カモッラ カモッラの概要

カモッラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/27 10:24 UTC 版)

1906年のカモリスタ
カモリスタのタトゥー

用語

カモッラという言葉については、様々な説があるが、これと決まった定説はないとされる。ガムッラというチョッキに似た上着をさす言葉が変化したという説、喧嘩・口論を意味するスペイン語のカモッラからきたと言う説、コーランで禁じられている賭博の一種クマールが変化したという説もある。

カモッラの組員のことをカモリスタという。下級と高級があり、下級は泥棒乞食からなり、高級は主に恐喝・強請りが仕事だった[1]。跡目争いは熾烈を極めたという[2]

誕生から大戦前

はっきりとした起源は分かっていないが、一般的に19世紀初頭前後の両シチリア王国スペイン・ブルボン朝から分かれたシチリア・ブルボン朝が統治していた)支配の時代にナポリの監獄の中で発生した組織とされ、19世紀の初め頃には明確にその存在を示すようになった。1800年代のナポリの獄中は無法地帯でカモリスタは他の受刑者に物を売りつけ、金を取り上げたりし、監獄の所長には金を渡していた。この頃の看守たちは秩序の維持より私腹を肥やすことの方が熱心だった。(獄中には16世紀にはいたとする説もある。その理由として16世紀末に獄中でゆすりをしている組織について言及している文章がある。)

その後、1830年頃(それ以前の可能性もある)には刑務所の塀を飛び越えて、地元政府の木っ端役人を抱き込み、やがて街を支配するようになる。さらにブルボン王家のバックアップもあり急速に発展し、警察に協力してナポリの治安維持を図った[3]。当時、信頼される政府がなかったため、カモッラは地下政府組織として機能していた。1860年頃には、カモッラの影響力は、市政がこの組織に治安維持の任務を委ねるほど強大になっていた[4]。当時のカモリスタは赤いハンカチーフに飾り帯、10本の指全てに光る指輪をはめ、派手な制服を着ており、一目で分かる存在だった。以降、イタリア統一(1861年)まで、社会の混乱に付け込み勢力を拡大していった。

1912年にカモッラの活動の調査では、賭博場売春宿公共輸送機関運転手(馭者)、船頭物乞い売春婦盗賊ウェイターポーター市場商人果物行商人、小商人宝くじの当選者、質屋から恐喝によって金を徴収し、全ての密輸業を支配して不正な金を儲けていたことが判明した。

イタリア新政府により何度か摘発を受け、1927年ベニート・ムッソリーニ率いるファシズム政府の時代において4000人以上が逮捕され、組織は大きな打撃を受ける。そのため活動は一時的に終息した。カモッラはコーサ・ノストラに比べ、土地所有に食い込んでいなかったので社会を支配する力は弱かった。

マフィアとの関係

第二次世界大戦中は、アメリカン・マフィアのヴィト・ジェノヴェーゼラッキー・ルチアーノを通じて連合軍に協力し、闇市の支配などにより復活した。

シチリア・マフィアとの関係では、20世紀初頭の頃までカモッラは未成年にも売春をさせており、カモッラ構成員は服装を派手にして自分を誇示するなど、価値観の違いなどからシチリア・マフィア(コーサ・ノストラ)からは軽蔑されていた。しかし、第二次世界大戦後はルチアーノが結んだ協力関係をカロジェロ・ヴィッツィーニが受け入れたり、お互いに協力するようになり、シチリア・マフィアとも組んで、麻薬取引に手を出すようになった。


  1. ^ 桐生操監修 株式会社レッカ社編著 『「世界の秘密結社」がよくわかる本』 PHP研究所PHP文庫〉、2008年11月19日、148頁
  2. ^ 桐生操監修 株式会社レッカ社編著 『「世界の秘密結社」がよくわかる本』 PHP研究所PHP文庫〉、2008年11月19日、150頁
  3. ^ Antonio Fiore (2019). Camorra e polizia nella Napoli borbonica (1840-1860). FedOAPress. pp. 28-31. http://www.fedoa.unina.it/12347/1/Fiore.Camorra%20e%20polizia%20nella%20Napoli%20borbonica.pdf 
  4. ^ Antonio Fiore (2019). Camorra e polizia nella Napoli borbonica (1840-1860). FedOAPress. pp. 249-253. http://www.fedoa.unina.it/12347/1/Fiore.Camorra%20e%20polizia%20nella%20Napoli%20borbonica.pdf 
  5. ^ 桐生操監修 株式会社レッカ社編著 『「世界の秘密結社」がよくわかる本』 PHP研究所PHP文庫〉、2008年11月19日、151頁
  6. ^ “伊マフィア「カモッラ」メンバー40人を一斉逮捕、麻薬密売容疑”. AFPBB News. (2009年4月21日). https://www.afpbb.com/articles/-/2594101 
  7. ^ “ナポリ警察、マフィアを一斉取り締まり 64人逮捕”. AFPBB News. (2009年5月27日). https://www.afpbb.com/articles/-/2606166 
  8. ^ “イタリア当局、最重要指名手配マフィアのボスを逮捕”. ロイター. (2009年11月2日). http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-12243820091102 
  9. ^ “伊マフィアのボスを隠し部屋で逮捕、16年間逃亡”. AFPBB News. (2011年12月8日). https://www.afpbb.com/articles/-/2844590 
  10. ^ “伊マフィアのボスを潜伏先で逮捕、16年間の逃走に終止符”. 朝日新聞. (2011年12月8日). http://www.asahi.com/international/reuters/RTR201112080045.html 
  11. ^ “「首相以上の権力」誇ったカモッラのボス死去、獄中から血の抗争 伊”. AFP. (2021年2月19日). https://www.afpbb.com/articles/-/3332564 2022年8月20日閲覧。 


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