鹿児島湾 鹿児島湾の概要

鹿児島湾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/20 09:38 UTC 版)

鹿児島湾(写真左)、湾内北部に桜島が位置する。
鹿児島湾

鹿児島湾の北部、すなわち、霧島市桜島との距離約20㎞を直径とする「姶良カルデラ」は約3万年前の旧石器時代カルデラ噴火でできたものであり[2]、また、その姶良カルデラ内の南部に位置する桜島は1914年大正3年)に「桜島大正大噴火」で鹿児島湾東岸の大隅半島と陸続きとなった[3][4]

海域としては、薩摩半島最南端の長崎鼻と、大隅半島南端部の立目崎を結ぶ直線から北側を指す。

地理

面積1,130km2、南北約80km、東西約20kmのやや蛇行した形状をなし、北から湾奥部、湾中央部、湾口部の3海域に分けられる。湾奥部と湾中央部の間に活火山である桜島を擁する。平均水深は117mと比較的深く海岸付近の傾斜角が大きい椀形の海底地形となっている。海岸線総延長は約330kmあり、そのうち約60%は護岸など何らかの人工的な措置が施されている。

湾奥部

面積250km2、平均水深140m、最大水深206m、南北10-20km、東西約20kmにわたる海域。桜島の北側に位置し姶良カルデラと呼ばれるカルデラ地形を構成する。南部には鹿児島湾唯一の有人島として新島(ただし2014年現在は定住者なし)があり、北部には神造島または隼人三島と総称される辺田小島、弁天島、沖小島がある。

北東部に海底活火山の若尊があり、たぎり(滾り)と呼ばれる火山性噴気活動が確認されている。天降川別府川などの河川が流入する。沿岸の自治体は鹿児島市姶良市霧島市垂水市

西桜島水道(桜島西側水道)

桜島と薩摩半島の間に位置する水深40m、幅1.9kmの水道海峡)。桜島フェリーが西桜島水道の両岸ある鹿児島港桜島港を結んでいる。

湾中央部

面積580km2、平均水深126m、最大水深237m、南北約30km、東西約20kmにわたる海域。海底に阿多北部カルデラと呼ばれるカルデラ地形を構成する。甲突川永田川、神川などの河川が流入する。沿岸の自治体は鹿児島市垂水市鹿屋市錦江町指宿市

湾口部

面積300km2、平均水深80m、南北約20km、東西幅約10kmにわたる海域。知林ヶ島の南側に位置し阿多南部カルデラと呼ばれるカルデラ地形の東側を構成する。薩摩半島側に山川湾が分岐する。雄川などの河川が流入する。沿岸の自治体は指宿市錦江町南大隅町

名称

鹿児島湾は「錦江湾」とも呼ばれており、鹿児島市内には「錦江」の名を含む地名や橋名、学校名、会社名などがある[5]

島津家第18代当主島津家久(忠恒)が詠んだ和歌「浪のおりかくる錦は磯山の梢にさらす花の色かな」が起源になっているとされ、島津久徴の「黒川記」に由来する文を刻んだ石碑が日木山川河口に建立されている[5]。島津久徴の「黒川記」にある「歌中有錦波二字、因此又呼錦江」から『加治木郷土誌』などでは久徴の時代に黒川河口の入江が「錦江」と名付けられたとしているが、「黒川記」の原文からはあくまでも黒川(日木山川)に「錦江」という別称が生じただけで明治時代に入ってから「錦江」が海の呼称に転化したとする説もある[5]

江戸時代末期まで鹿児島湾全体を指す固有名詞は存在せず、地誌類では「入海」や「裏海」、「内海」などの普通名詞を使っていた[5]

1863年(文久3年)の薩英戦争で英国が作製した海図には「KAGOSHIMA BAY」と表記されているほか、同時期のウィリアム・ウィリスの書簡には「The Bay of Kagoshima」の記述がある[5]。1877年(明治10年)5月2日の『鹿児島県日誌第二』には「鹿児島湾」の記述がある[5]

一方、1891年(明治24)年8月の鹿児島新聞の記事には「錦湾」、同年11月の鹿児島毎日新聞の発刊の祝詞に「錦江」の表現がある[5]

地図では「鹿児島湾」と記載しているものが多いが、1960年代から住宅地図や分県地図などでは「鹿児島湾(錦江湾)」と併記するものが表れ、その背景には1955年(昭和30年)の錦江湾国定公園指定が一因になっているともいわれている[5]。1964年(昭和39年)に錦江湾国定公園は屋久島地域の編入により霧島屋久国立公園に名称が変更され、2012年(平成24年)の屋久島地域の分離により霧島錦江湾国立公園へ名称が変更された[1]


  1. ^ 『「高速船なんきゅう6号」は、根占ー指宿間を所要時間20分で運航しておりますが、令和2年3月31日をもって当航路の運航を休止することになりました』[9]
  1. ^ a b c 霧島錦江湾国立公園”. 環境省. 2021年8月25日閲覧。
  2. ^ 長岡信治, 奥野充, 新井房夫「10万~3万年前の姶良カルデラ火山のテフラ層序と噴火史」『地質学雑誌』第107巻第7号、日本地質学会、2001年、432-450頁、CRID 1390282681212167808doi:10.5575/geosoc.107.432ISSN 00167630NAID 110003013194 
    NHK サイエンスZERO 2021年10月3日放送「火山島“西之島” 大噴火は何を語る!?」西之島は今後、カルデラ噴火の可能性も考えられる。その規模は直径約10㎞ほどになると思われる。カルデラ噴火を見た者はいないだけに大変興味深い。日本列島にはカルデラ噴火でできた場所は多く、鹿児島湾北部の桜島を含む直径20㎞にもなるところもその一つである。JAMSTEC 海洋研究開発機構 田村芳彦
  3. ^ 桜島の歴史 国土交通省 九州地方整備局 大隅河川国道事務所
  4. ^ 小林哲夫, 溜池俊彦「桜島火山の噴火史と火山災害の歴史」『第四紀研究』第41巻第4号、日本第四紀学会、2002年、269-278頁、doi:10.4116/jaqua.41.269 
  5. ^ a b c d e f g h 栗林文夫「「錦江湾」の由来について」『黎明館調査研究報告』第21巻、鹿児島県歴史資料センター黎明館、2008年3月、121-133頁、CRID 1390855765215091072doi:10.24484/sitereports.129109-119275ISSN 0913784X2023年9月20日閲覧 
  6. ^ 豊かな海を探る錦江湾鯨類調査 財団法人鹿児島市水族館公社展示課展示第二係(イルカチーム)」(PDF)『市民フォト鹿児島』第119号、2010年12月1日、22-23頁、2019年7月31日閲覧 
  7. ^ 鹿児島県受賞一覧 国土交通省
  8. ^ フェリーなんきゅう”. 2020年10月9日閲覧。
  9. ^ 高速船なんきゅう6号の運航休止について”. 南大隅町 (2020年3月5日). 2020年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月9日閲覧。


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