高オクタン価ガソリン
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オクタン価は異常燃焼の一種であるノッキング(ガソリンと空気の混合気に点火して正常火炎に伝播する前に高温により末端の未燃焼混合気に自己着火してしまう現象)の起こしにくさを示すアンチノッキング性の指標である[1]。自動車の性能の向上によりノックセンサーによって点火時期を制御するシステムが搭載されるようになりノッキング自体は回避できるようになったが、ノッキングを回避するための制御のシステムは走行時のエンジントルクや加速性などに影響があるとされ、オクタン価が高いガソリンを使用することで車両側でのノッキング制御を予め抑えて車両本来の性能を引き出す利点がある[1]。ただし、一部の車種では直噴でリーンバーンを行う関係上、ハイオクガソリンを使用すると「着火しにくさ」が問題となり、燃費や始動性が悪化するという指摘がある[2]。
オクタン価の計測法(RONとMON)の組み合わせや区分は地域ごとに異なる[1]。
製造法
高オクタン価ガソリンは、製油所内の「接触改質装置」と「接触分解装置」という2種類の異なる装置によって別々の特性を持つガソリンが製造され、求められる特性に合わせて混合される。
- 接触改質装置
- 重質ガソリンと水素を原料に、白金系粒状触媒との接触によってオクタン価が高く芳香族を多く含んだガソリンに改質される。
- 収量は80%と比較的良好であり反応中に新たに水素が得られる。このガソリンは高速での燃焼時にオクタン価が高い特性を持つ。
- 接触分解装置
- 減圧蒸留で生み出された重質油を原料に、重質油の長い炭素鎖をシリカ-アルミナ系の粒状触媒との接触によって短く分解し、オクタン価が高くオレフィン分を多く含んだガソリンが作られる。
- 収量は40–50%であまり高くない。このガソリンは低速での燃焼時にオクタン価が高い特性を持つ[3]。
試験法
オクタン価にはリサーチ法オクタン価 (RON) とモータ法オクタン価 (MON) があり、試験では標準化された単気筒のCFRエンジンと可変圧縮比の試験エンジンが用いられるが、エンジン回転数や吸入空気温度など運転条件に違いがある[1]。これらの試験条件の検討は1930年頃から米国のCFR 委員会で始められ、当時付けられた番号からリサーチ法をF-1法、モータ法をF-2法と呼ぶことがある[1]。
リサーチ法オクタン価 (RON) とモータ法オクタン価 (MON) の差をセンシティビティという[1]。
ヨーロッパ規格
ヨーロッパ規格 (EN228) では、レギュラーガソリンのアンチノック性の下限値は91/82.5 (RON/MON) とされており、アンチノック性の下限値が95/85 (RON/MON) の基準を上回るものをプレミアムガソリンという[4]。さらにアンチノック性の下限値が98/88 (RON/MON) の基準を上回るものをスーパープラスという[4]。
ヨーロッパ規格 (EN228) では、リサーチ法オクタン価 (RON) とモータ法オクタン価 (MON) の両方で規定されている[1]。
アメリカ合衆国
米国規格 (ASTM D 4814) では、リサーチ法オクタン価 (RON) とモータ法オクタン価 (MON) の両方で計算されるアンチノックインデックス (RON+MON)/2 の値で規定されている[1]。ヨーロッパや日本などの規格ではオクタン価の高い方と低い方の2つに分けているが、米国規格ではミッドグレードが中間にあり3グレードとなっている[1]。
注釈
- ^ スバルが自社において軽自動車を開発・生産していた時代の正式社名は、富士重工業だった。
- ^ 具体的には、ヴィヴィオRX-RのE型、初代プレオのRS、アールツーのS(2006年11月まで)、アールワンのS(2006年11月まで)がそれにあたる。
- ^ 基本的に、ハイオクを給油しなければならないが、緊急時には、出力、トルク、燃費こそ劣るもののレギュラーを給油してもよほどのことがない限り故障には直結せず、耐久性にも問題はなかったと思われる。
- ^ 例:トヨタ・クラウンの一部グレード
- ^ 全ての高級セダンがハイオク仕様というわけではなく、レギュラーガソリン仕様の車種も存在した[注 4]。
- ^ 具体的には、2019年のトヨタ・マークXの生産終了、2020年のスバル・レガシィ(アウトバックを除く)の日本向け製品の生産終了、2021年のホンダ・レジェンドの生産終了など、21世紀に入ってから、高級セダン市場が次第に冷え込みつつあったこと。
- ^ なお、ハッチバックに拡大すれば、マツダ・MAZDA3ファストバックのSKYACTIV-X搭載車がハイオク仕様である。
- ^ オクタン価#地域による変化も参照。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m 金子タカシ「オクタン価とガソリン品質設計」『日本燃焼学会誌』第54巻第170号、2012年、217-220頁、doi:10.20619/jcombsj.54.170_217。
- ^ 新型レヴォーグを買うと教わる意外な注意書き 令和になって「慣らし運転」復活!?? 国沢光宏、ベストカーWeb、2021年3月2日、2021年7月6日閲覧。
- ^ 化学工業日報社『知っていますか「石油の話」』(改訂第5版)化学工業日報社、1997年2月14日。ISBN 4-87326-235-6。
- ^ a b ロバート・ボッシュ著、小口泰平監修『ボッシュ自動車ハンドブック第2版』シュタールジャパン、2003年、236頁。
