X線天文学 宇宙のX線源

X線天文学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/18 06:06 UTC 版)

宇宙のX線源

宇宙には、銀河団活動銀河中心核(AGN と呼ばれる)のブラックホールから、超新星残骸恒星白色矮星を含む連星系激変星)、中性子星やブラックホールを含む連星系(X線連星)などの銀河系内の天体まで、X線を放出する様々な種類の天体が存在する。太陽系天体の中にもX線を放射するものがある。その中でも注目すべき天体はである。X線で月を撮影すると、月の明るい側は太陽からのX線を反射して明るいのに対し、月の暗い側はその周りの宇宙よりもさらに暗い[1]。これは一見何もないように見える背景宇宙からもX線が放射されているということであり、このX線背景放射は分解されていないX線源からの放射の重ね合わせであると考えられている。

ブラックホールはX線を放射する。これはブラックホールに落ち込む物質が重力エネルギーを得て、事象の地平面に飲み込まれる前にそのエネルギーをX線として放出するためである。ブラックホールに落ち込む物質は角運動量を持っているため、物質は直接落ち込むのではなくブラックホールの周囲を回転する。このためブラックホールの周囲の物質はしばしば降着円盤を形成する。降着円盤の物質は摩擦によって非常に高温になり、X線を放射しながらゆっくりと角運動量を失い、中心天体に向かって落ちて行く。同様の明るい降着円盤は白色矮星や中性子星の周囲にも作られるが、これらの円盤のガスは高密度の母天体表面と大きな速度で衝突するため、これによってさらに余分のエネルギーが放出される。中性子星の場合、ガスの降着速度は光速の数分の一に達する。中性子星や白色矮星の中には、天体の持つ磁場が非常に強いために降着円盤が形成されないものもある。ブラックホールからのX線は非常に短い時間スケールで変光する。この光度変化からブラックホールの大きさに関する情報が得られる。

銀河団は銀河群や個々の銀河など、より小さな単位の物質が合体して作られている。銀河団の物質(銀河、ガス、ダークマター)は銀河団の重力ポテンシャル井戸に落ち込むにつれて運動エネルギーを得る。中心に落ち込むガスは既に銀河団内にあるガスと衝突し、その衝撃波によって107-8 K にまで加熱される。加熱の度合は銀河団の大きさによって変わる。この超高温のガスから熱制動放射によってX線が放出され、それに混じってガスの中の重元素による輝線スペクトルが見られる。銀河団内の銀河同士やダークマターは衝突確率がほとんどない無衝突系になっているため、すぐにビリアル平衡に達して銀河団のポテンシャル井戸の中を軌道運動するようになる。






「X線天文学」の続きの解説一覧




X線天文学と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「X線天文学」の関連用語

X線天文学のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



X線天文学のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのX線天文学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS