ペルヨージナン化合物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/17 09:07 UTC 版)
「超原子価ヨウ素化合物」の記事における「ペルヨージナン化合物」の解説
ペルヨージナン (英: periodinane) は、ヨウ素(V)を含む化合物の慣用名である。超原子価ヨウ素の概念は1969年に J.J. Musher によって確立された。超原子価化合物中の過剰な電子に対応するため、電子不足化合物で見られる三中心二電子結合に類似した三中心四電子結合が導入された。そのような1本の結合がヨウ素(III)化合物に、2本の結合がヨウ素(V)化合物に存在する。 最初の超原子価ヨウ素化合物、(ジクロロヨード)ベンゼン C6H5Cl2I は、冷却したヨードベンゼンのクロロホルム溶液に塩素を通じることで、1886年に Conrad Willgerodt によって合成された。 C 6 H 5 I + Cl 2 ⟶ C 6 H 5 ICl 2 {\displaystyle {\ce {C6H5I + Cl2 -> C6H5ICl2}}} ジアリールクロロヨーダンのようなλ3-ヨーダンは、2対の孤立電子対と1つのフェニル基がエカトリアル位、クロロ基と1つのフェニル基がアピカル位を占めるアピコフィリシティーを示す擬三方両錐形構造をもつ。デス・マーチン・ペルヨージナンのようなλ5-ヨーダンは、フェニル基がアピカル位、他の4つのヘテロ原子が底面を占めた四角錐形構造をもつ。 過酢酸や酢酸とヨードベンゼンから(ジアセトキシヨード)ベンゼンを合成する古典的な製法がある。 C 6 H 5 I + CH 3 COOH ⟶ C 6 H 5 I ( OOCCH 3 ) 2 {\displaystyle {\ce {C6H5I + CH3COOH-> C6H5I(OOCCH3)2}}} フェニルヨウ素ビス(トリフルオロアセタート)、PIFA または(ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード)ベンゼンは、トリフルオロ酢酸に関連した化合物である。 (ジアセトキシヨード)ベンゼン、PIDA は、酸化剤として使われる有機試薬である。これはグリコールを開裂させるのに適している。また、遷移金属を用いたC-H活性化反応に広く用いられている。 このアセタートは水によって加水分解されてヨードキシベンゼン C6H5IO2 を生じる。この化合物は初め Willgerodt により、ヨードシルベンゼンを水蒸気蒸留する際に起こる不均化によって合成された。 2 PhIO → PhIO2 + PhI これは酸化剤として知られている。 ヨードシルベンゼンは、実際は化学式が (C6H5IO)n と表されるポリマーで、水酸化ナトリウムによって(ジアセトキシヨード)ベンゼンを加水分解することにより調製される。ヨードシルベンゼンは優れた酸素原子供与体として、典型元素化合物やアルケンの酸化反応、および他の三価の超原子価ヨウ素化合物の合成前駆体として広く用いられているほか、生物有機化学の分野でも酸化酵素の反応機構研究に用いられている。 デス・マーチン・ペルヨージナンは、すでに存在する別の強力な酸化剤2-ヨードキシ安息香酸(IBX)を改良したものである。IBXは2-ヨード安息香酸と臭素酸カリウム、硫酸から合成される。IBXはほとんどの溶剤に不溶性なのに対して、IBXと無水酢酸から合成されるデス・マーチン・ペルヨージナンは典型的な有機溶媒に対して溶解性が高い。 デス・マーチン・ペルヨージナンによる酸化機構は通常、配位子交換反応とその後の還元的脱離からなる。
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