ペイストリー ペイストリーの物理と化学

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ペイストリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/25 13:48 UTC 版)

ペイストリーの物理と化学

小麦粉の性質および特定の油脂により、様々なペイストリーが作られる。小麦粉を生地に練り上げ、水を加えると、グルテンの繊維が生成され、生地は堅くなり弾力がつく。しかしながら、典型的なペイストリーでは、この堅さが望まれないため、脂肪または油を加えてグルテンの生成を抑制する。これにはラードまたは牛脂(スエット)が使われることが多く、荒い結晶構造が効果的である。澄ましバターを使用しない場合、水分により失敗することがある(澄ましバターは殆ど水分を含まない)。バターのみを使用するショートクラスト・ペイストリーは質感が劣ることもある。湯で溶かした脂肪、または油を使用すると、粒子間の薄い油膜によるグルテンの形成阻害が少なく、ペイストリーは堅くなる。ホットウォーター・クラスト(湯練り)ペイストリーでは、油または溶かした脂肪が使用され、粒子間の層または油によるグルテンの生成が容易であり、ペイストリーはより堅くなる[5]

歴史

フィロ生地にシロップをかけた、典型的な地中海のバクラバ
シリアでペイストリーを販売する店

ヨーロッパにおけるペイストリーの伝統は、薄片状生地のショートクラストが使われた古代地中海の時代にさかのぼる。これらのレシピは十字軍により、西ヨーロッパに普及した。

地中海ローマギリシャ、およびフェニキアでは、伝統的にフィロに類するペイストリーを調理に使用した。また、古代エジプトでペイストリーに似た菓子を作ったという有力な証拠がある。エジプト人がペイストリーを作って食べていた可能性は非常に高い。技能を持った専門のパン焼き職人がいて、穀粉、ハチミツなどの材料を必要としていた。紀元前5年には、アリストパネスの劇中で果物のフィリングの小さなペイストリーズを含む菓子に言及している。ローマでは穀粉、および水を使って、肉や家禽を包むペイストリーが作られた。これは焼き工程で肉汁を保つために使われ、食べるためではなかった。食べるためのペイストリーは小さく作られ、卵または小鳥の肉を具とした、より栄養に富むペイストリーであり、しばしば響宴に供された。ギリシャおよびローマでは、調理に用いる油でペイストリーの堅さが失われることにより、良いペイストリー作りに苦心していた[6]

中世の北欧ではラードとバターで調理したため、良く堅いペイストリーを作ることができた。北欧の中世の料理本では、不完全な材料一覧がいくつかあるが、完全で詳細なものは発見されていない。棺、または「ハフ・ペースト」と呼ばれる空のペイストリーは、召使いのみが食べ、よりおいしく食べるため卵黄が表面に塗られていた。中世のペイストリーには小さなタルトもあり、軽食に豊かさを加えていた。16世紀半ば頃に、実際のペイストリーのレシピが現れた[5] [7]。これらのレシピは時を経てヨーロッパの様々な国に伝わり、西はポルトガルのパステル・デ・ナタから東はロシアのピロシキまで、様々な類型をもたらした。経済一般的な、ペイストリー料理でのチョコレートの使用は、1500年代に始まるスペインとポルトガルによる新世界からヨーロッパへのチョコレート貿易の後に始まった。多くの料理歴史研究家は、フランスの料理人アントナン・カレーム(1748-1833)を現代のペイストリー料理法の最初の巨匠としている。

ペイストリー作りは、アジアの多くの地域にも伝統がある。中国のペイストリーはコメ、または他の種類の穀粉で作られ、フィリングは果物、、またはゴマである。19世紀以降、イギリスが西洋式のペイストリーを極東に伝えた。しかしながら、1950年代に、香港に始まる中国語圏への西洋ペイストリーを普及させたのはフランスである。中国のペイストリーと区別するために「西餅」という言葉が未だに使われる。他のアジアの国には、韓国のトック、ハングァ、ヤクシのように、穀粉、コメ、果物、地域特有の食材で作る独特な種類のデザートを作る伝統的なペイストリー菓子がある。日本には、餅および饅頭と呼ばれる特殊なペイストリー菓子がある。アジア起源のペイストリー菓子は一般に、西洋のペイストリー菓子と明らかに異なり、より甘い味である。

パティシエ(ペイストリー・シェフ)

プロフィトロール(クロカンブッシュ)を持つパティシエ

ペイストリーの専門職人は、ペイストリーを焼く職場がパン屋またはレストランかにより、それぞれパン焼き職人またはパティシエ(ペイストリー・シェフ)と呼ばれる。パティシエは料理技能と創造性を駆使して、材料を焼き、装飾、風味付けをする。ペイストリー作りには、多くの時間と集中力を要する。ペイストリーとデザート作りでは、飾り付けが重要である。この職業は、多くの手作業と長時間の立ち仕事をするための体力を要し、早朝からの長時間労働はストレスが多いことがある[8]。パティシエはまた、メニューに新しいレシピを加える責任を持つ。パティシエはレストラン、ビストロ、大きなホテル、カジノ、およびパン屋で働く。通常、焼き釜やオーブンは厨房からやや分かれた場所にある。厨房のこの部門は、ペイストリー、デザート、および他の焼き料理を担当する[9]


  1. ^ Bo Friberg. Professional Pastry Chef. John Wiley and Sons. ISBN 0471218251 
  2. ^ L. Patrick Coyle (1982). The World Encyclopedia of Food. Facts on File Inc. ISBN 0871964171 
  3. ^ http://www.kswheat.com/upload/got-pastry.pdf
  4. ^ Sinclair, Charles. International Dictionary of Culinary Terms. Grand Rapids: Bloomsbury Plc, 1998
  5. ^ a b Jaine, Tom, and Soun Vannithone. The Oxford Companion to Food. New York: Oxford UP, 1999
  6. ^ アーカイブされたコピー”. 2013年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年1月1日閲覧。
  7. ^ http://www.bakeinfo.co.nz/school/school_info/pastry.php
  8. ^ http://www.allculinaryschools.com/faqs/baking
  9. ^ アーカイブされたコピー”. 2008年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年12月8日閲覧。


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