複層貨物鉄道輸送 複層貨物鉄道輸送の概要

複層貨物鉄道輸送

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 16:18 UTC 版)

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BNSF線のカルフォルニア州カホン峠を越える複層貨物列車
複層貨物列車の一部。中央の車両はen:TTX Companyが所有するが、コンテナはen:Pacer Stacktrainが所有する
ポーツマスのAPMターミナルで積載中の複層貨物列車

複層貨物鉄道輸送は1984年北アメリカで初めて導入された輸送方式で、2010年代アメリカ合衆国では鉄道によるコンテナ輸送の7割を占めている。コンテナを2段重ねにすることで貨物列車の単位長さあたりで約二倍の貨物を輸送できるため、輸送力の増強とコンテナ1つあたりのコスト低減を両立できる。

2段に重ねたコンテナを車両限界に収め、また積載時の重心高を可能な限り下げるため、トレーのような形をした専用の低床貨車(ダブルスタックカー)を用いる。このような形状によって、下段コンテナのドアが開かないようにする効果も得られている。また、更なる輸送効率の向上のために、40ftを超えるサイズのコンテナについても二段重ねとすることが可能となっている。

歴史

1970年代アメリカ合衆国物流では、ベトナム戦争への装備調達やアジアから北米への輸出増大のために、西海岸で海陸間輸送の重要性が高まっていた。コンテナ船は輸送コスト低減のために年々大型化しており、やがてパナマ運河を通れないオーバーパナマックス船が一般化してアジアからの定期航路は東海岸に向かわないようになると予想されたため、貨物を西海岸から内陸部や東海岸に運ぶ手段が必要になった。

サザン・パシフィック鉄道(SP)は、大手コンテナ船会社シーランドの創設者マルコム・マクリーンと共同で、1977年に初めて二段重ね貨物列車のアイデアを発表した[1][2]。 SP社はその年、ACF Industryと台車を設計した[3][4]。複合貨物鉄道輸送が業界標準となるまでには時間がかかったが、その後1984年アメリカンプレジデントラインズはSP社と共同で作業し始め、同年内に最初の総二段重ね貨物列車がロサンゼルスからサウスカーニーに"Stacktrain" rail serviceの名前で走った。列車は途中SP社からコンレールを走った。

重量

コンテナ車1両に積載するコンテナ数が2倍となるため、車両側では車体や輪軸強度連結器や緩衝器の性能が、線路側では軸重制限と路盤の強度が適正であることが求められる。

コンテナ積載に関する問題

貨物を二段重ねにする場合、重心を低く保つことが車両の安定のために必要である。異種のコンテナを積み重ねる場合には、貨物の容積重さを考慮して積載する必要がある。コンテナ船と同様、ヒューリスティックな手法やタブーサーチによって積載順序を決定するアルゴリズムが研究されている [5]

サイズと車両限界

運ぶコンテナの大きさには決まった種類があることから、複層貨物輸送にはいくつかサイズがある。ダブルスタックカーのくぼみの長さの規格は40 ft (12.19 m), 48 ft (14.63 m), 53 ft (16.15 m) が普通である[6]。コンテナ高さは8 ft (2.44 m)から9 ft 6 in (2.9 m)("high cube"または背高コンテナ)まである。

複層貨物輸送を行う場合、走行区間全てにおいて十分に大きな車両限界が確保されている必要がある。そのため、大陸の東西を結ぶインターモーダル貨物輸送(ランドブリッジ(鉄道))が多く、他の先進国と比較して鉄道の電化区間の割合が少ない北アメリカで最も普及している。それでも、跨線橋のかさ上げやトンネルを拡張するために多額の投資がなされている。

CSX社はレール上の車両限界の高さのリストを公開している[7]

  • Doublestack 1 — 18 ft 2 in (5.54 m)
  • Doublestack 2 — 19 ft 2 in (5.84 m)
  • Doublestack 3 — 20 ft 2 in (6.15 m)

このリストによれば、Doublestack 3ではISO High Cube コンテナ(背高コンテナ)を二段積みして輸送できる。


  1. ^ Cudahy, Brian J., - "The Containership Revolution: Malcom McLean’s 1956 Innovation Goes Global". - TR News. - (c/o National Academy of Sciences). - Number 246. - September-October 2006. - (Adobe Acrobat *.PDF document)
  2. ^ Chronological History - Union Pacific Railroad Company
  3. ^ Kaminski, Edward S. (1999). - American Car & Foundry Company: A Centennial History, 1899–1999. - Wilton, California: Signature Press. - ISBN 0963379100
  4. ^ "A new fleet shapes up. (High-Tech Railroading)". - en:Railway Age. - (c/o HighBeam Research). - September 1, 1990
  5. ^ Maoxiang Lang, Jay Przybyla, Xuesong Zhou (2011). Loading containers on double-stack cars: Multi-objective optimization models and solution algorithms for improved safety and reduced maintenance cost. http://www.civil.utah.edu/~zhou/container_scheduling.pdf. 
  6. ^ Guide to Railcars
  7. ^ CSX System Clearance Map— Doublestack Routes
  8. ^ “Norfolk Southern opens Heartland Corridor”. Railway Gazette International. (2010年9月9日). http://www.railwaygazette.com/nc/news/single-view/view/norfolk-southern-opens-heartland-corridor.html 
  9. ^ CSX Announces National Gateway to Improve Flow of Freight”. CSX (2008年5月1日). 2012年3月5日閲覧。
  10. ^ http://trn.trains.com/en/Railroad%20News/News%20Wire/2010/12/New%20Commonwealth%20Railway%20line%20set%20to%20open.aspx
  11. ^ “Double stacked to Perth”. Parkes Champion Post. (2008年7月28日). http://parkes.yourguide.com.au/news/local/news/general/double-stacked-to-perth/1228119.aspx 
  12. ^ http://www.artc.com.au/library/RIS_2.2.pdf
  13. ^ Low center of gravety(2012年10月5日時点のアーカイブ
  14. ^ Indian Express
  15. ^ a b c Das, Mamuni (2007年10月15日). “Spotlight on double-stack container movement”. The Hindu Business Line. 2009年2月25日閲覧。
  16. ^ Das, Mamuni (2007年10月29日). “Green signal for triple-stacks on diesel routes”. The Hindu Business Line. 2009年3月15日閲覧。
  17. ^ “Double-decker container train arrives at Mundra”. (2009年4月18日). http://www.dnaindia.com/report.asp?newsid=1248734 
  18. ^ Reaching up”. Railway Gazette International. p. 17 (2009年8月). 2012年3月5日閲覧。
  19. ^ インド/世界初、海上コンテナ2段積み対応の貨物鉄道が開通”. LNews (2021年1月27日). 2021年12月19日閲覧。
  20. ^ 宁海统计信息网 分析信息 双层集装箱运输方式 中国铁路试验成功”. 2012年3月4日閲覧。
  21. ^ 钟喜云 (2008). “铁路促进国际集装箱多式联运发展的途径”. 科技创新导报. http://61.152.167.17/course/baogao/%E9%93%81%E8%B7%AF%E4%BF%83%E8%BF%9B%E5%9B%BD%E9%99%85%E9%9B%86%E8%A3%85%E7%AE%B1%E5%A4%9A%E5%BC%8F%E8%81%94%E8%BF%90%E5%8F%91%E5%B1%95%E7%9A%84%E9%80%94%E5%BE%84.pdf. 
  22. ^ The Betuweroute solution” (2004年4月1日). 2011年7月22日閲覧。


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