アフリカ横断民族学調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/13 09:29 UTC 版)
「ミシェル・レリス」の記事における「アフリカ横断民族学調査」の解説
上述のように、民族学者マルセル・グリオールは『ドキュマン』誌の編集に関わっていたが、レリスが彼と直接知り合ったのはリヴィエールを介してである。「民族学を学ぶ文学者」として紹介されたレリスは、グリオールが率いるダカール=ジブチ調査団に秘書兼文書係として参加することになった。これは、1931年からアフリカ大陸西端のダカールから東端のジブチまで横断しながら民族学の調査を行い、トロカデロ民族学博物館のためのオブジェや資料を収集することが目的であった。一団は5月にボルドー港を出港してダカールに向かい、10月から11月にかけてサンガ(フランス語版)(現マリ共和国)のドゴン族の秘密言語について、さらに翌1932年の7月から11月にかけてゴンダル(現エチオピア)のザール(フランス語版)信仰、特に憑依現象について調査を行った。これらの調査は、『サンガのドゴン族の秘密言語』(1948年刊行)、『ゴンダルのエチオピア人における憑依とその演劇的諸相』(『新フランス評論』誌1938年7月号掲載の後、1958年刊行。邦訳『日常生活の中の聖なるもの(ミシェル・レリスの作品4)』所収)に結実することになる。 『サンガのドゴン族の秘密言語』は、レリスの学位論文であり、高等研究実習院で民族学の学位を取得するために、イスラーム神秘主義を専門とする宗教学者で指導教官のルイ・マシニョン(フランス語版) に提出されたが、書き直しを命じられて再提出し、1938年に受理された(なお、これ以前の1935年から37年にかけて文学の学士号(民族学、社会学および宗教史専門)を受け、アムハラ語の資格を取得している)。ドゴン族の秘密言語とは、「ドゴンの秘密結社によって伝承されている聖なる言葉」であり、異界との交流や儀式、神話の伝承にのみ用いられる特殊な言語であって、日常言語とは異なる。語彙数はわずか300語程度だが、それだけに一つの言葉に込められる意味が深く、レリスはこれを「真の詩」と見なしている。 一方、エチオピアの民間信仰であるザールは、患者(主に女性)に憑依したザールの精霊を、音楽や供犠によってなだめる儀式を中心とし、この儀式を執り行うのも女性、特に黒人女性である。レリスが惹かれたのは、表題が示すとおり、憑依現象そのものの美的・演劇的側面であった。
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