殷~三国時代
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龍窯のもっとも古いものは、殷の時代にまでさかのぼる。江西省清江県呉城で発掘された呉城文化の遺跡では4基の龍窯が確認されている。そのうち比較的保存状態のよい6号窯は、殷の終末期の窯であり、長さ7.54mが残存しており、幅は1m前後、底面は1度54分の傾斜で、ほぼ平坦に近い。薪を横から入れるための投薪孔(鱗眼洞)が片方の側面に9ヶ所設けられている。焚き口は、薪を入れてから適度に燃焼した時期を見計らって、土磚という一種のレンガのブロックでふさぐ。その後、焚き口に近い順に投薪孔から薪を投げ込んでいくと考えられる。この窯では、印紋硬陶と呼ばれる土器と原始青磁を焼いている。浙江省では、上虞市百官鎮の2号窯が殷代の窯にあたる。全長5.1m、最も幅の広い部分が1.22m、窯床は、16度の傾斜を持っている。この窯では、印紋硬陶のみを焼いていたようである。 広東省博羅県園洲鎮では、春秋時代早期と考えられる龍窯が発見されている。この窯は、窯床が20度の傾斜を持ち、全長が15m、幅2mくらいの規模をもつ。春秋戦国時代を通じてこの窯の周辺1万m2に陶磁器を焼いた窯跡が分布していることが判明しており、この窯跡群で焼かれたと推定されるヘラ記号を施した印紋硬陶や原始青磁が周辺の春秋戦国時代の墓からも副葬品として発見されている。揚子江の河口の南方、杭州湾の南岸にあたる浙江省紹興県富盛鎮長竹園でも戦国時代に属する龍窯が発見されている。窯頭部分が、灌漑用水利施設工事の際に破壊され、本来は、4~6mあったと考えられるが、長さ3m分が残存していて検出された。窯壁は、20cm残存しており、天井部分は崩落して失われている。窯の底面は、16度で傾斜し、焼成による12cmの堆積が確認されている。窯道具はトチンなどが出土しているものの、基本的には、焚口の近くに素地の器を直接置いているため、生焼けであったり焼成の状況はよくない。 浙江省上虞県聯江公社紅光大隊帳子山で発見された2基の龍窯は、後漢時代のもので前半部が破壊されていたがそのうち1号窯は、3m90cm、幅2m前後で残存していた。傾斜は下半分で28度であるが途中で21度に変わっている。窯の底面には粘土が塗られてその上には砂が二層に渡って敷かれていた。その下層は、熱を受けて硬くなっていたが、上層は窯道具を支えるために柔らかな状態であった。窯壁は、30cm強~40cm強程度残存していた。窯の下半分の窯壁が分厚く壁面がいったん高熱で溶けた後凝固している様子がうかがわれ、上のほうにいくにしたがって薄くなり、残存していた遺物も赤焼けでもろくなっている。このような残存している窯壁の立ち上がりや窯体内に残っている器や窯道具の大きさから、天井の高さは、110cmくらいであると推測される。 2号窯は、1号窯とほぼ規模、造りとも同じくらいで、窯床の傾斜は下半分で31度、上半分で14度の傾斜である。1号、2号とも窯道具はほぼ原位置を保って残されている。窯体内は、窯の傾斜が急になっていて、窯の内部は1250~1300度くらいになっていたと推定され、器の素地が生焼けにならないように窯道具で高く積み上げて窯詰めを行い、以前の窯に比べて格段に効率がよくなっている様子がうかがわれる。後述する近隣の三国時代の窯が長さ13mくらいであったことから考えて、窯の全長は10mくらいではないかと考えられている。 上虞県聯江公社凌湖大隊鞍山では、長さ13.32mの三国時代に当たる龍窯が発見されている。燃焼室は半円形でもっとも長い部分は80cmで、素地を焼く窯床よりも42cm低くなり、厚さ11cmの障壁で仕切られている。窯頭が失われているため、焚き口と通気孔については状況がわからないが、長方形の作業場とおもわれる粘土敷きの広場遺構が確認されている。窯室部分、すなわち焼成室は、底面は地山に一層の砂を敷いており、下半分は13度、上半分は23度に傾斜し、長さは10.29m、幅は2.1~2.4mであった。窯壁は30~37cm残存していた。窯室と窯尾を区分する場所には、障壁が高さ10cm残存しており、そこから57~80cmの位置に5本の分焔柱が発見された。高さ15cmで、被熱の仕方から上に壁はなかったと推定される。 分焔柱の後ろには粘土の塊がおかれていた。おそらく火の勢いを調節するためであったと思われる。窯道具は窯室中央部分に集中しており、窯室の後ろ部分、すなわち窯の上の窯尾付近には窯詰めがほとんどなされなかったとおもわれる。 三国時代までの龍窯は、10mくらいのせまい窯室で、窯体の幅を広くし急な傾斜を用いることによって高温を維持して焼成を行う小規模な窯であった。
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