キリスト教新宗派と千年王国思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 10:18 UTC 版)
「心霊主義」の記事における「キリスト教新宗派と千年王国思想」の解説
心霊主義は、1840年代のニューヨーク州西部「焼き尽くされた地域(英語版)」と呼ばれた場所で見られた。この地は、エリー運河開通に伴う人口移動によりキリスト教の信仰復興運動、いわゆる第二の覚醒、第二次大覚醒の影響を強く受けた土地である。ミラー派(英語版)やモルモン教、ユートピア的生活共同体を形成し、従来の社会制度に疑問をもち独身主義をとったシェイカー (キリスト教)(英語版)、イギリスでシェイカーの母体となりその多くがニューヨークに移住したクエーカーといったキリスト教の新しい宗派が栄え、それらの多くが千年王国思想を持っていたと言われている。千年王国思想とは、かいつまんで言うとイエス・キリストがもう一度復活し、それからの千年間人々が幸福に生きる世界が実現する(千年王国が到来する)という信仰で、これは新約聖書「ヨハネの黙示録」第20章に基づくものである。 なお、千年王国思想は「終末論」(eschatology)から生まれたため、両者のつながりは大きい。「ヨハネの黙示録」では、旧来の時(アイオーン)が終了する前に、救世主(メシア)に対するサターン(あるいは終わりの日の反キリスト)の最後の闘いが挑まれ、その戦いの後に新アイオーンを意味する千年王国がくるとされた。 19世紀前半に千年王国思想を信仰した人々は、千年王国がこの世に現れるまでに現世をできるだけ改革しておくことが、千年王国を待つ人間の義務だと考えた。そのため、千年王国思想を信じる様々な人々は、社会矛盾の克服を目指して奴隷制廃止や女性の地位向上などの社会改革思想を共有し活動を行った。千年王国思想を持っていたのは、ユートピア的生活共同体を形成したグループや心霊主義者(スピリチュアリスト)であった。ユートピア的生活共同体のメンバーが同時に心霊主義を信仰していたり、また、千年王国思想を持つキリスト教の宗派に属する人が心霊主義も信仰するということがあった。 ニューヨークの新宗派では、神(聖霊)や天使と直接コミュニケーションが可能であると考えられていた。またカトリックでは洗礼を受ける前に死んだ幼児は地獄(辺獄)に落ちるとされたが、新宗派では神はこのような残酷な振る舞いをすることはないと考えられていた。シェイカーのニスクユナ共同体では、ハイズヴィル事件の10年ほど前の1837年に、心霊主義に類する現象が起きている。集会の踊りの最中に少女たちが気を失って倒れ、回復してから天使と語り合った、天上の世界を旅したと語った。この現象は大人にまで広がり、シェイカーの始祖アン・リーの霊と交信する「道具」(心霊主義の霊媒に当たる)という役割ができ、アン・リーだけでなく、亡きシェイカーの指導者たちの霊と「道具」を介して交流するようになった。この事象は10年ほど続き、ハイズヴィル事件と前後して終わった。
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