光過敏性発作 報告

光過敏性発作

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/25 03:48 UTC 版)

報告

古くは、光刺激性てんかんを採り上げた1946年 W.Grey Walterらの報告[7]や1954年 Penfieldらの報告[8]などがあり、日本人研究者による研究は1970年代から行われていた[9]

その後も、ストロボ光や視界の大部分を画面が覆ってしまう映画館での視聴、刺激的な映像が流れやすいテレビCFの視聴、などでのケースが指摘されている。テレビにおける症例は1952年のアメリカでの事例以降、日本を含め多く報告されている[10]。また、テレビゲームによる症例も多数報告されている。

日本国外での例としては1993年イギリスにおいて、ポットヌードルカップラーメン)のテレビコマーシャルを見た3名が、この種の痙攣発作を起こして病院へ運ばれている[11][2]。これを受けて、イギリスでは独立テレビジョン委員会およびBBCで防止のためのガイドラインを策定している。

1997年12月16日テレビ東京各系列局で放送されたアニメ『ポケットモンスター』の「でんのうせんしポリゴン」を見た視聴者が体調を崩す事態が発生し、700人以上が救急車で搬送される事態となり、この事件はのちにポリゴンショック(ポケモンショック)して知られるようになった[2]。また、この9か月前にNHKで放送された『YAT安心!宇宙旅行』を視聴した児童数名が病院に運ばれた例があり、「この時点で原因が判明しきちんと報道されていればこのような大規模な事態(ポケモンショック)は防げたかもしれない」と陳謝している。

その後、イギリスにおけるハーディング・テスト英語版といったガイドラインを参考に、テレビ東京は点滅の周期や色を制限したり、点滅でなくても輝度差のある縞模様などは避けるべきといったガイドラインを制定した[2]。また、それらのアニメやゲームでは、特に幼年層を中心として映像への意識や注意の没入度が高く、画面からほとんど目をそらさず視聴するため、発作を起こす可能性のある視聴者が光刺激の発生に対し、光過敏性発作を回避することが難しいと見られている。そのため「テレビから十分に離れ、明るい場所で視聴する」よう視聴者への注意を促すことが、各国の業界におけるガイドラインで義務付けられている。日本国内ではアニメの放送時にテロップなどを表示しているが、NHKと、日テレ系の深夜アニメ、CBCなど一部を除くTBS系列[注 1]では行われていない。

日本でも、ゲームメーカー各社では日本国外での光過敏性発作症例を元に1990年代前半より注意が払われていた。テレビ業界の中では、ポケモンショック以降、NHKなどの主導によって放送各局間で前記のようなガイドラインが持たれたが、その対応度合いについては局ごとに若干異なるようではある。特に、テレビ東京では、アニメの製作基準がかなり厳しくなった(参考リンク)。一方、UHFアニメ(後述)やアニメ映画OVAビデオアニメでは規制が緩い傾向にある。

現在ではほとんど見られなくなったが、アーケードゲーム機で映像を表示する方式に「ベクタースキャン」というタイプがあり、眼への負担が大きく、ゲームをプレイして気分を悪くする子供がいた。当時は光過敏性発作などは知られておらず、現在ではほぼ廃れた映像表示方式のためにデータは存在しないが、テレビの記者会見中継(特に生中継)で過剰なフラッシュによる点滅が起こりうる場合もある。

2007年では、映画『バベル』で菊地凛子がクラブで踊る場面で、クラブの照明が1分程度早い点滅を繰り返すシーンがあり、愛知県三重県などの映画館で同映画を見た観客計15人が吐き気などの体調不良を訴えていたことが明らかとなった。このため、同映画を上映している映画館や配給会社では注意を促す文書を配布することとなった。近年でも、ウォルト・ディズニー・スタジオ配給映画の一部[注 2]において、このリスクに関した注意喚起文が掲示される場合がある[12]

2015年10月にもアニメ『終物語』を見た視聴者がこの症状を発症したという意見がBPOに寄せられている[13]


注釈

  1. ^ まれに深夜帯でテロップが流れることもあるが、光刺激に対する注意の代わりに、ほとんどのアニメ番組の冒頭で「この作品はフィクションです」「インターネットへのアップロードは違法である」との警告を促すテロップが表示される。
  2. ^ 例:『インクレディブル・ファミリー』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』など

出典

  1. ^ 麻生幸三郎, 渡辺一功, 根来民子, 古根淳, 高橋泉, 山本直樹, 野村一史「光過敏性部分発作」『てんかん研究』第6巻第2号、日本てんかん学会、1988年、188-195頁、doi:10.3805/jjes.6.188ISSN 0912-0890CRID 1390001204517639680 
  2. ^ a b c d 開局35周年記念事業 特別講座 「テレビが視聴者に与える身体的、社会的影響について」”. テレビ東京. 2020年3月29日閲覧。
  3. ^ 八木信一, 小西徹, 松沢純子, 本郷和久, 山谷美和, 宮脇利男「A-28 小児てんかんにおける光過敏性の検討 : 光過敏性発作を示した症例について」『日本てんかん学会プログラム・予稿集』、日本てんかん学会、1998年10月、110頁、NAID 110002671200NDLJP:10820371 
  4. ^ 光感受性発作に関する臨床研究(速報版)について 平成10年4月 厚生科学特別研究
  5. ^ ポケモン事件と光過敏性てんかん 岐阜市医師会
  6. ^ 玉井和人「光過敏性てんかんにおける図形 赤色フィルターによる光刺激の有用性とその意義」『日児誌』第93巻、1989年、2003-2010頁、CRID 1571698600097127168  (要購読契約)
  7. ^ Walter, W Grey; Dovey, VJ; Shipton, H (1946-10-19). “Analysis of the electrical response of the human cortex to photic stimulation”. Nature (Nature Publishing Group UK London) 158 (4016): 540-541. doi:10.1038/158540a0. https://doi.org/10.1038/158540a0. 
  8. ^ Penfield, Wilder; Jasper, Herbert (1954). Epilepsy and the functional anatomy of the human brain.. Little, Brown & Co.. https://psycnet.apa.org/record/1955-01377-000?utm=. 
  9. ^ 寺尾章「光過敏性てんかん」(PDF)『川崎医会誌』第25巻、1999年、133-142頁。 
  10. ^ 「テレビてんかん」の項『現代用語の基礎知識』1966年版
  11. ^ “How is TV made safe for people with epilepsy?”. (2007年6月7日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/magazine/6728071.stm 2020年3月29日閲覧。 
  12. ^ 中林曉 (2019年12月13日). “「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」、“光の点滅が続くシーン”に映画館らが注意喚起”. AV Watch. インプレス. 2023年6月8日閲覧。
  13. ^ 2015年10月に視聴者から寄せられた意見 BPO


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