新しい分子標的薬リツキサン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/30 04:05 UTC 版)
「CHOP療法」の記事における「新しい分子標的薬リツキサン」の解説
21世紀に入ってから分子標的薬であるリツキシマブを併用することでAgeressive lymphomaの治療は劇的に変わった。Ageressive lymphomaの治療はCHOP療法からR-CHOP療法が主流に変化したのである。R-CHOPではCHOP療法のプランでday-2,-1などにリツキシマブを投与することが多い。1サイクルが21日であることはCHOP療法と変わりはない。 リツキシマブ(リツキサン)は遺伝子組み換え技術を用いて作りだされたマウス-ヒトキメラ型モノクローナル抗体である。リツキシマブはヒトB細胞表面抗原であるCD20に結合し、抗体依存性細胞介在性細胞障害作用(ADCC)および補体依存性細胞障害作用(CDC)によりB細胞を特異的に傷害する。すなわちB細胞性の悪性リンパ腫やB細胞性の白血病には効くがT細胞性には効かない。リツキシマブは骨髄抑制がほとんどないため通常量の化学療法との併用も可能である。21世紀に入ってからCHOP療法とR-CHOP療法の比較試験が数多くなされており、リツキシマブ併用の方が有用とされている。 リツキシマブの投与にあたって気をつけるべきことはマウス抗原が一部体内に入るためアレルギー反応が起こることである。おそらくアレルギーで良いのであるが、それをクームス分類して機序を解析しようという発想が臨床家にはないため、infusion related toxicityと勝手に名前をつけて、対処することになっている[独自研究?]。臨床家にとってはリツキシマブを安全に投与できれば良いのでこのアプローチは非常によい。Infusion related toxicityは投与後1時間半から2時間の頃に最もよく見られ、発熱、皮疹、胸部違和感、咽頭部違和感などが高頻度にみられる。重度の場合は血圧低下、アナフィラキシー様症状を呈することがある。これらは炎症性サイトカインの増加によるものと理解されており炎症が軽度である場合は経過観察のみで自然軽快することも多い、重度のinfusion related toxicityは末梢血中のへの腫瘍細胞の出現、骨髄浸潤、bulky病変、頸部・咽頭部病変などを有する場合に多いと言われている。これらを予防するためにNSAIDsであるブルフェン(100)2T、セレスタミン1Tをリツキシマブ投与30分前に投与することとなっている。もちろん他の解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)や抗ヒスタミン薬の投与でも良い。初回投与時は25mg/hrの速度で開始しgrade2以上のアレルギー反応がみられなければ、1時間ごとに100mg/hr, 200mg/hrまで増量する。初回投与時にgrade2以上の毒性が生じなければ二回目以降は100mg/hrから開始してよいと言われている。Grade2のアレルギー反応とは皮疹や蕁麻疹、呼吸困難、38℃以上の発熱である。血圧の低下、ウィーズの聴取までいくとgrade3である。Grade2の毒性が見られたら、一旦点滴を中止し、ソルコーテフ200mgを点滴し、軽快を認めたら再開をしていく、という方法が知られているが、ステロイドによるADCC活性低下が予想されるため、「呼吸が止まるまで入れるべき」とする専門家もいる。いずれにしても加速は慎重に行うべきである。以下にリツキサン投与日の点滴の一例を示す。 1.前投薬ブルフェン(100)2T、セレスタミン1TをPO 投与30分前 2.ソルコーテフ100mg 生理食塩水注 100ml 30min 3.リツキサンXmg生理食塩水加えてXml(1mg/mlにするだけだが)25ml/hrから開始、1時間見て変化がなければ100ml/hrに加速、1時間見て変化がなければ200ml/hrに加速 4.蕁麻疹にてソルコーテフ200mg 生理食塩水注50ml 15min 5.体重増加でラシックス10mg 生理食塩水50ml 15min といった具合になる。infusion related toxicityを発見し、安全な投薬を行うには、投与前、投与後、30分後、1時間後、2時間後のバイタルや各種所見(アレルギー症状として悪寒、悪心、頭痛、掻痒、皮疹、咳、虚脱感、血管外漏出)を記載することが望ましい。なお入院中なら翌日からはCHOP療法が行われる。
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