ディストピア小説
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「フィクションにおけるユートピアとディストピア」の記事における「ディストピア小説」の解説
詳細は「ディストピア」を参照 ディストピアは大規模な貧困、国民の不信や疑念、警察国家、弾圧などの作者のエートスに完全に反する設定に焦点が当てられた社会である。ほとんどのディストピア小説の作者は、しばしば実社会にある類似した問題に準えて、作中で物事がそうなってしまった理由を少なくとも1つは探求している。ディストピア文学は「それ以外のところでは疑問の余地がない、もしくは当然で避けられないと受け止められてしまう問題のある社会的・政治的な慣習に斬新な見方を示す」ために用いられる。 ディストピアはたいてい現代社会の諸要素に基づいた予想により描かれるようなもので、これは現実の社会にある政治的な課題に対する警告と見ることができる。ロシアの作家エヴゲーニイ・ザミャーチンは、1921に出版した自身の著作『われら』の中で、社会が完全に論理に基づき、機械システムに倣って作られるポスト・アポカリプス的な未来を予測した。イギリスの作家ジョージ・オーウェルが、終わりのない戦争状態にあり、住民はプロパガンダによって制御されているオセアニアを舞台とした小説『1984年』(Nineteen Eighty-Four)を執筆する際、ザミャーチンの『われら』から影響を受けた。『1984年』の中では、ビッグ・ブラザーや二分間憎悪の日課により、自己検閲の風潮があらゆるところに行き渡っている。イギリスの著作家オルダス・ハクスリーの小説『すばらしい新世界』(Brave New World)はユートピア小説のパロディとして始まっており、強制的に納得させられ5つのカーストに分けられた人々が暮らす、産業が栄えた世界に焦点を当てている。もう一人のディストピア文学の大立者として、イギリスの著作家ハーバート・ジョージ・ウェルズが挙げられるが、ウェルズが1895年に出版した小説『タイム・マシン』(The Time Machine)もまた広くディストピア文学のプロトタイプとして考えられている。 1962年に出版されたイギリスの小説家アンソニー・バージェスの小説『時計じかけのオレンジ』(A Clockwork Orange)は、若者の間で過激な暴力行為が蔓延する未来のイングランドを舞台にしていて、気まぐれに主人公の性格を変えようとする国家で主人公が経験することについて詳述している。カナダの作家マーガレット・アトウッドの小説『侍女の物語』(The Handmaid's Tale)では、全体主義的な神権政治によって支配された未来のアメリカが描かれていて、そこでは女性の権利が剥奪されている。 ヤングアダルト向けのディストピア小説として、アメリカの小説家スーザン・コリンズの『ハンガー・ゲーム』(The Hunger Games)シリーズ、アメリカの作家ヴェロニカ・ロスの『ダイバージェント』(Divergent)シリーズ、アメリカの小説家ジェームズ・ダシュナーの『メイズ・ランナー』(The Maze Runner)、アメリカのSF作家スコット・ウエスターフェルドの『アグリーズ』(Uglies)シリーズなどが挙げられる。
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ディストピア小説
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「ブアレム・サンサル」の記事における「ディストピア小説」の解説
2015年1月7日、イスラム化する欧州を描いたミシェル・ウエルベックのディストピア小説『服従』が刊行された日の朝、奇しくもシャルリー・エブド襲撃事件が起こった。このときサンサルは、後に『服従』のさらにその先を描いたとされる『2084 世界の終わり』を執筆していた。本書は同年8月に発表され、10月29日にアカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞した。パリ同時多発テロ事件が起こったのはこの2週間後のことである。サンサルはこれまでの実話・歴史的事実に基づく作品から一転して、ジョージ・オーウェルの『1984年』の100年後の世界、「大聖戦」の核爆弾で滅ぼされた後の世界、偉大な神ヨラーとその忠実な代理人アビを信奉する宗教国家アビスタンを描き、イスラム原理主義とその全体主義を批判した。 パリ同時多発テロ事件の直後に次のディストピア小説の執筆に取りかかり、2018年に『エアリンゲン列車』として発表した。得体の知れない侵略者に支配されたドイツの一都市の歴史を通して、テロリズムによって荒廃した世界を描いたこの作品は、難民危機とイスラム原理主義の勢力拡大に引き裂かれた欧州社会の近未来像を示している。
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