硝酸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/15 13:11 UTC 版)
化学的性質
強酸化剤で、木炭の粉末とともに熱すれば木炭は酸化されて二酸化炭素となる。
芳香族ニトロ化反応 純硝酸の性質
純粋な遊離酸も 0 ℃で硝酸カリウムと純硫酸を反応させ、真空蒸留により単離することが可能である。
しかし不安定であり光反応などにより分解し、二酸化窒素などを発生させる[2]。
純硝酸は遊離酸として知られているものの中ではもっとも強く自己解離し、さらに生成するリオニウムイオンは脱水されニトロイルイオンとなり、その平衡定数は 25 ℃ で以下のようである
高い電気伝導度を示し、25 ℃ における比電気伝導度は 3.72 × 10−2 Ω−1 cm−1 であり、純硫酸よりさらに高い[2]。
また、純硝酸のハメットの酸度関数は H 0 = − 6.3 であり純硫酸などに比べるとかなり酸性度は低い[4]。
硝酸の水和
硝酸の第一水和エンタルピー変化および溶解エンタルピー変化は以下の通りであり、過塩素酸および硫酸などより発熱量は少ない[5]。
水溶液中の電離平衡
硝酸は水溶液中では強酸として挙動し、0.1 mol/dm3 程度の水溶液ではほぼ完全に解離し塩酸および過塩素酸などと電離度に大きな差は認められないが、濃厚溶液ではこれらの酸との電離度に差が認められ、2 - 4 mol/dm3 溶液については糖転化の触媒作用についてこれらより弱いことが示され、非解離の硝酸分子が存在することが示されている[6][7]。
濃厚溶液中における非解離の硝酸分子の濃度とデバイ-ヒュッケルの拡張理論などから硝酸の酸解離定数は K = 21 (pKa = −1.32) と求められ、またメタノール中 (pKa = 3.2) の値より水中では pKa = −1.8 とする推定値もある[8]。
また、水溶液中の解離に関する熱力学的な数値も報告されており、そのギブスの自由エネルギー変化によればpKa = −1.44である[9]。
−13.81 kJ mol−1 −8.24 kJ mol−1 −18.4 J mol−1 K−1
注釈
- ^ 濃度は特に定義されているわけではないが、実験室で用いる希硝酸は通常 6 mol/dm3 (32 %, d = 1.19 g · cm-3)、あるいはそれ以下のものであることが多い。
出典
- ^ a b c 厚生労働省モデルSDS
- ^ a b c FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年,原書:F. ALBERT COTTON and GEOFFREY WILKINSON, Cotton and Wilkinson ADVANCED INORGANIC CHEMISTRY A COMPREHENSIVE TEXT Fourth Edition, INTERSCIENCE, 1980.
- ^ D.F.SHRIVER, P.W.ATKINS, INORGANIC CHEMISTRY Third Edition, 1999.
- ^ シャロー 『溶液内の化学反応と平衡』 藤永太一郎、佐藤昌憲訳、丸善、1975年
- ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
- ^ 山崎一雄他 『無機溶液化学』 南江堂、1968年
- ^ 化学大辞典編集委員会 『化学大辞典』 共立出版、1993年
- ^ a b 『改訂4版化学便覧基礎編Ⅱ』 日本化学会編、丸善、1993年
- ^ 田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年
- ^ 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編
- ^ a b c d e 米田幸夫 著、化学大辞典編集委員会(編) 編『化学大辞典』 1巻(縮刷版第26版)、共立、1981年10月、531-532頁頁。
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