生命活動のエネルギー源であるアデノシン3リン酸(ATP)を細胞に提供する仕組みで、ミトコンドリアの内膜にある脱水素酵素複合体の連鎖のことです。
生物が酸素を用いたいわゆる好気呼吸を行うとき、細胞ではいくつかの代謝が行われて炭水化物が最終的に水と二酸化炭素に分解されます。これらは解糖系、クエン酸回路、酸化的リン酸化(電子伝達系)の3つの代謝に分かれます。最後の段階は電子伝達系でNADHなどの電子伝達体を酸化し、酸素に電子を伝えて水を生成します。この3つの代謝で放出されるエネルギーを使ってATP合成酵素がアデノシン2リン酸(ADP)からATPを生成します。
電子伝達系を植物などの光合成における電子伝達系と区別して呼吸鎖といいます。また、これらの一連のプロセスを指して呼吸鎖と呼ぶ場合もあります。
電子伝達系
英訳・(英)同義/類義語:electron transfer, electron transport system, electron transport systems, Electron transport chain, ETS, ATP (adenosine triphosphate)
ミトコンドリアや葉緑体に含まれる一連の電子伝達を行う物質の組(電子伝達系)があり、ATPなどへのエネルギー変換を行っている。
呼吸鎖
別名:電子伝達系
【英】:respiratory chain
電子伝達系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 06:48 UTC 版)
電子伝達系(でんしでんたつけい、英: Electron transport chain)は、生物が好気呼吸を行う時に起こす複数の代謝系の最終段階の反応系であり、酸化還元反応により電子供与体から電子受容体へ電子を移動する一連の生物学的過程のことである。別名水素伝達系、電子伝達鎖、呼吸鎖などとも呼ばれる。水素伝達系という言葉は高校の教科改定で正式になくなった(ただ言葉として使っている人はいる)。
- ^ Murray, Robert K.; Daryl K. Granner; Peter A. Mayes; Victor W. Rodwell (2003). Harper's Illustrated Biochemistry. New York, NY: Lange Medical Books/ MgGraw Hill. pp. 96. ISBN 0-07-121766-5
- ^ Karp, Gerald (2008). Cell and Molecular Biology (5th ed.). Hoboken, NJ: John Wiley & Sons. p. 194. ISBN 978-0-470-04217-5
- ^ a b Garrett & Grisham, Biochemistry, Brooks/Cole, 2010, pp 598-611
- ^ a b 黒岩常祥著 『ミトコンドリアはどこからきたか』 日本放送出版 2000年6月30日第1刷発行 ISBN 4140018879
電子伝達系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 14:24 UTC 版)
詳細は「電子伝達系」および「酸化的リン酸化」を参照 NADHやFADH2が有する還元力は、内膜にある電子伝達系で数段階を経て、最終的に酸素に渡される。要するに、電子を、電気陰性度の高い酸素に押し付ける形である。 なおNADHは、マトリクスでのTCAサイクルやβ酸化だけでなく、細胞質の解糖系でも生ずる。細胞質で生じたNADHの還元力は、マロン酸-アスパラギン酸対向輸送系や、リン酸グリセロールシャトル系を通じて電子伝達系に供給される。内膜の電子伝達系には、NADH脱水素酵素、シトクロームc還元酵素、シトクロームc酸化酵素が存在しており、プロトン(H+)を膜間腔へ汲み出す。この過程は非常に効率的だが、不充分な反応により活性酸素種を生じ得る(活性酸素#活性酸素と人体の関係参照のこと)。これがいわゆる「酸化ストレス」の形態の1つであり、ミトコンドリアの機能低下や老化に関与していると考えられている。 グルコーストランスポーターであるGLUT1を介して、デヒドロアスコルビン酸がミトコンドリアに輸送され、その後アスコルビン酸に還元され、活性酸素によるフリーラジカルの大部分が生成される場所であるミトコンドリアに蓄積される。アスコルビン酸は、ミトコンドリアの脂質膜とmtDNAを、活性酸素による酸化から保護する。 電子伝達系で、複合体Iと複合体IIIと複合体IVは、電子が伝達された際に、ミトコンドリアのマトリクスから膜間腔へとプロトンを汲み出す。このようにしてプロトンが膜間腔へ汲み出された結果、ミトコンドリアの内膜の隔てて、プロトン濃度の差(電気化学的勾配)が生じる。汲み出されたプロトンは、ATP合成酵素を通じてマトリクスへ戻る事ができ、この際に、電気化学的勾配のポテンシャルを使って、ADPと無機リン酸(Pi)を、ATPへと変換する。生成されたATPは、ATP/ADPトランスポーターによって、ミトコンドリアから細胞質へ輸送され、細胞の活動エネルギー源として利用される。 この原理を化学浸透説と呼び、これをピーター・ミッチェルが最初に唱えた功績によって、1978年にノーベル化学賞を受賞した。また、ATP合成酵素の反応機構を明らかにしたポール・ボイヤーとジョン・E・ウォーカーには、1997年にノーベル化学賞が授与された。
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電子伝達系
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「ミトコンドリアマトリックス」の記事における「電子伝達系」の解説
電子伝達系は、ミトコンドリア内膜のクリステに存在する。マトリックスのクエン酸回路で生産されたNADHとFADH2はプロトンと電子を放出し、NAD+とFADを再生する。プロトンは、電子伝達系の電子のエネルギーによって膜間腔に引き込まれる。2つの電子は最終的にマトリックスの酸素に受け取られ、電子伝達系を終結させる。プロトンはATPシンターゼによる化学浸透の過程でマトリックスに戻る。
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