アラビア錬金術と水蒸気蒸留法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 02:14 UTC 版)
「アロマテラピー」の記事における「アラビア錬金術と水蒸気蒸留法」の解説
「ユナニ医学」、「イスラーム黄金時代」、「錬金術」、および「キミア」も参照 ヒポクラテスに代表される古代ギリシャの医学は、ローマ時代にガレノスによってまとめられた。蒸留技術は、1世紀のアレキサンドリアの錬金術師たちによって改良され、古代ローマでは動物性油脂に精油成分を溶かし込んだ軟膏なども用いられた。 イスラーム圏ではギリシャ・ローマの医学をベースにユナニ医学が発達し、錬金術の発展で化学が進歩した。中世イスラーム世界の錬金術と化学(英語版)では、抽出・蒸留・発酵などの手法が薬物製造に結び付けられ、薬学はひとつの科学としての基礎を持った。陶器、ガラスの製造も高度な技術が発展し、蒸留など薬物製造に用いる器具が作られた。イスラーム圏の錬金術師・薬剤師たちによって、香気成分抽出法(英語版)のひとつである水蒸気蒸留法が確立されたといわれ、蒸留装置アレンビックの考案・改良者として哲学者・錬金術師ジャービル・イブン=ハイヤーン(721年? - 815年?)の名が知られるが、この装置は「らんびき」の名で日本まで伝わっている。(アロマテラピーや香水の書籍には、イブン・スィーナー(980年頃-1037年頃、ラテン語名アヴィセンナ)が水蒸気蒸留法を確立したとするものもあるが、水蒸気蒸留によるバラ水(芳香蒸留水)の生産は彼が生きた時代以前から一大産業であった。蒸留の歴史において、水蒸気蒸留の発明者または装置の改良者としてイブン・スィーナーの名前が挙がることはない。) アラビア圏では、芳香蒸留水(ハイドロゾル)や精油が製造され、治療に用いられた。医学の大家であるイブン・スィーナーの『医学典範』(al-Qānūn fī al-Ṭibb)には、バラ精油を用いた治療法が記されており、香油や香膏を使ったマッサージについても説明されている。 水蒸気蒸留法やその器具についての最も古い記述は、医師・薬剤師・植物学者・科学者であったイブン・アルバイタール(1188年 - 1248年)の『薬と栄養全書』(Kitab al-Jami fi al-Adwiya al-Mufrada)である。製造された精油は香料・香油として用いられたり、高価な薬に混ぜて使われた。またこの本には、バラ水やオレンジ水といった芳香蒸留水について、詳細な化学情報が説明されている。
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