エピソード#02 六壁坂
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「岸辺露伴は動かない」の記事における「エピソード#02 六壁坂」の解説
『ジャンプスクエア』2008年1月号に、創刊記念特別読み切り第2弾として掲載された61ページの短編作品。連載当時のタイトルは『岸辺露伴は動かない 〜六壁坂〜』であったが、本短編集の刊行時にエピソード2となった。英題は『Mutsu-kabe hill』。 同誌掲載のインタビューで荒木飛呂彦はこの作品について、今作の10年前に描いた『エピソード16:懺悔室』をシリーズとして何作か描きたいと考えており、『ジャンプスクエア』から短編の依頼が来た際、そのアイデアがあったことからこの話になったと説明している。 『六壁坂』(むつかべ ざか)のタイトルについて、荒木は「それにしても、『六壁坂』というネーミングはなぜ『六壁坂』にしたのだろうか?全然記憶が無いんです。スミマセン。本当にヤバイ。」と述べている。 2009年10月23日に発売された『ジャンプSQ.M(ジャンプスクエア マスターピース)』Vol.002へ初出時同時掲載のインタビューを再編集したものと共に再掲載された。 あらすじ 露伴は読み切りの打ち合わせにきた漫画編集者の貝森稔に原稿料の前借りを申し出る。妖怪伝説の漫画を描くために取材を行っていたところ、その土地に開発業者がリゾート道路を通そうとしていたため、周囲の山を6つ買って阻止したらリゾート計画で高騰していた地価が暴落、破産したというのだ。あまりの内容に貝森は呆気にとられるが露伴は「ちゃんといたんだから取材の価値は十分にあった」「『六壁坂』の妖怪は今もそこにいる」と続け、彼が取材で訪れた六壁坂村で数年前に起こったある事件と取材時に起きたある出来事を語り出す。 登場人物 岸辺 露伴(きしべ ろはん) 声 - 櫻井孝宏 / 演 - 高橋一生 スタンド名:ヘブンズ・ドアー(天国の扉) 杜王町に住む人気漫画家。27歳。デビュー11年目。作品のリアリティを何よりも重要視しており、妖怪伝説の取材のためだけに山を6つ買い、破産した。借金こそしていないものの財産も家も失い、現在はド・スタールの画集だけを所持して広瀬康一の家に厄介になっている。 読み切り作品の打ち合わせの際、貝森に原稿料の前借りを相談し破産に至った経緯と取材時に起こった出来事を語る。 貝森 稔(かいがもり みのる) 声 - 茂木たかまさ 漫画編集者。23歳。入社1年目で既婚子供無し。61ページの読み切りの打ち合わせをするために露伴のもとを訪れるが、そこで露伴に原稿料の前借りを相談される。 小林 玉美(こばやし たまみ)、音石 明(おといし あきら) 声 - 鶴岡聡、森久保祥太郎 露伴にサインをねだりに来た2人組。両名共に『ダイヤモンドは砕けない』に登場している。そちらでは玉美は露伴と面識があるが、本作では初対面のような態度をとっている。 なお、テレビドラマ版では本来上述の3名が登場するシーンは『ザ・ラン』の冒頭部分に組み込まれているが、稔の登場シーンは泉京香が兼任、玉美・音石の2名は少年に置き換えられている。 大郷 楠宝子(おおさと なおこ) 声 - 種﨑敦美 / 演 - 内田理央 六壁坂村で300年続く味噌作りで成功した一族の一人娘。庭師の釜房郡平と関係を持っていたが、大学卒業後に許嫁との結婚することが決まっていたため、郡平に対し手切れ金とともに別れ話を切り出すが、ふとした拍子に郡平を死なせてしまう。しかし、その事実を隠して修一と結婚、子供を一男一女の2人儲ける。 取材に訪れた露伴に記憶を読まれ、露伴が釜房郡平の存在を知るきっかけとなった。 釜房 郡平(かまふさ ぐんぺい) 声 - 間島淳司 / 演 - 渡辺大知 大郷家で働くバイトの庭師。そこの一人娘、楠宝子と関係を持っていたが別れ話を切り出される。それでも食い下がるが楠宝子に突き飛ばされ、その拍子にゴルフクラブが後頭部に刺さって死亡する。遺体は楠宝子の寝室のクローゼット天井裏に隠され、その後も楠宝子によって管理され続けた。 楠宝子の記憶を読み、その存在を知った露伴は「何としても自分の目で見てみたい」と考えるが、直後に楠宝子の娘に取り憑かれそうになったことで彼がどういう存在なのかを理解したため、実際には会うことなく取材を終えた。 高窓 修一(たかまど しゅういち) 声 - 益山武明 / 演 - 中島歩 楠宝子の許嫁。楠宝子の大学卒業後に結婚し、大郷家の養子に入る。 大郷 桐子(おおさと きりこ) 声 - 高田憂希 / 演 - 白鳥玉季 楠宝子の娘。楠宝子の記憶から釜房郡平の存在を知り、大郷家の周囲を嗅ぎ回っていた露伴に声をかける。その直後につまずいて転び、石に頭をぶつけて死亡するが、露伴は彼女が郡平と楠宝子の間にできた子供で、郡平と同じく自分に取り憑こうとしていることを察知し、身体に刻まれた「人生の体験」が完全に消える前に自分に関する記憶を消し、さらに自分のことに気付かないようにしたことで難を逃れ、取り憑くことに失敗した彼女は一瞬妖怪の本性を見せた後、何事もなかったかのように生き返った。 大郷 櫂(おおさと かい) 演 - 吉田奏佑 楠宝子の息子。物語のラストに1コマだけ登場しており、郡平と同じく「SBR」とプリントされたTシャツを身に着け、将来の夢を庭師と語るなど、こちらも郡平との間にできた子供であるかのような描写がなされている。OVAには登場しない。 東方仗助(ひがしかた じょうすけ)、広瀬 康一(ひろせ こういち)、虹村 億泰(にじむら おくやす)、支倉未起隆(はぜくら みきたか) 声 - 梶裕貴(康一)、高木渉(億泰)、加瀬康之(未起隆) 『ダイヤモンドは砕けない』の主人公とその友人たち。OVAのみの登場。 物語のラストで露伴が六壁坂村での体験談を貝森にしていた際、いつのまにか一緒に話を聞いており、未起隆は妖怪六壁坂について「オリオン星系にも似たような生物がいた」と述べている。 用語 妖怪六壁坂(ようかい むつかべざか) 妖怪伝説の取材で訪れた六壁坂村で露伴が発見・命名した妖怪。 普段の外見は人間と全く同じだが、愛する者の前で些細なことをきっかけに死亡し、その死体を管理しなければ相手が社会的に破滅する状況に追い込む。遺体は死亡後も血が止まることなく流れ続けたり、いつまでも腐らない、霧吹きで水を吹きかけると一瞬だけ(OVAではしばらくの間)生前の姿に戻るなど、明らかに普通とは違う特徴が存在している他、取り憑こうとした相手の行動によっては顔から無数の触手のようなものが垂れ下がった妖怪の本性を見せることもある。また、遺体には生殖能力も残っており、管理する相手の間に子供が生まれた場合、妖怪の特性は子供に受け継がれる。 その生態から露伴は「子孫だけを残すのを目的とした妖怪」と評し、「妖怪というよりも、有史以前よりこの地に棲息している生物と呼んでもいいかもしれない」と述べている。
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