脱植民地化 方法と段階

脱植民地化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/19 15:30 UTC 版)

方法と段階

脱植民地化は政治的な過程であるが、しばしば暴力的闘争を伴う。状況が極度に緊迫すれば、革命に続いて独立戦争が生じる場合もあるが、より一般的には大きな流れとして、交渉が決裂し、小規模な騒乱が起こり、これが警察によって鎮圧され、更に過激な反乱へと拡大し、交渉に次ぐ交渉が重ねられ最終的に独立が保証されるという展開をとる。例えばフランス領インドシナでは独立戦争が発生したが、フランス領西アフリカの(マグリブ諸国を除く)一部の国では暴動と交渉の繰り返しによって脱植民地化が図られた。また稀な場合ではあるが、インドの例などでは、現地民側は非暴力の立場をとり、暴力は占領者側からの抑圧や、独立によって不利益を被ると感じる少数派現地民の政治的反抗の手段として用いられている。脱植民地化の過程は、新たに独立する国の「事実上」の政権が、国際社会より「法的」な主権国家として認められてはじめて完遂される。

独立は外部勢力からの刺激や実際的援助なしに達成することは困難ではあるが、このような援助を行う動機はさまざまである。民族宗教を一にする国家からの被抑圧民への同情に起因する場合もあれば、強力な国家が、覇権を争ったり敵対したりしている国家の勢力を弱めたり、自身の勢力範囲を拡大するための戦略的行為として植民地の解体を試みる場合もある(アメリカによる西半球全体への戦略であるモンロー主義など)。

第一次世界大戦以後、国際世論は植民地解放賛成に傾き、国際連盟による植民地解放への制度的な集団的取り組みが行われ、国際連盟規約第22条に基づき、多くの委任統治領がおかれた。これは名目上はこれらの地域における自治政府設立の準備を目的としていたが、実際はドイツオスマン帝国を主とする敗戦国の旧植民地支配権の再配分に過ぎなかった。この再配分制度は国際連合にも引き継がれており、日本を含む第二次世界大戦敗戦国の旧植民地や委任統治領の支配の調整を行うために信託統治制度がおかれた。

ジブラルタルフォークランド諸島など一部の植民地では、植民地状態を継続することを住民投票により選択している。また、一部では、旧宗主国が、自身の支配体制が弱体化した後に、植民地における経済軍事などの負担を削減するために積極的に脱植民地化を進めた事例もある。

帝国の拡大と縮小は歴史の常であるが、近現代の脱植民地化という現象はいくつかの点から史上まれにみる結果を生み出したといえる。すなわち現代においては、ある国家が植民地の事実上の支配も法的な支配権も放棄した場合には、通常はその旧植民地が別の覇権国家に吸収されるということはない。更に、旧宗主国は、多くの場合単に国家として存続し続けているだけではなく、旧植民地との間に強い政治的、文化的連係を保ち、大国としての地位を維持し続けているのである。このような連係を通して、皮肉なことに、旧宗主国は帝国のかつての権益の主要部分を保持し続け、しかもそのためのコストを削減することに成功している。脱植民地化の要求に対しては往々にして宗主国側の抵抗があるものの、結局のところ脱植民地化の結果は旧宗主国の権益を守るものとなっているのである。

脱植民地化が一回の歴史的事件によって達成されることは稀であり、通常は宗主国から与えられたり、闘争によって獲得される段階的な解放の積み重ねによって進行していく。その段階には例えば、諮問や投票による代表選出制や、ある程度の自治制度の導入がある。脱植民地化の最終段階は、形式上は外交及び安全保障責任の移譲と、新独立国の法的承認の要請といえるであろう。しかしながら、独立承認以後でも、旧宗主国、旧植民地の二国間条約により一定の植民地関係が継続することがあり、そのことは特に軍事訓練、相互保障条約、駐屯部隊や軍事基地設置などの面で継続することが多い。







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