誘拐、そして奴隷の身へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:23 UTC 版)
「ソロモン・ノーサップ」の記事における「誘拐、そして奴隷の身へ」の解説
1841年、32歳のノーサップはメリル・ブラウン(英: Merrill Brown)、エイブラハム・ハミルトン(英: Abram Hamilton)と名乗る2人の男に出会った。2人は自らをサーカス会社員の芸人だと言い、ノーサップにニューヨークでヴァイオリン奏者として公演に参加しないか持ちかけた。公演が短期的なものだと思ったノーサップは、サンディ・ヒルで働く妻アンには連絡せずに公演へ向かった。ニューヨークに着いたところで、2人はノーサップへ気前の良い賃金と帰りの旅費を提示し、ワシントンD.C.で行われるサーカスの巡業にも参加するよう説得した。ワシントンでは奴隷制が適法で、彼の身分が脅かされる可能性もあったため、一行はノーサップが自由黒人だと証明する「フリー・ペーパー」(英: "free papers")のコピーを取得するため、一時寄り道をした。 当時のワシントンD.C.は、国内有数の奴隷市場が存在する場所でもあり、奴隷商人たちは、自由黒人を誘拐して奴隷にすることも厭わなかった。南北戦争からおよそ20年前の当時は、ディープサウスで綿花栽培が拡大されており、健康な奴隷の需要が高まっていた時期でもあった(キング・コットン(英語版)も参照)。誘拐者たちは、力尽くの連行や詐欺など様々な手段を使ったが、中でもコントロールしやすい子どもの誘拐が多発していた。 「ブラウン」「ハミルトン」と名乗った男がノーサップを人事不省にしたことは容易に考え得ることで、彼が記録した症状はベラドンナまたはアヘンチンキ、もしくはその両方の中毒症状を示唆している。ノーサップはその後、逃亡奴隷と偽証されてワシントン出身の奴隷商人ジェームズ・H・バーチ(英: James H. Birch、ノーサップの著書では "Burch" と綴られている)に650ドル(2020年時点の$15,787と同等)で売却された。ノーサップはこの試練について、回想録の第2章で次のように述べている。 「彼らは私の不幸の幇助者なのか—人間の形をした狡猾で残酷な怪物なのか—故意に私を誘き出し、金のために私を家や家族、自由から引き離してしまった—このページを読んでいる人は、私と同じような判断をすることだろう」"[w]hether they were accessory to my misfortunes – subtle and inhuman monsters in the shape of men – designedly luring me away from home and family, and liberty, for the sake of gold – those who read these pages will have the same means of determining as myself." — ソロモン・ノーサップ バーチと彼の雇った看守だったエベニーザー・ラドバーン(英: Ebenezer Radburn)は、ノーサップが自由黒人だと主張するのを黙らせるため、彼をひどく打ち付けた。バーチはまた、ノーサップをジョージア州からの奴隷と偽り、ノーサップはアメリカ合衆国議会議事堂近くにあった、ウィリアム・ウィリアムズ(英: William Williams)へ出品された。バーチはノーサップと他の奴隷たちを海路でニューオーリンズへ送り、彼の仲間のシオフィラス・フリーマン(英: Theophilus Freeman)がこの奴隷たちを売り捌いた。旅の間、ノーサップや一緒に輸送された奴隷たちは天然痘に罹り、ロバートという名前の奴隷が道半ばで死亡した。 ノーサップは、イングランド出身の船乗りジョン・マニング(英: John Manning)に対し、ニューオーリンズに着いたら、彼が誘拐され不当に奴隷にされたという手紙をヘンリー・B・ノーサップに出してくれるよう説得した。ヘンリーは弁護士で、ソロモンの父を解放したヘンリー・ノーサップの息子であり、ソロモンとは幼馴染みでもあった。ニューヨーク州議会は1840年の議会(英語版)で、アフリカ系アメリカ人の住民が誘拐され、不当に奴隷にされた場合には、人権の回復に対し法的・経済的支援を行うという法律を成立させていた。ヘンリーはソロモンを助けたいと考えたが、彼がどこにいるのか分からない状況では手の出しようが無かった。
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