戦時の車両増備と戦時設計
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「国鉄63系電車」の記事における「戦時の車両増備と戦時設計」の解説
1937年の日中戦争開始に伴い鉄道動員体制となったことと、開戦に伴う旅客・貨物の輸送量増加に対応するため、1938年度に「輸送力拡充4ヵ年計画」(1941年度まで)を策定し、総額96.6百万円の予算のうち、車両増備にその55%を当して輸送力の増強を図ったが、資材不足により次第に計画達成率が低下していた。その後、1942年度から10か年の「交通施設長期整備計画」を策定し、当初の5年間は毎年220百万円の予算のうち22%を車両増備に充てることとしていた。 しかし、太平洋戦争の進展に伴う、産炭地からの石炭輸送を中心とした内航運輸の輸送力不足に対応するため、1942年10月6日に閣議決定された「戦時陸運の非常体制確立に関する件」および「戦時陸運非常体制確立方策要綱」によって戦時陸運の非常体制を確立し、石炭や鉄鉱石などの重要物資の海上輸送を陸上輸送に移して余剰の船舶を満州・中国大陸方面や南方方面からの輸送に充てるための5項目からなる要綱が定められ、その要綱の下に9項目からなる措置が定められた。この計画を念頭に、1943年2月以降ダイヤ改正を繰り返し、旅客列車を削減して余剰となった機関車を貨物列車に回してこれを増発するとともに、列車運行の効率化などを行うなど経営資源を戦時陸運非常体制確立に振り向けており、その一環として1943年7月20日の閣議決定により「鉄道車輌の計画増産確保に関する件」が以下の通り定められた。 鉄道車両製造工場は国家総動員法に基き鉄道大臣の管理とする 車両製造および修繕能力を最大限に発揮するため、鉄道省の技術・労務・資材・施設・経験等を活用して鉄道省の工場・機関区・検車区と民営工場とを一体的に総合運営する 車両製造に関しては五大重点産業並みの扱いとする 車両に対して戦時規格の実施を徹底する 必要に応じて戦時行政職権特例および許可認可等臨時措置法を発動する これに伴い、民間の車両メーカーも国家総動員法に基づく鉄道大臣の管理下に入れて官民一体で車両製造・修繕にあたることとなり、各民間工場に監理官が配置されて指揮監督または指導斡旋を行ったほか、1939年に車両の生産および配分の調整のための鉄道車両協議会および材料配給と部品規格統一を目的とする車両技術協会が設立され、1941年12月22日には重要産業団体令に基づき、車両および信号保安装置の製造販売を統制する車両統制会が発足している。 一方、開戦により車両用の資材が不足する状況となったため1930年代後半には資材の使用量削減のための設計変更がされるようになり、さらに、一層の資材の節約を図るため、1943年1月4日付の「戦時規格委員会規程」に基づき鉄道省に設置された戦時規格委員会において戦時陸運非常体制下における車両の生産増強のため以下の5項目について戦時規格等を制定し、これを実施することとなった。 安全率の低減 耐久寿命の短縮 規格の変更 使用期限および検査期間の延長 工程・艤装の簡易化 参考として、1937年から1945年の間の輸送量の変化は以下の通りであった。 年度別の戦時輸送の状況種別項目1937年1938年1939年1940年1941年1942年1943年1944年1945年旅客列車人数1.16十億 人 1.35十億 人 1.61十億 人 1.88十億 人 2.17十億 人 2.28十億 人 2.65十億 人 3.11十億 人 2.97十億 人 人キロ数29.1十億 人・km 33.6十億 人・km 42.1十億 人・km 49.3十億 人・km 55.5十億 人・km 60.5十億 人・km 74.1十億 人・km 77.3十億 人・km 76.0十億 人・km 1日1キロ平均通過客車165 両 167 両 180 両 193 両 199 両 201 両 186 両 167 両 133 両 1列車あたり輸送人員155.3 人 179.4 人 219.3 人 249.6 人 279.5 人 305.3 人 395.7 人 434.8 人 558.1 貨物列車トン数106百万 t 118百万 t 131百万 t 146百万 t 152百万 t 158百万 t 178百万 t 161百万 t 81百万 t トンキロ数18.9十億 t・km 21.9十億 t・km 25.3十億 t・km 27.9十億 t・km 29.8十億 t・km 33.9十億 t・km 42.8十億 t・km 41.2十億 t・km 19.0十億 t・km 1日1キロ平均通貨貨車447.4 両 480.5 両 521.4 両 542.3 両 562.1 両 613.6 両 647.0 両 561.9 両 291.9 両 1列車あたり輸送トン221.1 t 237.6 t 243.0 t 256.6 t 263.1 t 278.0 t 306.2 t 297.1 t 229.1 t
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