船体設計に関わる特殊な例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 15:34 UTC 版)
「軍艦構造」も参照 純自動車運搬船 PCC(Pure car carrier)やPCTC(Pure car & truck carrier)とも呼ばれる純自動車運搬船では船内が日本の自動車用の立体駐車場のように何層にも分けられており、出来るだけ多くの車輌を搭載出来るように上部構造物も目一杯高く、船幅と前後にも一杯に作られ、各階毎の高さも低く抑えられている。この状態で他の貨物船のように分厚い甲板を設けると重心が高くなりすぎてたちまち転覆するので、甲板は薄く作られており、普通の貨物船では2-3ton/m2であるのにPCCでは150-200kg/m2しかない。 大型のPCCでは9-13層にもなる各階ごとの高さは最も多い乗用車に合わせて1.7-2.1m程度となっているが、トラックやバスなどの搭載スペースとして一部は高さが可動式のリフタブル・デッキ(Liftable Deck)またはホイスタブル・デッキ(Hoistable Deck)とよばれる構造になっていて、車輌の重量に合わせて甲板も強化されている。船内での車輌の上下移動は過去にはエレベータも使われたが、21世紀初頭の現在は、船倉内のスロープを自走によって上り下りしている。 たとえば世界最大の総トン数2万トン級PCCでも搭載できる自動車は6,000台で、満載しても約6,000トンが増えるにすぎない。このままではスクリューが水面に近くになりすぎるため、他の貨物船より水面下の形状を細くしてスクリューの位置をわざわざ深くしている。 大きな上部構造物によって水線上の面積が大きいため、風の影響を強く受ける。自動車専用岸壁への接岸時の利便性と安全性に配慮して、大きな舵を備え、大型PCCではバウ・スラスターを搭載している。大型のPCCでは上部船体がほとんど矩形の鋼鉄製構造物によって付けられているのにたいして、21世紀になってからの特に大型のPCCでは、風の影響を出来るだけ避けるために船の前後が丸く曲線や曲面で構成される船が現れている。 自走による積み下ろし時の排ガスや搭載車のガソリンタンクからのわずかな蒸発による火災のリスクを考慮して強力な換気装置が備わっている。車輌デッキは水密隔壁で細かく区切るという事が出来ないので、比較的小さな損傷による浸水でも沈没に至りやすい。過去には、波浪によってランプウェーが破損し、そのための浸水によって極めて短時間に沈没した船が多数存在するが、現在の新造船では内部に防水ドアを設けるなどの対策が施されている。 フェリー カーフェリーの最も特徴的な他船との構造上の違いは、船体内部に1層から3層程度の広い車輌甲板を持ち、大きなランプウェイ(斜路)を備えることである。運搬される車輌は、船の前後部や左舷に1-3つ程度の備えられたランプウェイを自走して車輌甲板内に搭載される。 こういった構造は純自動車運搬船(PCC)も似た状況であるが、いずれも、船体の喫水線近くに大きなランプウェイによるドアを持ち、荒天状況下で万が一ドアが破損すればこの開口部より波浪が大量に侵入して、広く平坦でなければならないために余裕を持って水密区画を設けることが出来ない船内に大量の水の浸入を招く恐れがある。このため、中大型のカーフェリーで船首ランプウェイを持つものは、波浪が直接、ランプウェイに当って破損されるの防ぐために、バウバイザー(Bow visor)と呼ばれる装置が船首部に備わっている船が多い。船首ランプウェイを持つ場合でも小型で航路が短いものではバウバイザーを備えず、荒天時には運休することで対応する船もある。 多くのカーフェリーでは、船首と船尾、または船首近くと船尾近くの左舷側にランプウェイを持つことで、車輌甲板内での自動車の前後方向を転換するという時間と手間の掛かる方法を避けて、車輌用の入口と出口を両方備えることで車輌甲板内では一方通行で済むようにしている。さらに、小型で航路長が極めて短いルートの船では、ランプウェイを船首と船尾の両方備えるだけでなく、スクリュー・プロペラと舵を船の前後に備え、さらに操船用のブリッジも2箇所に持つことで、接岸時の船の転回の必要をなくしているものがあり、このような船は「両頭カーフェリー」と呼ばれる。 大型のカーフェリーでは上部構造物がクルーズ客船並みに大きい船もあり、そういった船はサイドスラスターを備えることで強風に流されることを防ぐ必要がある。 タンカー(油槽船) 詳細は「タンカー#船舶のタンカー」および「石油タンカー」を参照 LNG船 詳細は「LNGタンカー」を参照 貨物船一般 貨物船の船倉ハッチはその多くが、レールにそって左右のいずれか片側に、または中央から左右2つに分かれて、電動モーターによって開閉するようになっている。 FOFO船 FOFO船(Float on Float off Ship)では重量物が搭載されるため、特に高強度な船体が要求される。船を水面下に沈めるための大きなバラスト・タンクを備える点でも特殊であり、平たく低い中央甲板を備える。 砕氷船 詳細は「砕氷船」を参照
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