三陸鉄道への経営移管
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2014年1月31日の第7回山田線復興調整会議においてJR東日本は、210億円と試算された復旧費用のうち線路や設備などの原状回復に伴う140億円を自社で負担すると明言した上で(復興まちづくりに伴うかさ上げや移転費の残り70億円は公的資金を活用して自治体などが負担)、被災した線路や駅舎を復旧させ、10年間の赤字補填分などとして5億円を負担し、当区間の運行事業を三陸鉄道に、線路などの鉄道施設を三陸鉄道と沿線4市町にそれぞれ無償で譲渡、経営移管する(運営形態は三陸鉄道の南北各リアス線と同様、運行と施設保有を分ける「上下分離方式」となる)案を示した。JR東日本によると、南北で分断されている三陸鉄道の2路線がつながり一体運営することで、地域密着型でコンパクトな経営を行い、持続可能性の高い運営形態を実現できるとしている。一方、この案に対して、赤字路線を引き継ぐことで新たな財政負担を抱えることになる山田町と大槌町は慎重な態度をとった。 鉄路での復旧が明言されたことにより、宮古市は八木沢地区(磯鶏駅 - 津軽石駅間)への新駅(八木沢・宮古短大駅)設置案を示した。ただし、あくまでも経営分離案とは切り離して可能性を模索するとしている。 2014年7月には岩手県が、高台などを通過しているため震災による被害が比較的軽微であった宮古駅 - 豊間根駅間および鵜住居駅 - 釜石駅間を優先して復旧させるようJR東日本と協議をすすめる方針であると明らかになった。 また、岩手県とJR東日本は7月に同区間の現地調査を実施。JRは現状復旧費140億円の負担方針は既に示していたが、被災を免れた区間(全体の約8割の46キロ)についても、全線の9割強を三陸鉄道と同等の太くて高規格の新しいレールに交換し、木製枕木をコンクリート製に交換、さびた橋の塗装、トンネルの修繕などを実施する方針を示した(費用は非公表)。 同年8月7日の山田線復興調整会議において、岩手県と三陸12市町村は、 関係自治体の負担を避けつつ早期鉄道復旧を目指す 三陸鉄道による山田線の運営を「有力な選択肢」として、JRとの詰めの協議を急ぐ という2点を確認。岩手県はその後、JR東日本に、 設備更新時などの費用補填 三陸鉄道が求める水準への鉄道施設の強化 復旧後の経営を安定させるのに十分な赤字補填 復旧後一定期間の運賃をJR運賃と同額にする差額負担 の4点を要請、同時に、国にも一定の支援を求めることとなった。 同年11月25日、JR東日本と交渉してきた県は、盛岡市で開いた首長会議において沿岸12市町村長らに、JR東日本から、 一時金として当初の5億円から大きく上積みした30億円を負担する(30億円は運賃の上昇を抑える原資や今後の災害時に生じる施設更新費用などにも充てることを想定し、活用法は市町村で検討) 車両を無償譲渡する 軌道を強化する 検修庫・施設管理拠点を整備する 人的にも支援する 観光客誘致などで協力する、 などの提案があったことを報告。12市町村は議会や住民に説明し、県と市町村は12月議会などを経て年内に改めて会議を開き、受け入れるかどうかを最終決定することとなった。山本正徳宮古市長、野田武則釜石市長、またこれまで負担額を懸念していた佐藤信逸山田町長、碇川豊大槌町長も、12月上旬に相次いで、移管案を受け入れる旨、前向きな見解を表明。12月24日、達増拓也岩手県知事、沿岸12市町村長、望月正彦三陸鉄道社長らが盛岡市で開かれた会議にて、移管受け入れについては合意(JR東日本からの移管協力金30億円の使途については継続協議)、2015年の年明けにも基本合意を結ぶこととなった。これを受けて、12月26日、達増拓也岩手県知事と山本正徳宮古市市長が東京都内で冨田哲郎JR東日本社長と会談し、三陸鉄道への移管を受け入れる方針を伝えた。 不通区間の復旧工事は2015年3月7日に着工した。復旧費用210億円のうちJR東日本が140億円を負担し、残りの70億円を復興交付金から支出、全線復旧は2018年度の見込みになることが発表された。当初計画では2016年開催の希望郷いわて国体までに宮古駅 - 豊間根駅間および鵜住居駅 - 釜石駅間を先行して復旧させて三陸鉄道の路線として開業する予定であったが、岩手県や沿線自治体は、部分復旧した場合CTC未整備などにより安全上に問題があるとして、全線一括での復旧を要請することとし、2015年7月31日には全線一括復旧を基本方針とする協定書が締結された。 三陸鉄道への移管区間の路線名については「三陸鉄道リアス線」とする計画であるが、現在の北リアス線と南リアス線の区間についても移管区間と同じく「リアス線」と路線名を改称して統一することを検討、2017年12月25日の同社取締役会で正式に「リアス線」に統一することが決定した。また、山田線の釜石-宮古間については、新設予定の「宮古短大」「払川」を除き、現在の駅名を使用することとした。その一方でJR東日本の路線としては陸中山田駅などがある山田町を通らなくなることとなるが、山田線として残存する区間の正式路線名の改称については、2017年11月9日現在「名称は白紙」(=未定)と同社より公式に発表されている。 2018年7月18日までに同区間の復旧工事のうち、建築工事が全て完了し、同区間のレールが全線で締結され、宮古 - 釜石間のレールが全線で繋がった。これを受けて、建築物の強度確認のために、同年8月21日からディーゼル機関車による試運転が順次実施された。その後、11月には完成した駅舎の見学会を実施した。 2019年に入ってからは移管に向けた準備が本格化し、同年1月28日から三陸鉄道の車両と乗務員による試運転、訓練運転が開始された。1月31日には移管区間の事業の実施主体(第一種鉄道事業者)のJR東日本から三陸鉄道への変更などを定めた鉄道事業再構築実施計画が地域公共交通活性化再生法に基づき認定された。 三陸鉄道は、宮古 - 釜石間の運行を2019年3月23日に開始した。
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