カートカン−紙製飲料容器
カートカン(カートンcarton:厚紙、ボール紙と缶を組み合わせた造語)は、環境問題先進国のヨーロッパで開発されたシステム。凸版印刷がEP-PAK(注参照)技術をもとに環境対応型パッケージとして、東南アジアと日本での独占販売権を得て、1996年に初めて導入しました。2006年度の出荷本数は1億6000万本。ここ数年は年率6から7%の成長率を維持しています。
従来の長期常温保存可能な紙製飲料容器は、内側にアルミを貼ることで内容物を保護しているため、電子レンジで温めることができずリサイクルも容易ではありませんでした。カートカンは、無菌充填包装という充填方式を採用しています。この方式は、他の加熱殺菌方式に比べ加熱時間が短いため、内容物が持つ本来の味や香り・栄養分などを損なわないといったメリットがあります。
また、容器内のバリア層に採用している特殊バリアフィルム(GLフィルム)は酸素や水蒸気をほとんど通さないため、内容物の劣化を防ぎ、品質を損なうことなく常温保存や長期保存が可能です。おいしさを損なわず内容物の劣化を長期間抑えることが出来るだけでなく、電子レンジを使用することもでき、飲んだ後は牛乳パックと同様にトイレットペーパーにリサイクルが可能になりました。
さらに、受託充填方式システムを導入しているため、設備投資のリスクを負うことなくカートカンを採用することができ、飲料メーカーは消費者ニーズに応え、新たな商品を効率よく市場に送り出すことができます。
カートカンの原材料となる紙は、間伐材を含んだ国産材を30%以上使用しています。間伐を行うことによってわが国の森林が育成され、CO2削減、地球温暖化防止にも貢献できるというわけです。
林野庁をはじめ、カートカンを導入している約40の関係団体や企業の賛同を募り「森を育む紙製飲料容器普及協議会(もりかみ協議会)」が2004年の4月に設立されました。カートカンを普及させることで、国産材の利用を促進し、社会貢献を行うことが目的ですが、林野庁が推進する「木づかい運動:間伐材をはじめとする国産材の利用促進により国内の森林整備を進める運動」にも賛同しています。
間伐材マークを認証取得しているカートカンはその実践商品といえ、その売り上げの一部は「緑の募金」に寄付されています。私たち消費者にしてみれば、ジュースを買うだけでいつのまにか森林保護をサポートできる仕組みといえるでしょう。
カートカンは紙であることから様々な加工適性があり、美粧性も抜群です。金属缶と同様の形状と強度を紙で実現しているため、軽量でありながら丈夫で、流通段階でも破損しにくいので通信販売などにも適しています。飲料メーカーの採用が加速するなか、今後は食品包装への展開なども期待されます。
地球環境にも配慮した人に優しいカートカン。この夏、贈り物などにカートカンの清涼飲料を贈れば、受け取る方も涼やかな気持ちになるのでは。
注:EP−PAKは、常温流通・保存が可能な液体用紙容器。内容物の浸透を完全にシャットアウトする構造と軽量化、高いスペース効率を実現。バリア層としてアルミ箔とGLフィルムを選択でき、浸透性の高い商品はもちろん、酸度の高い商品にも適する。清酒、食酢、しょうゆ、食用油、ワイン、調味料などの飲料・食品分野で広く利用されている。
(掲載日:2007/05/09)
カートカン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/30 16:47 UTC 版)
カートカン(英独:cartocan)とは、ドイツの製本機器会社ミヒャエル・ヘラフ(Michael Hörauf)がフィンランドの製紙会社UPMキュンメネ(UPM-kymmene)と共同開発した紙製円柱容器のこと。厳密には、紙製円柱容器に内容物が充填された状態の製品を指す。
- 1 カートカンとは
- 2 カートカンの概要
固有名詞の分類
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