ポリプロピレン 電気的・光学的性質

ポリプロピレン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/15 09:23 UTC 版)

電気的・光学的性質

ポリプロピレンは、基本的に絶縁性のポリマーである。誘電率は、2.2-2.6である。誘電正接が小さく、かつ高い周波数でも誘電正接の上昇が小さいので、高周波特性に優れた誘電体である。

結晶部と非晶部の屈折率の違いによりポリプロピレンは、半透明になる。ソルビトール系の透明化造核剤の添加により球晶サイズを小さくし、透明度を上げることが可能である。また、二軸延伸により透明化することができる。

歴史

1950年代の初期にカール・チーグラーは、TiCl4(四塩化チタン)とAlR3(トリアルキルアルミニウム)の混合物(反応してTiCl3(三塩化チタン)を形成する)が、エチレンの重合反応の際に、最適な触媒となることを発見した[注釈 3]。しかし、このような触媒はアタクチック生成物が多かったため、プロピレンの重合反応の触媒としては、使用できなかった。

1954年ジュリオ・ナッタとカール・レーン[3]は、TiCl3(三塩化チタン)とAlR2Cl(ジアルキル塩化アルミニウム)の混合物が、高活性なアイソタクチックポリプロピレンを与えることを発見した。そして1957年に、イタリアのモンテカチーニ英語版社(後のモンテジソン英語版社)がポリプロピレンの商業生産を開始した。

ジュリオ・ナッタの触媒の活性は、触媒(Ti)1グラムあたりポリプロピレン4キログラムであった(4 kg/g)。しかし、この触媒を用いた場合、製品に含まれている触媒の残渣が腐食性を持っているという問題があるため、触媒の残渣を除去するために、洗浄処理(脱灰処理)が必要であった。また、アイソタクチックインデックス(立体規則性指標)は、92%であり、アタクチックポリプロピレンの除去が必要であった。

1971年ソルベー社は、高沸点エーテル(ジブチルエーテル)の存在下で粉砕したTiCl3の混合物からなる新触媒を開発した。エーテルは、ルイス塩基として作用し、TiCl3の好ましくない活性点を不活性化した。助触媒としてDEAC(ジエチル塩化アルミニウム)を用いると、触媒の活性は、16 kg/gとなり、アイソタクチックインデックスは約96%となった。アタクチック成分の除去の問題を解決した。

1975年には、TiCl3とほぼと同等の結晶構造を持つ担体である、MgCl2(塩化マグネシウム)担持TiCl4を基礎とする新触媒が開発された。この触媒は、ルイス塩基として2−エチルヘキシル安息香酸を添加して活性化された。325 kg/gの高活性であり、残触媒の除去を不要にした。しかし一方で、アイソタクチックインデックス約92%だったために、アタクチック成分の除去が再び必要となった。

1981年になって、安息香酸エステルにかわりフタル酸エステルを添加した触媒が開発された。この触媒を用いると、アイソタクチックインデックスが97パーセントに上がり、触媒の活性も600 kg/gから1300 kg/gに達するほど高活性であった。

合成

ポリプロピレンは、プロピレンのアリル位に結合している水素が高い反応性を示すため、ラジカル重合によって高重合度の重合体を合成することはできない。ラジカル重合によって得られるポリプロピレンは、重合度が低いアタクチックなポリプロピレンになってしまう。

チーグラー・ナッタ触媒は、固体触媒表面でプロピレンモノマーの挿入を規制するアイソタクチックな活性点を有する。現在、最も広く用いられているチーグラー・ナッタ触媒は、ルイス塩基(内部ドナー)としてフタル酸エステルを用いたMgCl2担持TiCl4を基礎とする物である。第2のルイス塩基(外部ドナー)として、アルコキシシラン化合物を添加し、アルキルアルミニウム化合物(一般的には、トリエチルアルミニウム)の存在下でプロピレンを重合する。なお、チーグラー・ナッタ触媒は、複数種の活性点を有するためマルチサイト触媒と呼ばれる。

メタロセン触媒は、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などの遷移金属に配位したメタロセンと、MAO(メチルアルミノキサン)から構成される。配位子の分子構造によりアイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックにポリプロピレンを与える。MAOに代わり、ボレート化合物やモンモリロナイトなどの鉱物も使用される。メタロセン触媒は、単一種の活性点を有するためシングルサイト触媒と呼ばれる。


注釈

  1. ^ 耐薬品性に優れている点を活かしている。特に実験器具では、この性質が遺憾なく発揮される。
  2. ^ 強度がある上に、比重が軽いことを活かしている。スピーカーのコーン(振動板)は、なるべく軽い方が音の放射に有利である。しかし、強度が低いと壊れてしまう。
  3. ^ エチレンを重合させることで、ポリエチレンが合成される。

出典

  1. ^ 世界の石油化学製品の今後の需給動向(2013年4月30日)
  2. ^ 石油化学工業会, 統計資料
  3. ^ Polymer Pioneers p. 76
  4. ^ Innovene PP
  5. ^ エクソン・モービルのプロセス
  6. ^ 住友化学の気相プロセス
  7. ^ UNIPOL PP
  8. ^ Horizone PP
  9. ^ Borstar PP
  10. ^ Hypol
  11. ^ Spheripol
  12. ^ Spherizone
  13. ^ Novolene
  14. ^ 厚生省告示370号(昭和34年厚生省告示370号)
  15. ^ Code of Federal Regulations Title 21 Sec. 177.1520 Olefin polymers
  16. ^ 危険物の規制に関する政令 - e-Gov法令検索
  17. ^ 関税定率法 - e-Gov法令検索別表(関税率表)第39類注4
  18. ^ 輸入統計品目表(実行関税率表”. 税関. 2020年1月15日閲覧。
  19. ^ 日本プラスチック工業連盟『樹脂ペレット流出防止マニュアル』1993年2月
  20. ^ 一般社団法人プラスチック循環利用協会『2018年 プラスチック製品の 生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況』2019年12月
  21. ^ コークス炉化学原料化
  22. ^ ポリオレフィンフィルムのリサイクル事例
  23. ^ 一般社団法人プラスチック循環利用協会 『プラスチック製容器包装の処理に関するエコ効率分析』 2006年9月
  24. ^ CO2換算量共通原単位データベース
  25. ^ Waste Online Archived 2010年7月22日, at the Wayback Machine.
  26. ^ 経済産業省,3R政策
  27. ^ COMMON CHEMISTRY®
  28. ^ 化学物質総合情報提供システム(CHRIP)






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