総音列技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 05:26 UTC 版)
詳細は「トータル・セリエリズム」を参照 十二音技法では音高を数列と見なし「音列」を形成したが、これを音高のみならず音価(音の長さ)や音量(強度)あるいは音色にも応用し、音楽における全ての要素を数列化することにより、最初の数列と数式を決めた後は計算によって自動的に音楽作品を生成する作曲法を総音列技法、フランス語でセリー・アンテグラルと言う。オリヴィエ・メシアンの「音価と強度のモード」によってその可能性が示唆され、メシアンの生徒であるピエール・ブーレーズの「構造」第1番および第2番によって完全に実現された。日本では松平頼暁(頼則の息子)の「ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための変奏曲」がこの技法により作曲されている。 パラメーターの技法 音高:ソナタ形式の主題にあたる十二音列を作成する。調性を感じさせてはいけないので隣同士の音程はトリトヌス(増4度や減5度)や半音音程(短二度や長七度)を主に並べられる。三度など調性を感じさせる物は原則禁止される。それぞれの音は1回しか使えない。実際に曲に使用する場合は調性を感じさせないようにすべて跳躍進行にする。シェーンベルクの十二音技法は主としてここまでで終わっている。 音長:セリエル音楽の場合は1から12までそれぞれ違った音の長さの違う音符を用意する。ウェーベルン時代はトータル・セリエリズムにはなっていないが、できるだけ繰り返しの少ない、図形的リズムやコントラスト・リズムで音の長さの秩序化を図る(参照:ウェーベルン作曲の「協奏曲」作品24)。 強弱:原則として繰り返しを避ける。セリエル音楽の場合は1から12までそれぞれ違った音の強弱を準備する。例えば(pppp, ppp, pp, p, mp, mf, f, sf, ff, ffz, fff, ffff)等である。ウェーベルン時代も強弱の繰り返しは極力避けるがディミヌエンドやクレッシェンドなどの大雑把な強弱法がまだ多い。 音色:その都度楽器を頻繁に替える。1回使った楽器は原則1つの音列が終わりまで使えない。セリエル音楽の場合は1から12までそれぞれ違った楽器を準備するのが理想的である。 方向:シュトックハウゼンによって付け加え的に提唱された。彼のたくさんのスピーカーを使った電子音楽などに見る事ができる。 十二音列は旋律ではないので、普通は音1つ1つが独立する音響作曲法のさきがけをなす。伴奏部分も十二音列によって初期には作曲されたが、「メロディーと伴奏との組み合わせ」と言う繰り返しを避ける為に次第に廃れ、代わって対位法的な技法(構成法や逆行・反行・反逆行)が多く用いられた。ウェーベルンでは音列と次の音列のつなぎに「鏡/Spiegel/Ambivalenz」と呼ばれる共有音で良く接続される。更にコントラバスとチェロのオクターヴ音程奏法やオスティナートなどは古今長らく使われてきたので、和声学における平行五度等と同じく「繰り返し」として意図的に厳しく避けられる。
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