アルミニウム
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歴史
アルミニウムの歴史はミョウバン(明礬)の使用で始まった。ミョウバンの記述が最初に文書に残されたのは、紀元前5世紀の古代ギリシア歴史家ヘロドトスによる記述だった[32]。古代人にとって、ミョウバンは媒染剤、薬、そして(要塞を敵の放火から守るための)木の防火塗料であり、ウェットエッチングにも使用した[33]。十字軍以降、ミョウバンは国際貿易の商品のひとつになり[34]、ヨーロッパの織物業では欠かせない存在になった[35]。ミョウバンは15世紀中期にオスマン帝国が輸出関税を大幅に上げるまで、地中海東部からヨーロッパに輸出された。
ルネサンス初期まで、ミョウバンの性質は不明のままだった。1530年ごろ、スイスの物理学者パラケルススはミョウバンをウィトリオル(硫酸塩)と区別し、「ミョウバンの土の塩」であると主張した[注 2][36]。1595年、神聖ローマ帝国の医師、化学者アンドレアス・リバヴィウスはミョウバンと緑ウィトリオルと青ウィトリオルが同じ酸と違う土で構成されると示し[37]、ミョウバンを構成した未発見の土の名前については「アルミナ」を提唱した[36]。1722年、神聖ローマ帝国の化学者フリードリヒ・ホフマンはミョウバンの土が別の種類であると信じると宣言した[38]。1754年、神聖ローマ帝国の化学者アンドレアス・ジギスムント・マルクグラフは硫酸で粘土を煮て、続いてカリを加えることでミョウバンの土を生成した[38]。
1824年、デンマークの物理学者、化学者ハンス・クリスティアン・エルステッドは金属アルミニウムの作製に成功したと主張した。彼は無水の塩化アルミニウムとカリウム合金で化学反応を起こさせ、見た目がスズに似ている金属の塊を得た[39][40]。彼は1825年に結果を発表、新金属のサンプルを展示した。1826年、「アルミニウムは金属の光沢があり、やや灰色で、かなり緩やかに水を分解する」と記述した。1827年、ドイツの化学者フリードリヒ・ヴェーラーはエルステッドの実験を再び行ったが、アルミニウムは発見できなかった。彼は後にベルセリウスに手紙を書き、「エルステッドがアルミニウムの塊と仮定したものは確実にただのアルミニウムを含有するカリウムである」と述べた[注 3]。彼は続いて似たような実験を行った。その内容は無水の塩化アルミニウムとカリウムを混ぜることであり、アルミニウム粉末の作製に成功した[40]。彼は研究を続け、1845年に小さなアルミニウムの塊を作製することに成功、その物性を記述した。しかし、ヴェーラーの記述はそれが不純物を含むアルミニウムだったことを示している[42]。ヴェーラーなどほかの科学者がエルステッドの実験を再現できなかったことは、エルステッドが金属アルミニウムの発見者とされない理由のひとつになり、逆にヴェーラーは1845年の実験の成功とその詳細が発表されたことで金属アルミニウムの発見者とされた[43]。
フランスの化学者アンリ・エティエンヌ・サント=クレール・ドビーユは、1854年にパリ科学アカデミーでアルミニウムの工業製法を発表した[44]。塩化アルミニウムはヴェーラーが使ったカリウムよりも便利で安いナトリウムでも還元することができるのであった[45]。その後、アルミニウム棒は1855年のパリ万国博覧会で初めて公開展示された[46]。1856年、ドビーユは数人のパートナーとともにルーアンの製錬所で世界初のアルミニウム工業生産を開始した[44]。1855年から1859年にかけてアルミニウムの価格は1パウンド500米ドルから40ドルまでと、10分の1以下に下落した[47]。しかし、ドビーユの製法でもアルミニウムの純度の高さが足りず、サンプルによって性質が異なった[48]。
アルミニウムの最初の工業(大規模)生産法は1886年にフランスの工学者ポール・エルーとアメリカの工学者チャールズ・マーティン・ホールが開発したホール・エルー法である。ホール・エルー法がアルミナをアルミニウムに変える手法である一方、オーストリア=ハンガリー帝国の化学者カール・ヨーゼフ・バイヤーは1889年にバイヤー法というボーキサイト(鉄礬土)をアルミナに純化する手法を発見した。現代の金属アルミニウム生産はバイヤー法とホール・エルー法に基づく手法を使用している。1920年にはスウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム・セーデルベリ(Carl Wilhelm Söderberg)率いる研究チームがホール・エルー法を改良した。
注釈
- ^ 北米ではaluminumの綴りが用いられ、国際的にはaluminiumの綴りが用いられる[2]。
- ^ 訳注:ここでの「土」は西洋の四元素における土元素を意味する。
- ^ 原文:Was Oersted für einen Aluminiumklumpen hielt, ist ganz gewiß nichts anderes gewesen als ein aluminiumhaltiges Kalium.[41]。
- ^ 産金法(1937年)、金、銀又は白金等の取引等取締に関する件(1945年)、貴金属地金の取引等についての帳簿及び報告に関する政令(1949年)の廃止と同時に新設された貨幣回収準備資金に関する法律(2002年)により、財務大臣は貨幣回収準備資金に属する地金(引換貨幣及び回収貨幣を含む)を貨幣の製造に要する地金として造幣局に交付することができる。
出典
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