集合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 06:47 UTC 版)
外延性の公理
A, Bを任意の集合とするとき、もし任意の集合Xについて「XがAの要素であるならば、そのときに限りXはBの要素である」が成り立つならば、AとBは等しい、とする。すなわち、
である。
直感的な説明としては、たとえば、 {1, 3, 5, 7, 9} と { x | x は 10 未満の正の奇数 } は異なる表現だが、どちらも自然数 1, 3, 5, 7, 9 を要素とする集合であるので、等しい集合だとする、ということである。
特別な集合
数学では、1 つも要素を持たないような集合も考える。外延性の原理によれば、このような集合はただ一つしか存在しないので、これを空集合 (英: empty set) といい ∅ で表す。∅ は任意の集合 A の部分集合である。なぜなら、任意の対象 x に対して x ∉ ∅ より x ∈ ∅ ⇒ x ∈ A は真だからである。空集合の他にも決まった記号によって表される集合がいくつかある。日常的には一個だけ要素を持つものは集合とは呼ばれないが、数学ではそれも集合と呼ぶ(英語のsetやフランス語のensembleも日常的な用語では空集合や一個だけの集合に対しては使われない。) :
濃度
有限個の元からなる集合を有限集合 (ゆうげんしゅうごう、英: finite set) と呼び、集合 A の元の個数を #(A), |A|, card(A) などの記号で表すことが多い。有限集合でない集合を無限集合 (むげんしゅうごう、英: infinite set) という。無限集合に対しても「個数」の概念を広げて、濃度 (のうど、英: potency) 、または基数 (きすう、英: cardinal number, 英: cardinality) というものを考える。個数を数える代わりに、ある集合を使って、その元で別の集合をラベル付け (英: indexing; 添字付け) して、一対一の対応がとれるかどうかを調べるのである。そうすると有限集合の濃度はちょうど元の個数で決まるので、ちゃんと無限集合への「個数」の拡張となる概念が定まっていることが確認できる。
無限集合はどれも「無限個」の元を持っているわけだが、どの無限もみな同じというわけではなく、濃度の概念ではたくさんの無限を区別して扱うことになる。たとえば、自然数と有理数が同じ濃度を持つ、自然数と実数は真に異なる濃度を持つといったような事実は数学を学ぶ者にとってよく知られた内容である。同様の事実に、平面 R2 と数直線 R は同じ濃度を持ち、平面を覆いつくす平面充填曲線と呼ばれる不思議な平面曲線が何種類も存在することが述べられる。より次元の高い空間でも同様で、空間を埋め尽くす空間充填曲線が構築される。異なる次元をもつ空間が同じ濃度をもつというのは、次元や濃度が一方が他方を測るようなものではない異なる尺度であることを表しているのである。
注釈
- ^ 定数や変数に対する慣例を踏襲して A, B, ... や X, Y, ... が使われるほか、英語の set, ドイツ語の Menge, フランス語の ensemble の頭文字 S, M, E やその周辺の文字がよく使われる。
- ^ ラテンアルファベット以外にもギリシャ文字を使うこともある。集合の集合を考えるときは、元である集合に大文字を使うことから、筆記体 やドイツ文字 で記したりする。このような入れ子構造は何重にも複雑な形で現われたり、同じものが違った見方をされたりするので、このような文字種の変更を行わないこともよくある。
- ^ 「x が X の元であって」というような断り書きをしない場合にも、実際には「普遍集合」 (英: universal set) あるいは「宇宙」 (英: universe) と呼ばれる、必要な議論を展開することができる程度に十分大きな集合を考え、集合と言えば必ずその普遍集合の部分集合だけを考えているといったようなことがしばしば行われる。条件 P(x) の形から x の属するべき集合 X がある程度限定される場合にも、断り書きはしばしば省略される。
- ^ しばしば π-系と乗法族はこれと逆に扱われたり同義語の場合もある。例えば定義 1.3.6.や[1]は乗法族 (multiplicative class) に交叉について閉じていることのみを課している。
出典
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