『エバーグレーズ: 草の川』
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「マージョリー・ストーンマン・ダグラス」の記事における「『エバーグレーズ: 草の川』」の解説
1940年代初期、マージョリーはある出版者から、マイアミ川について書くことで、アメリカの川シリーズに寄稿するよう要請を受けた。マージョリーはマイアミ川を「長さ1インチ」と呼んであまり興味を示さなかったが、その調査を行っているとエバーグレーズに対する興味が増し、その出版者に代案としてエバーグレーズについて書くことを認めてもらえるよう説得した。エバーグレーズと南フロリダの生態系と歴史については科学的な知識がほとんど記録されていなかったので、その調査に5年間を費やした。南フロリダの清水源が全てビスケイン帯水層であり、それがエバーグレーズによって満たされていることを発見した地質学者のジェラルド・G・パーカーと時を過ごした。パーカーは、マージョリーがエバーグレーズの基本を掴もうとしているときに、オキーチョビー湖から流れ出る清水を草の川と呼んでも問題ないかを尋ねたときに、その本の題名がそれ以降エバーグレーズのニックネームになると請け合った。 『エバーグレーズ: 草の川』は1947年に出版され、発売後1か月で初版が売り切れた。この本の第1行は、「世界には他のエバーグレーズは無い」とされ、「エバーグレーズについて書かれた最も有名な文章」と呼ばれてきた。この声明はエバーグレーズ国立公園ウェブサイトを訪れる人が最初に目にするものである。マージョリーはエバーグレーズを保護する価値のある川を囲む生態系であり、必然的に南フロリダの住民と文化に結びつけられると捉えていた。「11時」とした最終章では差し迫っているその消失を次のように説明した。 牛飼いの野焼きの火が制御できずに荒れ狂っている。サトウキビ畑の野火はパチパチ、シューシューと音を立ててソーグラスの中に広がり、重くクリーム色の紫の影をもつ煙の波と柱と波打つ山になる。グレイズの上を飛ぶ訓練機が爆弾すなわちタバコの吸い殻を落とし、乾燥している藪の中心で火が爆発し、あらゆる風の前に競走して暗黒のみを残す。...それで火と戦うことになる運河に水は無く...岩が溜める水は無くなり、あるいはその奇妙な穴や割れ目に縮み落ちてしまっている。 『エバーグレーズ: 草の川』は人々にエバーグレーズを守るよう促し、レイチェル・カーソンが1962年に出版した『沈黙の春』で訴えたDDTの有害さに曝されたことに擬えられた。どちらの著作も「市民や政治家に気付きを与えて行動に移させた動機づけとなるもの」だった。それはフロリダが多くの観光客を受け入れている大きな理由であるとされているように、その影響力は現在でも通用している。「フロリダ・エバーグレーズの苦境について最も確実な言及であり続けている」 この著作は版を重ね、発売以来50万部を売った。オンライン新聞のクリスチャン・サイエンス・モニターは1997年に、「今日、彼女の本は環境関連図書の古典であるだけでなく、環境保護主義者が世界のいかなる場所でも行われた中で最も広範な環境修復プロジェクトとして喝采しているものにとって青写真のように読める」と記していた。エバーグレーズの修復を働きかけたある作家に拠れば、この本の影響について負の面は、彼女の使った隠喩が大きな力を持ったので、エバーグレーズの中の生態系の複雑な編み目を叙述するに正確でないことである。『草の川』という隠喩がその例である。デイビッド・マッカリーは、マージョリーの叙述した「環境体系の複雑さを喜んでいる」にも拘わらず、この本を読んでいない人々が共有するエバーグレーズの一般的概念が彼女の詳細な説明に影を投げかけている。
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