乙類(おつるい)
主としてデンプン質原料を発酵させ、これを単式蒸留機で蒸留したもので、アルコール度数が45度以下、エキス分が2%未満の蒸留酒。酒税法でいう焼酎乙類の別称。製造法によって、醪取(もろみとり)焼酎と粕取(かすとり)焼酎に大別される。また、使用原料名を冠して、コメ焼酎・ムギ焼酎・イモ焼酎などとも呼ばれる。わが国の伝統的な蒸留酒であり、主として九州以南の地域でつくられ、愛飲されてきたが、最近では全国的に生産され、かつ消費地も全国に広まっている。わが国の焼酎は、東南アジア、特に当時の琉球王朝と交易のあった暹羅(しゃむろ)国(タイ)から沖縄に伝わったというのが定説であり、沖縄から庵美諸島(当時の琉球領内)を経て鹿児島地方に上陸し、さらに北上して球磨地方を宮崎地方へと伝播(でんぱ)したといわれる。近年になってからの体験的考証として、戦前にタイを訪れた沖縄の歴史家東恩納寛惇(ひがおんなかんじゅん)の『泡盛雑考』に、当時タイでつくられていた「ラオ・ロン」と称するコメの蒸留酒の風味が沖縄の泡盛に実によく似ていたこと、その醸造に使われていたかめや蒸留機なども泡盛醸造のそれと類似していたとする報告がみられ、その伝来が裏づけられる。焼酎が沖縄でつくられるようになったのは一五世紀半ばごろであろうといわれ、以後200年くらいの間に南九州全域に定着したとされている。本格焼酎は発酵醪をごく簡単な構造の単式蒸留機で蒸留するために、アルコールのほかに様々な香味成分が製品に回収される。また、原料としてはそれぞれの地域で収穫される農作物が使われ、各地域に残る伝統的な製法でつくられるため、その風味は非常にバラエティーに富み、かつ地域特性豊かな酒いえる。これらの特性を充分に生かした味わい方が推奨される。
- >> 「乙類」を含む用語の索引
- 乙類のページへのリンク