アレース 概要

アレース

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/30 00:55 UTC 版)

概要

戦いの神でありながら人間であるディオメーデースに敗北したほか(アテーナーがディオメーデースの支援をしていたが)、英雄ヘーラクレースからは半死半生の目に遭わされている[8]。また、巨人の兄弟アローアダイ(オートスとエピアルテース)により青銅の壺の中に13か月間幽閉されるなど、神話ではいいエピソードがない[1]。これはアレースの好戦的な神格がギリシア人にとって不評だったこと、主にギリシアにとって蛮地であるトラーキアで崇拝されていたことによる[7]

基本的に神々の中では嫌われているが、愛人のアプロディーテーや従者と子供達、そして彼が引き起こした戦争が冥界の住人を増やすことから、冥界の王・ハーデースとは交友がある。

戦場では普段は徒歩だが、場合によっては黄金の額帯を付けた足の速い4頭の神馬に戦車を引かせ、青銅の鎧を着込んで両手に巨大な槍を持ち、戦場を駆け巡った[7]

男神の中では一二を争う程の美貌を持っている。身長も高く、人間の前には大抵人間サイズの大きさで現れるが、真の姿だと、その身長は200メートルを優に超える。体重は不明である。

係累

ヘーパイストスの妻であるアプロディーテーを恋人とし、ポボス(フォボス、敗走)とデイモス(恐慌)の兄弟、娘ハルモニアー(調和)の父となった[1]エロースをアレースとアプロディーテーの子に加える説もあるが、これは元々関係のなかったアプロディーテーとエロースを関連付けるために作られたものである[1]。他にも、アマゾーンをはじめとする多くの蛮族の父である[1]

また、エリスエニューオーも彼の従者であり一般的には妹とされているが[1]、姉や妻とされることも多く、また特にエニューオーは母や娘とされていることもある。

神話

ポセイドーンの息子の1人・ハリロティオスがアレースの娘アルキッペーを犯し、激怒したアレースはハリロティオスを撲殺した[1]ポセイドーンは激怒し、アレースを神々の裁判にかけることを主張し、それを認められた[1]。こうしてアレースの丘で世界初の裁判が開かれることになった[1]。アレースは情状酌量の余地があるとして無罪となり、これ以降重大事件の裁判がアレースの丘で行われるようになった[7]

コリントスシーシュポスはゼウスの怒りを買い、死神タナトスによって冥界へ連行されようとしていたが、シーシュポスはタナトスを騙して監禁し、地上の人間が死ななくなったため、アレースは彼を救い出した[9]

怪物テューポーンがゼウスの王権を奪おうと攻撃し、神々は変身してエジプトへ逃げた時、アポローンは鷹に、ヘルメースはコウノトリに、アレースは魚に、アルテミスは猫に、ディオニューソスは山羊に、ヘーラクレースは子鹿に、ヘーパイストスは雄牛に、レートーはトガリネズミに変身した[10]

アレースとピュレーネー[11](またはペロピアー[12])の息子キュクノスをヘーラクレースが殺した際、アレースが息子の死を怒りヘーラクレースと闘おうとしたが、ゼウスはそれを良しとせず二人の間に雷を落とし闘いを止めた[11][12][13]

ホメーロス風讃歌』「アレース讃歌(第8番)」では槍の使い手であり、黄金の兜と青銅の鎧と楯をまとい、火を吐く馬どもの戦車を操り天空を巡り(火星のこと)、オリュンポスや都市を護り、人間たちに光と武勇を与え、強い力でもって勝利と平和をもたらす神であり、掟の女神テミスの支援者であり、勝利の女神ニーケーの父であると歌われている。


注釈

  1. ^ ギリシア語で「火星に似たもの」を意味する"Άντάρης"に由来。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル 『ギリシア・ローマ神話事典』 大修館書店
  2. ^ ヘーシオドス『神統記』921。
  3. ^ ホメーロス『イリアス』5巻888-898。
  4. ^ アポロドーロス『ギリシア神話』1巻3。
  5. ^ ヒュギーヌス『神話集』序文。
  6. ^ 『ホメーロス風讃歌』「アレース讃歌(第8番)」。
  7. ^ a b c d e フェリックス・ギラン 『ギリシア神話』 青土社
  8. ^ バーナード・エヴスリン『ギリシア神話小事典』ヘーラクレースの頁。
  9. ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話』英雄たち編 ベレロポーンとコリントスの英雄たち。
  10. ^ アントーニーヌス・リーベラーリス変身物語集』第28話。
  11. ^ a b アポロドーロス『ギリシャ神話』2巻5・11。
  12. ^ a b アポロドーロス『ギリシャ神話』2巻7・7。
  13. ^ ヒュギーヌス『神話集』 31 ヘラクレスの付随的功業。
  14. ^ Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Pub. Corp.. p. 52. ISBN 978-1-931559-44-7 
  15. ^ Jim Kaler. “Antares”. STARS. 2018年4月4日閲覧。


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