric W. "Pochhammer Symbol". mathworld.wolfram.com (英語).
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