- ^ a b 第1節 自動車ガソリン ENEOS
- ^ a b 「ハイオクガソリン、実は混合 「独自開発」のはずが…20年前から各地で」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年6月27日。
- ^ [1] (PDF) 消費者庁プレスリリース、2012年4月19日
- ^ 「偽ハイオク、全国209のGSで…過去5年調査」『読売新聞』読売新聞社、2012年4月25日。オリジナルの2012年4月28日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「「青天のへきれき。ごちゃ混ぜだったなんて」 ハイオク混合 ブランド信じた消費者を裏切り」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年6月27日。
- ^ a b “ENEOS、ハイオク「ヴィーゴ」他社にも供給 5年間「国内で唯一」と宣伝”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2020年8月2日)
- ^ 「消費者軽視の「ハイオク混合」 独自性能うたい20年 こっそり効率化」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年6月27日。
- ^ 「ハイオク不正問題 菅官房長官「問題あれば調査し対応」」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年6月29日。
- ^ 「ハイオク問題 「消費者の誤解招かぬ対応を」 梶山経産相が要請」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年6月30日。
- ^ 「ハイオク「レギュラーと同じ汎用品」 石油連盟会長「品質に差ない」 混合出荷」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年7月17日。
- ^ 「ハイオク混合出荷 「消費者の裏切りにはならない」 石油連盟会長、一問一答」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年7月17日。
- ^ 「ハイオク混合問題、大阪のNPOが消費者庁に再発防止措置を要請」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年3月8日。
- ^ 「ハイオク混合問題 NPO法人がコスモ石油に被害回復を要請」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年10月30日。
- ^ 「怒るスタンド「裏切りだ」 元売りハイオク混合出荷 「『看板外す』という契約は脅し」」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年7月17日。
- ^ “(平成25年7月23日)「ガソリンの取引に関する調査について」” (pdf). 公正取引委員会. 2017年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2004年9月1日閲覧。
- ^ “ガソリンの流通実態に関する調査(ポイント)” (pdf). 公正取引委員会. 2004年9月1日閲覧。
- ^ “中身は同じだった!?【ガチ比較】ガソリンで出力は変わるのか、4社のハイオクをNSR250Rでパワー測定”. ヤングマシンWEB. 内外出版社. 2020年6月29日閲覧。
- ^ 「コスモがハイオク虚偽表示 洗浄添加物なし、10年以上サイトに 景品表示法違反恐れ」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年6月28日。
- ^ 「「使い続けるほどきれいに」は虚偽 消費者に怒り「コスモ一筋だったのに…」 スーパーマグナム」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年6月28日。
- ^ 「ハイオク虚偽宣伝 消費者庁がコスモ石油を調査 景品表示法違反の疑い」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年7月19日。
- ^ 「キグナス、ハイオクを「オクタン価100」と虚偽の宣伝 指摘受けHP修正」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年6月29日。
- ^ a b ハイオクガソリンに関わる一部報道について コスモエネルギーホールディングス、2020年6月30日
- ^ a b ハイオクガソリンに関する報道について (PDF) キグナス石油、2020年7月1日
- ^ “ハイオク需要減少”. 日本経済新聞. 日本経済新聞社 (2017年12月12日). 2023年1月25日閲覧。
- ^ “ハイオク問題「シェア9%」市場縮小は言い訳になるか”. 毎日.jp. 毎日新聞社 (2020年7月31日). 2023年1月25日閲覧。
- 1 高オクタン価ガソリンとは
- 2 高オクタン価ガソリンの概要
- 3 日本産業規格
- 4 脚注
高オクタン価ガソリンと同じ種類の言葉
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