表面抗原とは? わかりやすく解説

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表面抗原

英訳・(英)同義/類義語:surface antigen

細胞ウイルスの表面タンパク質で、特にその細胞ウイルス特異的な抗原性を示すものを指すことが多い。

CD分類

(表面抗原 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 14:30 UTC 版)

CD分類(シーディーぶんるい)とは、ヒト白血球を主としたさまざまな細胞表面に存在する分子(表面抗原)に結合するモノクローナル抗体の国際分類。

CDとは、cluster of differentiation の頭文字で、訳すと「分化抗原群」であり、白血球分化に関わる抗原分子に対するモノクローナル抗体をクラスタ解析(群解析)で分類したことから名付けられた[1]。白血球やその他の細胞は、細胞表面に糖タンパクなどでできたさまざまな分子を発現しており、この分子の違いを見分けることで細かい細胞の違いを識別することができる。

これらの分子は、モノクローナル抗体が結合する抗原として識別することができ、表面抗原あるいは表面マーカーと呼ばれる。しかし、異なったモノクローナル抗体が同じ表面抗原に結合することがあるため、混乱が生じることがある。そこで、同じ表面抗原を認識する抗体群を、同じ番号(と記号)で国際的に統一して分類したものがこのCD分類である。CD分類でつけられた番号(と記号)をCD番号とよぶ。CD分類は本来はモノクローナル抗体の分類であるが、モノクローナル抗体が認識する表面抗原の名称にも用いられる(CD抗原またはCD分子)。これらCD抗原には細胞の機能や分化に関わる分子が含まれる。

CD分類は1982年パリで開かれた第1回ヒト白血球分化抗原に関する国際ワークショップ[2]でCD1〜CD15の15種類が決定されたのに始まり、2007年1月現在までに9回のワークショップを通じてCD350までが決定されている[3]

歴史

1975年ケーラーミルスタインによってモノクローナル抗体の作成方法が確立される[4]と、1970年代末から1980年代前半にかけて多くのモノクローナル抗体が樹立され、白血球の細胞表面に存在し白血球の機能や分化のマーカーとなる分子が多数同定された。しかし、同じ抗原に対し、研究者によって異なった名前がつけられるなど命名が混乱したため、ヒト白血球分化抗原 human leucocyte differentiation antigens (HLDA) に関する国際ワークショップが立ち上げられることとなり、第1回が1982年パリで開催された。ここで多くのモノクローナル抗体を複数の施設で評価し、抗体の認識抗原の相同性をクラスタ解析で群別し、同一抗原に対する抗体とされた抗体群に同一のCD番号が振り分けられた[5]。第1回会議では約140種類の抗体からCD1〜CD15の15種類のCDが決定された[2]

その後HLDAワークショップは2〜4年に1回ずつ開催され、多くのCD番号を決定した。もともとは白血球の表面抗原に対する抗体の分類を目的としたものであったが、赤血球や赤血球、血管内皮細胞、線維芽細胞などの細胞表面分子に対する抗体も含まれるようになったため、2004年HLDA委員会はワークショップの目的をヒト細胞分化抗原 human cell differentiation molecules (HCDM) の研究・分類に変更し[6]2006年よりワークショップの名称もHCDMワークショップに変更された。

ワークショップ 開催年 開催地 定義CD[7]
第1回HLDA会議[2] 1982年 パリ CD1〜CDw15
第2回HLDA会議 1984年 ボストン 〜CDw26
第3回HLDA会議 1986年 オックスフォード 〜CD45R
第4回HLDA会議 1989年 ウィーン 〜CDw78
第5回HLDA会議[8] 1993年 ボストン 〜CDw130
第6回HLDA会議[9] 1996年 神戸 〜CD166
第7回HLDA会議[10] 2000年 ハロゲート 〜CD247
第8回HLDA会議[6] 2004年 アデレード 〜CD339
第9回HCDM会議 2010年 バルセロナ 〜CD364
第10回HCDM会議 2014年 ウロンゴン 〜CD371

CD番号の付け方

CD番号はワークショップで決定された順に番号を振ってあるだけであり、番号には特別な意味はない。また、既存のCD分子に複数の分子種が存在することが判明した場合にはCD1a〜CD1dのように枝番をつけるが、この枝番のつけ方にも定義はない。一方、ある種の細胞に限定した分布をする亜型が存在する抗原には、CD45Rのように後ろにR(restricted distributionのR)をつける。またCDとしての定義に満たない場合にはworkshop CD (CDw) として暫定的な番号をつける[7]

主なCD抗原

CD番号 別名 主な発現細胞 機能
CD1d R3 APC MHCクラスI様分子。糖脂質やリン脂質を提示してNKTを活性化する
CD4 T4 T MHCクラスII認識、HIVが感染する際の標的分子
CD8α T8 T, 骨髄系DC MHCクラスI認識
CD20 B1 B, 濾胞性DC 成熟B細胞マーカー、リツキシマブの標的分子
CD34 造血幹細胞 造血幹細胞マーカー
CD80 B7.1, CD28L, CTLA-4L 成熟DC, T細胞活性化の共刺激分子、DCの成熟化マーカー
CD86 B7.2 活性化DC, T細胞活性化の共刺激分子、DCの成熟化マーカー
CD133 造血幹細胞 造血幹細胞マーカー
CD134 OX40 活性化T T細胞の共刺激分子
CD152 CTLA-4 制御性T細胞 免疫チェックポイントマーカー

外部リンク

abcam社 CD Antigens ポスター(英語)]
  • Antigens Retrieval Table [1]

参考文献

  1. ^ 橋本亙 「CD分類 —HLDAからHCDMへ—」『リウマチ科』34号、664-675頁、2005年。
  2. ^ a b c Bernard AR, Boumsell L, Dausset J, et al. (Eds). "Leucocyte typing: Human leucocyte differentiation antigens detected by monoloclonal antibodies." Springer-Verlag, Berlin, 1984.
  3. ^ Zola H, Swart B, Banham A, et al. "CD molecules 2006 - Human cell differentiation molecules." Journal of Immunological Methods, 2006. PMID 17174972
  4. ^ Kohler G, Milstein C. (1975) Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity. Nature, 256, 1975, p.p. 495-497. PMID 1172191
  5. ^ 菊地浩吉・今信一郎 「CD分類と免疫」『免疫・Immunology Frontier』4号、399-405頁、1994年。
  6. ^ a b Zola, H, Swart B, Nicholson I, et al. "CD molecules 2005: human cell differentiation molecules." Blood, 106, 2005, p.p. 3123-3126. PMID 16020511
  7. ^ a b 橋本亙・宮坂昌之 「CD分類の新たな展開」『臨床免疫』43号、556-566頁、2005年。
  8. ^ Schlossman SF, Boumsell L, Gilks W, et al. "CD antigens 1993." Journal of Immunology, 152, 1994, p.p. 1-2. PMID 7902854
  9. ^ No author listed. "CD antigens 1996: updated nomenclature for clusters of differentiation on human cells. IUIS/WHO Subcommittee on CD Nomenclature." Bulletin of World Health Organization, 75, 1997, p.p. 385-387. PMID 9342899
  10. ^ Zola H, Swart B, Boumsell L, et al. "Human Leucocyte Differentiation Antigen nomenclature: update on CD nomenclature. Report of IUIS/WHO Subcommittee." Journal of Immunological Methods, 275, 2004, p.p. 1-8. PMID 12723570



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